訪れ
あの日、ロランがリンメルに連れられティルドレードにやって来てから1ヶ月程たった。まだ慣れないことだらけで覚えなければならないことも沢山あったが、日々の生活にはなんとか順応できている。ロランは妖精王に直接リンメルの世話を頼まれた事が大きいのかそれともライラに出会ったことがきっかけなのか次第に自信を取り戻したロランは見違えるほど変わった。
以前のオドオドとした姿が嘘のように積極的にリンメルに話しかけに行っている。ロランの卑屈さは環境によるもので本来は責任感の強い善良な子だ。ただそれが発揮される環境がなかっただけだったのだ。今ではすっかりリンメルの世話を焼いている。
ロランは毎日朝早くに起きると身支度を整えリンメルを起こしに行く。それは数日経った時にリンメルから提案されたことで、リンメルいわく自分は寝ていられるならいくらでも寝るタイプだから起きるのなら一緒に起こして貰えると助かる、とお願いされたのだ。どうやらそれが原因でまずいことが何度かあったそうだ。
ロランは幸い(と言ってもいいのか微妙だが)養護施設に居た時の習慣で寝汚い子達を起こすことに慣れていた。毎日が戦争であるあの時の苦労に比べれば1度起こせば寝床から出てくるのは遅くとも確実に起きてくれるリンメルは楽で良かった。
朝食はリンメルを起こしたあとに作る。これが一番大変だった。リンメルはできるだけロランの知っている食材や調味料を用意してくれているが、ディルドレードの食材が紛れていることがあると難易度が一気に上がる。調理法など知らないので毎度焼くか煮るくらいしかできず食べられないこともないのだろと言う微妙な味になり、結果より一層料理に関する熱を入れることとなっている。
今回は玉ねぎ、人参など知っているものしかなかったため無事に作り終わりできた料理を並べる頃にリンメルが起きてきて二人揃ってやっと食べ始める。2人で食べる習慣もリンメルからの提案だった。これはこの世界で食べられるものやマナーなどを教えてもらうためだというちゃんとした理由あっての事だったがロランは今まで誰かと共に食事をしたことがなかったため口に出しはしないがこの時間を楽しみにしていた。
食べ終わり片付けをした後はリンメルと共に腹ごなしの散歩に出かける。ひと月たった今でもリンメルに連れていってもらう場所は驚きに溢れていてロランはこの時間が大好きだった。薄暗い森を抜けて光り輝く花畑を通り妖精たちが遊び踊る平原を眺めながら歩みを進める。日毎に行く場所は変わり今日は野原だったがある時は山に、ある時は極寒の地に着いたこともあった。
リンメルは知らぬ土地は危険だからとある程度散策するとすぐに帰る。少ない探索の時間をいかに過ごすかロランは毎回悩んでいたが今はその土地に落ちている綺麗な石を拾い集めることにしていた。時にはリンメルも共に探してくれて揃って指先を泥だらけにして帰ったこともあった。そうではない時は大抵リンメルはどこかに姿を消して戻ってきたと思ったらいつの間にかある籠に何かしら入れて持って帰るのがどうにも気になる。いずれなんなのか聞き出そうと思っているロランだった。
散歩から帰ったら勉強の時間。主にこの世界の歴史と妖精や異人種らの言語について、タブーとされていることやマナーなど教わる事はその日のリンメルの気分で決まった。
この時間はどんなに長くなっても必ず3時までに終わりあとは自由時間とされている。ティルドレードは時間が曖昧になりがちで、人間であるロランを気遣いあえて時間を区切っているのだ。ロランは夕食まで暇になると外に出かけていたり自習をしたりしている。基本的にリンメルはロランの好きなようにさせているしやってはいけないことはその都度注意していた。お互いが暇な時は共に厨に立ち食材などの講義を聞かせていたりもしている。
しかし稀に午後になるとリンメルの知り合いが訪ねてくることがある。そういう時リンメルはロランを家から出さない。寝室から出てこないように言いつけ扉の外で何やら呪文のようなものを唱え完全に出れなくしてしまう。リンメルが言うには彼等と会うのはロランにとって酷く危険だかららしい。人をなんとも思っていないもの達が大半であるが極一部にはロランのことに興味津々で、部屋の方をじぃっと凝視したり覗き込む様に見ていていつか手を出すのではないかと心配しているらしかった。
たまにリンメルが安全だと判断したもの達には会うことが出来た。
1番よく来るのがリャトーシャ(循環するもの)と呼ばれている妖精であるリラとその息子のディートさん。ずっと暇らしくて新しく来たロランに興味があるそうだ。リンメルとは長い付き合いらしくよく昔話をしてくれる。
次に来るのが隣人とだけ呼ばれている自称魔術師の男の人(薬師のようなこともしているらしくなにかあったら訪ねるように言われたのもこの人だ)。最初ロランにティルドレードの影響が出ているのかを調べるために来てくれたのが初めてあった時のことだ。無愛想だけどとことなく優しい。他にも1度しか会ってないものも沢山いる。どのものも優しくていろんなことを教えてくれた。ロランにとって訪問者は身に迫る危険と共に不思議な体験をさせてくれる気のいいものたちという認識だった。
