花簪―HANAKANZASHI―
突如目の前の空間がスパークし、空間が歪みその中心には黒い渦が巻いている。
そして目の前に異形のものが現れた。
赤銅色の皮膚に覆われた2本の巨大な腕、鋭い爪、鋭く伸びた口に、爬虫類じみた細く長い目が爛々 と輝いている。
全体の骨格はいびつで、それはもはや生物としての常識から外れた存在だった。
信じられない。だが、それは間違いなくえりなの目の前にいる。
このような存在を表現するのに適した言葉がある。
そう――。
「悪……魔……」
「ケキキキキ!その通りだよ、お嬢ちゃん」
あのような口で、どうやってそんな明瞭な声を出せるのかわからないが、そいつは楽しげに笑うと 、甲高い声で答えた。
「俺様は悪魔ディグリー!お前の命と魂、いただくぜ!」
えりなは恐怖で声も出ない。
ズルズルとあとずさりするだけだ。
しかし、それもすぐに背後の木にぶつかって、それ以上後退が出来なくなる。
――私、死ぬの?
サーッと血の気が引いていき、ついに立っていられなくなる。
口の中が粘つく。
やっとの思いで出せた声は、
「だ……か、たす……て」
悪魔ディグリーとは違い、不明瞭な声だった。
「さぁ、人間をいたぶるのは久しぶりだ。楽しませてもらうぜぇ」
ディグリーがピンクの舌でぴちゃりと舌なめずりをしながら近付いて来るのを、えりなは瞬きもせず見つめていた。
そして目の前に異形のものが現れた。
赤銅色の皮膚に覆われた2本の巨大な腕、鋭い爪、鋭く伸びた口に、爬虫類じみた細く長い目が
全体の骨格はいびつで、それはもはや生物としての常識から外れた存在だった。
信じられない。だが、それは間違いなくえりなの目の前にいる。
このような存在を表現するのに適した言葉がある。
そう――。
「悪……魔……」
「ケキキキキ!その通りだよ、お嬢ちゃん」
あのような口で、どうやってそんな明瞭な声を出せるのかわからないが、そいつは楽しげに笑うと 、甲高い声で答えた。
「俺様は悪魔ディグリー!お前の命と魂、いただくぜ!」
えりなは恐怖で声も出ない。
ズルズルとあとずさりするだけだ。
しかし、それもすぐに背後の木にぶつかって、それ以上後退が出来なくなる。
――私、死ぬの?
サーッと血の気が引いていき、ついに立っていられなくなる。
口の中が粘つく。
やっとの思いで出せた声は、
「だ……か、たす……て」
悪魔ディグリーとは違い、不明瞭な声だった。
「さぁ、人間をいたぶるのは久しぶりだ。楽しませてもらうぜぇ」
ディグリーがピンクの舌でぴちゃりと舌なめずりをしながら近付いて来るのを、えりなは瞬きもせず見つめていた。