訪れ
ドンドンドンドンドンッ!
ページ1枚1枚を丁寧に読み込み真剣に本と向き合っていると、いきなりドアを叩く音が響いた。チラリとリンメルの方を見るとあちらも驚いた顔をしていて今日は来訪者が居ないことを思い出す。
身振り手振りで奥に行けと指示を出したリンメルは怪訝そうな顔をして扉を開き顔だけを出す形で外を見る。
────が、そこにはなにもいなかった。
わっ!
大きな音がして屋根のほうから何かが降ってくるのが分かった。だがそれは着地する前呆気なくにリンメルに捕まっていて少し拍子抜けしてしまう。
「そう何度も同じ手には乗らないよ」
呆れたように息を吐きながら捕まりぶら下がるホルティスに声をかける。
ホルティスははははっ、と笑いながら頭の後ろをかくがリンメルは容赦なくポイッと投げ捨ててしまう。それに驚いたのはロランだ。投げ捨てたのだ。一応まがりなりにも妖精王なのに。
何もせず引き返してくるリンメルを出迎えついでにお久しぶりです、とホルティスにも挨拶をする。ホルティスは目を細めて笑いながら髪を乱しているのか撫でているのかわからない撫で方をする。ロランは頭を振り回されながら以前会った時のことを思い出すと案外怖い人ではないのかな、とも思った。
「どうだ、ロラン。少しはこの世界に慣れたかい?」
思わず吸い込まれてしまいそうになる程、底の見えない海のような瞳はただの人には強すぎる。真っ直ぐに見つめられてると目を逸らせない。瞳に涙が溜まり泣きだしそうになる寸前、リンメルがロランの瞳を覆い隠した。
「いい加減にしないか。この子にはお前は強すぎる」
「はははっ!なに、少しばかりからかっただけさ。けれどやりすぎてしまったかな?」
もう大丈夫、リンメルが優しい声で教えてくれる。目の覆いを外されパシパシと目を瞬かせると先程のような感覚はもう無くなっていた。けれどホルティスと目を合わせるのはしばらくは遠慮したいと思う。
パタパタと足音を立てながらお茶の準備をする。居間の方で私はミルクティーで頼むよ、じゃあ僕はストレートで、と声が聞こえる。
最近は満足のいくお茶を淹れられるようになったし気合を入れて時間を測ったりした。その間なんだか盛り上がっているようで2人の笑い声がして、気になってしまうが目は離せない。
聞き耳を立ててみても会話の内容はちんぷんかんぷんだ。だが所々で勉強や本などと聞こえる。もし自分に関することだったらと思うと気がはやる。
しかし無事に紅茶を淹れるミッションはクリアした。あとは持っていくだけだ、と思った途端何故か床に積んであった本の山に足を取られ転んでしまう。
ガシャンッ、と大きな音がして倒れ込む。
「大丈夫かいっ?!」
「おやおや…」
驚き慌てたリンメルが駆け寄るが当人であるロランはケロリとしている。落ち込んではいるがそれは転んだことよりも衝撃的だった落とした紅茶をリンメルの本にぶちまけてしまったことによるものだ。
「す、すみません!大事な本が!」
「本の事はあとでもいいから、怪我はないね?」
はい、と小さく答えると心底安心したというふうに胸を撫で下ろすリンメル。会話と言うには短いそれをホルティスは愉快そうに眺めている。だがあまりに放って置かれるのも嫌なので話の途中で割ってはいる。
「紅茶なんかいいからこっちに来て話さないか?今日はロラン君に用事があってきたんだ」
空いているソファの隣に頭を撫でたままロランを座らせる。
「リンメル、君は本当に変わったね。以前の君だったらロラン君が転んだとしても声すら掛けなかっただろう」
しみじみと懐かしい思い出を噛み締めるように呟くホルティスはなおも隣に座ったロランの頭を撫でている。
「そこで可愛い子には旅をさせてみないか?丁度よく一冊の本がダメになった。これをアソコに届けさせ代わりの本を持って帰ってこさせる。なに、至極簡単なお使いさ」
ホルティスのいきなりの提案に渋面だったリンメルだが考え込むこと数分、仕方ないと溜息をつきながら許可を出した。
「よし!さあロラン支度をしておいで!いいところに連れて行ってあげよう!」
「今から行くのか?明日でもいいだろうに」
「なあに、善は急げ!晴れてるうちに干し草を作れって言うだろう!」
行くならすぐさ!
