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1.緋き桜の咲く頃に

灰色の髪に黒い瞳の、どこか存在感のないそのドールは、真紅の肩を掴むと焦点の合わない瞳と機械的な口調で喋りはじめた。
「データ照合中……ピピッ、顔認識一致。薔薇乙女第5ドール真紅と認識します」
「なんですかこの気味悪いドールは」
翠星石がビクビクと蒼星石の後ろに隠れながら言うと、その謎のドールは物騒なことを言い出した。
「命令認識……これより真紅の破壊を試みます」
「なっ!?」
ぎょっとした真紅が慌てて腕を外そうとする。
多少の抵抗はあったもののなんとか腕は外れた。
するとドールはもう一度、今度は軽く真紅の腕を握り、
「エマージェンシープログラム。爆発まで10秒前」
と言い出した。
「ば、爆発!?」
「どうしよう……いちかばちかnのフィールドに突き返してみようか?」
「7……6……」
「あ、あと5秒じゃギリギリなのです!」
「でもやるしかないのだわ。離しなさい、このっ」
「手伝うよ」
「翠星石も!」
「3……2……」
3人がかりでどうにか腕を外すことは出来たものの、突き返す余裕が無い。
終わりか――そう思った瞬間。
鏡が波打ち中から何か布のようなものが飛び出してきた。
布はものすごい速さでドールにぐるぐると巻き付くと鏡の中へ引っ張りこんだ。
その直後。
ドンッと音がして鏡の中から白い花びらが数枚落ちてきた。
「これは……?」
「これはカサブランカなのですぅ」
「うん、そうだ。でもなんでこんなところに……?まさかあのドールが……?」
「真紅ーっ、翠星石ーっ、蒼星石ーっ、どうしたのかしら?」
「おい、なんか音したぞ。またなんか厄介事に……」
「みんな大丈夫?」
騒ぎを聞きつけてきた全員が鏡の間に入ってきた。
真紅達が事情を説明していると、鏡の波が一際大きく波打った。
「し、真紅……!」
はっとして振り返るとさっきのものとは違うドールが姿を現した。
純白のふわふわした髪を2つに結って赤いリボンで留めている。
赤い着物風の服装で、何故か髪と同じ色の狐らしき尾が7本もある。
ぱちりと目を開けたその色はガーネットのように深い赤。
そのドールは周りをきょときょとと見回すと、軽く微笑んで
「やあ、麗しき薔薇乙女達」
と挨拶した。
ジュンとのり、翠星石と蒼星石、雪華綺晶は誰?といった顔をしていたが、他の4人の反応は違った。
緋桜ひざくら……?」
「緋桜なの!」
「緋桜かしら!」
「あらぁ……珍しい顔ね」
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