東京某所にあるセレブや芸能人御用達のbar。

カランカラン

夜の11時を回った頃、また1人お客がやってきた。がっしりとした体格にサングラスを掛けていてもわかる整った顔立ち。

「何時もの所空いてる?」

そして少しクセのあるセクシーなゆったりとした声。

「いらっしゃいませ、何時ものお席空いておりますGACKT様」

そう、超一流芸能人のGACKTである。

あのGACKT様も御用達のbar[ネオエゴイスト]
完全個人経営で従業員の数も少ない。
店内は黒を基調としていて、証明もオレンジ色の落ち着いた雰囲気でムードがある。
プライバシーにも配慮してあり、小さいながらに個室の様な物もある。
マスターチョイスのジャズをBGMに、皆思い思いに一時を楽しんでいた。

GACKTの何時もの席とは、カウンター席である。ただのカウンター席ではなく、"GACKTお気に入り"のバーテンダーの目の前である。
GACKTがこの店を見つけて、お気に入りのバーテンダーを見つけてからはこの席でカクテルを飲むのがほぼ毎日の日課である。

「こんばんわ、なな」
「こ、ここここんばんわ、GACKTさん」
「いつものちょうだい」
「か、かかしこまりました」

GACKTを目の前にして顔を真っ赤にしてながら対応するGACKTお気に入りの彼女__ ななし なな 。
顔を真っ赤にしてギクシャクとした話し方でも、カクテルをつくるその動きはなめらかで見ていて飽きないものだった。

「お、お待たせ致しました、vanilaです」

丁度その時BGMがジャズからGACKTの『vanilla』に変わった。

「ま、マスター……」
「グットラック」
「何がですか！」

空気の読めすぎるマスターに嬉しいけど困ると言った感じで笑う。
周りの従業員達もどこか楽しそうだった。

「なんなら僕が歌うよ」
「滅相もないです！！！今はお客様なんですから」

ブンブンと首を横に振るななの反応を楽しみながらカクテルを飲むGACKT。

「今日は何時に上がるの?」
「えと…」
「今日はななちゃんはもう上がりですよ」
「え、え、なんで?え?」
「あ、ほんとに、ありがとうマスター。なな上がる前に何か作ってくれる?」
「え、あ、かしこまりました」

本人を差し置いて上がり時間を決めれら、戸惑いながらもつまみを作り始める、仕事熱心な彼女。
彼女がキッチンに行くのを見送り、マスター口を開いた。

「で、どうですかななちゃんは」
「なかなかyesを出してくれないよ」

はぁ…とため息をこぼすGACKT。
マスターは少し楽しそうだ。

「ははは、ガード堅いんですねぇ、あの子」
「そうなんだよ、ずぅっと『私なんかがGACKTさんと付き合うにはおこがましい』って言ってる」