そんなこんなで急いで支度を終わらせうずうずしているホルティスの元へ行くロランだった。
ページ1枚1枚を丁寧に読み込み真剣に本と向き合っていると、いきなりドアを叩く音が響いた。チラリとリンメルの方を見るとあちらも驚いた顔をしていて今日は来訪者が居ないことを思い出す。
身振り手振りで奥に行けと指示を出したリンメルは怪訝そうな顔をして扉を開き顔だけを出す形で外を見る。
────が、そこにはなにもいなかった。
わっ!
大きな音がして屋根のほうから何かが降ってくるのが分かった。だがそれは着地する前呆気なくにリンメルに捕まっていて少し拍子抜けしてしまう。
「そう何度も同じ手には乗らないよ」
呆れたように息を吐きながら捕まりぶら下がるホルティスに声をかける。
ホルティスははははっ、と笑いながら頭の後ろをかくがリンメルは容赦なくポイッと投げ捨ててしまう。それに驚いたのはロランだ。投げ捨てたのだ。一応まがりなりにも妖精王なのに。
何もせず引き返してくるリンメルを出迎えついでにお久しぶりです、とホルティスにも挨拶をする。ホルティスは目を細めて笑いながら髪を乱しているのか撫でているのかわからない撫で方をする。ロランは頭を振り回されながら以前会った時のことを思い出すと案外怖い人ではないのかな、とも思った。
「どうだ、ロラン。少しはこの世界に慣れたかい?」
思わず吸い込まれてしまいそうになる程、底の見えない海のような瞳はただの人には強すぎる。真っ直ぐに見つめられてると目を逸らせない。瞳に涙が溜まり泣きだしそうになる寸前、リンメルがロランの瞳を覆い隠した。
「いい加減にしないか。この子にはお前は強すぎる」
「はははっ!なに、少しばかりからかっただけさ。けれどやりすぎてしまったかな?」
もう大丈夫、リンメルが優しい声で教えてくれる。目の覆いを外されパシパシと目を瞬かせると先程のような感覚はもう無くなっていた。けれどホルティスと目を合わせるのはしばらくは遠慮したいと思う。
パタパタと足音を立てながらお茶の準備をする。居間の方で私はミルクティーで頼むよ、じゃあ僕はストレートで、と声が聞こえる。
最近は満足のいくお茶を淹れられるようになったし気合を入れて時間を測ったりした。その間なんだか盛り上がっているようで2人の笑い声がして、気になってしまうが目は離せない。
聞き耳を立ててみても会話の内容はちんぷんかんぷんだ。だが所々で勉強や本などと聞こえる。もし自分に関することだったらと思うと気がはやる。
しかし無事に紅茶を淹れるミッションはクリアした。あとは持っていくだけだ、と思った途端何故か床に積んであった本の山に足を取られ転んでしまう。
ガシャンッ、と大きな音がして倒れ込む。
「大丈夫かいっ?!」
「おやおや…」
驚き慌てたリンメルが駆け寄るが当人であるロランはケロリとしている。落ち込んではいるがそれは転んだことよりも衝撃的だった落とした紅茶をリンメルの本にぶちまけてしまったことによるものだ。
「す、すみません!大事な本が!」
「本の事はあとでもいいから、怪我はないね?」
はい、と小さく答えると心底安心したというふうに胸を撫で下ろすリンメル。会話と言うには短いそれをホルティスは愉快そうに眺めている。だがあまりに放って置かれるのも嫌なので話の途中で割ってはいる。
「紅茶なんかいいからこっちに来て話さないか?今日はロラン君に用事があってきたんだ」
空いているソファの隣に頭を撫でたままロランを座らせる。
「リンメル、君は本当に変わったね。以前の君だったらロラン君が転んだとしても声すら掛けなかっただろう」
しみじみと懐かしい思い出を噛み締めるように呟くホルティスはなおも隣に座ったロランの頭を撫でている。
「そこで可愛い子には旅をさせてみないか?丁度よく一冊の本がダメになった。これをアソコに届けさせ代わりの本を持って帰ってこさせる。なに、至極簡単なお使いさ」
ホルティスのいきなりの提案に渋面だったリンメルだが考え込むこと数分、仕方ないと溜息をつきながら許可を出した。
「よし!さあロラン支度をしておいで!いいところに連れて行ってあげよう!」
「今から行くのか?明日でもいいだろうに」
「なあに、善は急げ!晴れてるうちに干し草を作れって言うだろう!」
行くならすぐさ!
そんなこんなで急いで支度を終わらせうずうずしているホルティスの元へ行くロランだった。
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