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1.緋き桜の咲く頃に

「顔面を殴られたなんて……戦闘訓練でも初めてだ」
そう言って緋桜は蒼星石を離した。
翠星石が駆け寄る。
「蒼星石、蒼星石!大丈夫なのですか?」
「ゲホッ、ゲホッ!なんとかね」
咳き込みながら蒼星石が答えると、緋桜は帯を元に戻しているところだった。
「いいね、キミ達。ボクも少しは楽しめそうだ。ちょっとだけやる気を出そう」
ペロリと唇を舐めて、緋桜は自身の人工精霊を呼ぶ。
「エルケーニヒ」
赤い光がどこからともなく出現する。
それと同時に緋桜の手には大きな緋い鉄扇が握られていた。
「いくよ」
そう宣言すると2人に向かって突進してくる。
「……!」
蒼星石の鋏が緋桜の鉄扇を受け止める。
そのまま打ち合いになった。
(なんだ……?力が、入らない)
幾打も受けているうちに、蒼星石が不利になっていく。
それを見た翠星石が助け舟を出した。
「翠星石を忘れてもらっちゃ困るのです!」
如雨露を振り、幾重にも太くなった樹で襲いかかる。
「忘れてないさ」
緋桜はそちらをチラッと見ると鉄扇を開き樹をいとも簡単に切り裂く。
そして今にも膝が落ちそうな蒼星石を翠星石にむかってこっぽりで蹴飛ばした。
「がっ……」
「きゃっ」
翠星石と蒼星石はぶつかり合い声を上げる。
それを余裕しゃくしゃくの目で見やる。
「さぁ、2人とも、抜け出せるかな?」
緋桜は笑って、技を放つ。
「狂い咲き・八重桜」
ゴッとものすごい音がして真っ赤な桜の花の竜巻が起きる。
それはあっという間に翠星石と蒼星石を飲み込んだ。
「きゃあああ!」
「くっ!」
吹き飛ばされないようになんとか掴まっている2人だったが、もうそろそろ限界が近い。
緋桜もそれがわかっているのだろう、トドメとばかりに技を追加する。
煉獄フェーゲフォイアー
すると桜の花だったものが燃え上がり炎の竜巻に変わった。
熱気がギャラリーのところまで伝わってくる。
「翠星石!蒼星石!大丈夫か!?」
さすがにジュンが声をかけた。
しかし、返事は無い。
「緋桜!ギブアップよ!もうやめて!」
真紅がそう言うと緋桜は微笑んで指をパチンと鳴らした。
するとあれだけ激しかった炎の竜巻が一瞬にして消え去った。
「腕試し終了かな?ボクの力、わかってくれたかい?」
「……わかったよ」
「はいなのです。翠星石達じゃ勝てないのです」
「恐ろしい方です……」
雪華綺晶が呟いた。
それはその場の全員が思ったことだろう。
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