蔵馬が幽助の腕の中で泣き腫らしたその夜。魔界で飛影の通夜が行われた。

　通夜には、幽助、桑原、蔵馬はもちろんの事、雪菜や躯、ぼたん、コエンマ達も来ていた。
　飛影の死を悲しむ者ももちろんのこと、飛影の死を笑い物にしようと企む輩も来ていた。

　そんな輩達を、蔵馬が殺気で追い出したのは、言うまでもない。

　通夜の間、蔵馬は誰に話掛けられても、覇気のない笑顔を作っていた。そんな蔵馬に声を掛けたのは、ぼたんだった。やはりそれでも蔵馬は笑顔を作って話をしていた。

「あんた、ずうっと暗い顔してるよ？　……そりゃあ仕方ないことだけど……。でも、そんな蔵馬に嬉しい知らせ。飛影からの伝言だよ」

　“飛影からの伝言”。
　その言葉を聞くと、蔵馬は一瞬驚いて、パッと顔を明るくさせた。

　一体何だろう。飛影は何を伝言したのだろう。
　蔵馬は胸を躍らせながら話の続きを聞いた。

「飛影はね、『オレはまだ霊界にいる。だから会いに来い』って……」

　蔵馬は黙って下を向いていた。何も言わない。いや、言えなかったと言うのが正しいだろう。

　自分は飛影と無理矢理ひとつになったうえ、あんな事故からも守ってやれなかったのだ。そんな自分に、飛影が会ってくれる？一体何故？
　会えるのは単純に嬉しい。だが、会わせる顔がないのだ。例え相手に話があるとしても、自分には無い。
　一体飛影と何を話せというのだ。

　だがこの機会を逃せば、もう確実に会えない。自分には、まだやり残している事がある。


　まだ、飛影に謝っていない。


　謝るために、会いに行かなければ。そして、飛影の話を聞かなければ。


　蔵馬は、飛影に会いに行くと伝え、伝言ををぼたんに頼んだ。ぼたんはその旨を飛影に伝えるために、霊界へと向かっていった。