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目覚め

私たちがこれから行くのはティルドレードと呼ばれる妖精や化生の者達の世界。
国と呼べるようなものはものはなくただ1人妖精王と呼ばれるモノがその頂点に座している。もちろん国はないから王といっても名義上だけど、本人が面白がってそう名乗ってるんだ。これから会うのがその妖精王さ。王はこの世界に入り込む全てを識り判別する。この世界にとって不要か否か、害か無害かを。本当は君がこの世界に入った時何も無かったから安全であるという証明はされているんだけど一応お目通りをしとこうと思って。なんせ君はこの世界にいる数少ない人間だから、顔を覚えてもらっておいて損は無い。
……―――
「止まって」
そう言われて少し前のめりに立ち止まる。周りは今までと同じ木ばかりだ。なにか彼にしかわからないことがあるのだろうか?
「いいかい、この先何があろうとも一言も口を聞いてはいけないよ。振り返ってもいけない。私が話すまでその口を閉じているように」
「は、はい」
何がなにやらよくわからなかったがあまりの剣幕に慌てて返事をする。一生口を開かないつもりでぎゅっと唇を噛み締めるとリンメルにの表情がまた元の笑みに戻っていた。人を安心させる笑み。
「それじゃあ、行くよ」
コクコクと首を振ることで返事をする。一歩目を踏み出した途端あたりが闇に覆われてしまった。あまりのことに声が出そうになるのを慌てて手で口を抑えることで阻止する。
(良かった間に合った)
リンメルはどんどんと先に行ってしまうため少し小走りになりながらその背に付いていく。しばらく一本道をただただまっすぐ進んでいくと三股に分かれている道に出た。リンメルは迷いなく右の道を選び進んでいく。この道は心なしか下に下って言ってるような感覚がした。また暫くまっすぐ進むと今度は開けたところに出た。広場になっている場所を中心にひとりの大男が立っていて周りを囲むように無数の扉がある。その扉が不思議なもので浮いていたり横になっていたり小さすぎるものだったりとバリエーション豊かだ。リンメルが大男の前で立ち止まりじっとしていると大男が一つの扉を指さした。リンメルは黙ったまま一つお辞儀をしてその扉に向かっていく。いろんな扉を眺めていたロラン
も慌ててその後についていき共に扉をくぐり抜ける。
眩いばかりの光を通り抜けると、そこは見慣れない裏路地だった。
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