あの日は、いきなり外に続くドアがノックされた。
以前のオドオドとした姿が嘘のように積極的にリンメルに話しかけに行っている。ロランの卑屈さは環境によるもので本来は責任感の強い善良な子だ。ただそれが発揮される環境がなかっただけだったのだ。今ではすっかりリンメルの世話を焼いている。
ロランは毎日朝早くに起きると身支度を整えリンメルを起こしに行く。それは数日経った時にリンメルから提案されたことで、リンメルいわく自分は寝ていられるならいくらでも寝るタイプだから起きるのなら一緒に起こして貰えると助かる、とお願いされたのだ。どうやらそれが原因でまずいことが何度かあったそうだ。
ロランは幸い(と言ってもいいのか微妙だが)養護施設に居た時の習慣で寝汚い子達を起こすことに慣れていた。毎日が戦争であるあの時の苦労に比べれば1度起こせば寝床から出てくるのは遅くとも確実に起きてくれるリンメルは楽で良かった。
朝食はリンメルを起こしたあとに作る。これが一番大変だった。リンメルはできるだけロランの知っている食材や調味料を用意してくれているが、ディルドレードの食材が紛れていることがあると難易度が一気に上がる。調理法など知らないので毎度焼くか煮るくらいしかできず食べられないこともないのだろと言う微妙な味になり、結果より一層料理に関する熱を入れることとなっている。
今回は玉ねぎ、人参など知っているものしかなかったため無事に作り終わりできた料理を並べる頃にリンメルが起きてきて二人揃ってやっと食べ始める。2人で食べる習慣もリンメルからの提案だった。これはこの世界で食べられるものやマナーなどを教えてもらうためだというちゃんとした理由あっての事だったがロランは今まで誰かと共に食事をしたことがなかったため口に出しはしないがこの時間を楽しみにしていた。
食べ終わり片付けをした後はリンメルと共に腹ごなしの散歩に出かける。ひと月たった今でもリンメルに連れていってもらう場所は驚きに溢れていてロランはこの時間が大好きだった。薄暗い森を抜けて光り輝く花畑を通り妖精たちが遊び踊る平原を眺めながら歩みを進める。日毎に行く場所は変わり今日は野原だったがある時は山に、ある時は極寒の地に着いたこともあった。
リンメルは知らぬ土地は危険だからとある程度散策するとすぐに帰る。少ない探索の時間をいかに過ごすかロランは毎回悩んでいたが今はその土地に落ちている綺麗な石を拾い集めることにしていた。時にはリンメルも共に探してくれて揃って指先を泥だらけにして帰ったこともあった。そうではない時は大抵リンメルはどこかに姿を消して戻ってきたと思ったらいつの間にかある籠に何かしら入れて持って帰るのがどうにも気になる。いずれなんなのか聞き出そうと思っているロランだった。
散歩から帰ったら勉強の時間。主にこの世界の歴史と妖精や異人種らの言語について、タブーとされていることやマナーなど教わる事はその日のリンメルの気分で決まった。
この時間はどんなに長くなっても必ず3時までに終わりあとは自由時間とされている。ティルドレードは時間が曖昧になりがちで、人間であるロランを気遣いあえて時間を区切っているのだ。ロランは夕食まで暇になると外に出かけていたり自習をしたりしている。基本的にリンメルはロランの好きなようにさせているしやってはいけないことはその都度注意していた。お互いが暇な時は共に厨に立ち食材などの講義を聞かせていたりもしている。
しかし稀に午後になるとリンメルの知り合いが訪ねてくることがある。そういう時リンメルはロランを家から出さない。寝室から出てこないように言いつけ扉の外で何やら呪文のようなものを唱え完全に出れなくしてしまう。リンメルが言うには彼等と会うのはロランにとって酷く危険だかららしい。人をなんとも思っていないもの達が大半であるが極一部にはロランのことに興味津々で、部屋の方をじぃっと凝視したり覗き込む様に見ていていつか手を出すのではないかと心配しているらしかった。
たまにリンメルが安全だと判断したもの達には会うことが出来た。
1番よく来るのがリャトーシャ(循環するもの)と呼ばれている妖精であるリラとその息子のディートさん。ずっと暇らしくて新しく来たロランに興味があるそうだ。リンメルとは長い付き合いらしくよく昔話をしてくれる。
次に来るのが隣人とだけ呼ばれている自称魔術師の男の人(薬師のようなこともしているらしくなにかあったら訪ねるように言われたのもこの人だ)。最初ロランにティルドレードの影響が出ているのかを調べるために来てくれたのが初めてあった時のことだ。無愛想だけどとことなく優しい。他にも1度しか会ってないものも沢山いる。どのものも優しくていろんなことを教えてくれた。ロランにとって訪問者は身に迫る危険と共に不思議な体験をさせてくれる気のいいものたちという認識だった。
あの日は、いきなり外に続くドアがノックされた。