体には幾分大きすぎるベットの上に眠る少女が1人。
彼女はヒノカ。とある事情で家族を失った子だ。
今は1人の上忍の世話になっている。


「ん……起きなきゃ…」

窓から入る微かな朝日が瞼越しに感じられ、目を覚ます。
ベットの上でしばらくボーっとしながら、5分程して、動き始め、タンスから着替えを引っ張り出し、身支度を整える。
着替えも終わり、朝食を作ろうかとノロノロとキッチンへ向おうとした時、玄関の扉がガチャ、と開いた。

「‼先生‼」

先程までの鈍さはどこへやら、駆け足で玄関へと向かう。
そして、玄関で靴を脱いでいる銀髪の男性を見て満面の笑顔を浮かべる。そんな彼女に気づいて彼も顔が綻ぶ。

「おかえりなさい！カカシ先生！！」
「ただいま、こんな朝早くから元気だねぇ」
「先生帰ってきたから！」
「そっかそっかヒノカは嬉しい事言ってくれるねぇ」

そう言って頭を撫でてくれる彼は、はたけカカシ。木の葉の上忍で、ヒノカの親代わりだ。

ほとんど物心着く前から一緒にいるので、ユウにとっては本当の家族のような存在だった。


隣で嬉しそうに歩いていたヒノカだが、突然、あ!と声を上げた。かと思えば顔がみるみる真っ青になっていくではないか。

「どうした、顔が真っ青だけど大丈夫か？」

「どうしよう、先生、こんなに早いと思ってお風呂準備できてない……」

そんな事か。

何かあったのでは無いかと思ったカカシだが、ヒノカの返答にひどくほっとした。

「気にする事ァ無いよ、シャワーで大丈夫」
「ダメだよ！ご飯作りながらお湯張るから！先生はちゃんと湯船で温まって！あ、ご飯食べられる？」

小さいながら、まるで出来たお嫁さんだなぁ、なんて思うカカシ。

「うん、しばらくしたら食べらるかな、お風呂ほんとにいいよ？アカデミー遅刻しない??」
「大丈夫！浴槽は昨日のうちに洗ってあるから、先生はしばらく寝てて、起きたらお風呂入って、ご飯は少しでもいいから、ちゃんと食べてね」
「ん、ありがと、ヒノカちょっと来て」
「ん??」

素直に近くにきた(名前)を抱き上げて、ぎゅっと抱きしめ、ヒノカの匂いを肺いっぱいに吸い込む。

変態じみているのは百も承知、だが、この瞬間が1番心穏やかになる。オレの楽しみは誰にも邪魔させないヨ。


「………うーん、何で今日アカデミーあるんだろうなぁ」
「あはは、先生甘えん坊～！」

笑いながら小さな手でしっかり抱きしめ返してくれる。 いつまでもこうしていたい。なんて思ってしまう。

「さ、先生！私、先生のご飯作ってアカデミー行かなきゃ！」
「そうだったね、ありがと」

カカシに降ろしてもらい、テキパキと動き始めるヒノカ。

その様子を見ていたカカシは、だんだんと瞼が重たくなる。

「先生、寝るならお布団だよ、直してあるから、寝てきなよ」
「んー……それじゃあ、お言葉に甘えて」

家を出るまでは起きていようと思ったカカシだが、どうやら体の緊張が解けきっているようで、睡魔に抗えないらしい。
綺麗に整えられた布団へ潜り込むと、数秒もしないうちに眠ってしまった。

「先生よっぽど疲れてたんだね、おやすみなさい」

ヒノカも一通り仕事が終わり、カカシに挨拶をして家を後にした。