第1話
ギルガメッシュは驚愕した。
ビッグブリッヂでの戦いの最中だった。
捕虜の見張りをしていた彼は、助けに来た捕虜の仲間に押され逃げたのを挽回しようとビッグブリッヂで待ち構えていたのだが、捕虜との戦いの中それは起こった。
一人一人の戦力は申し分なく、久しぶりに楽しい戦いを経験した彼は喜びに駆られていたのだが、驚愕したのはそこでは無かった。
捕虜の中でもかなり素早い動きをする赤紫色の長髪の人物。
名前はファリスと呼ばれていたと思う。
そのファリスが青魔法アクアブレスを放ち、視界を遮ると同時に自分に突っ込んで来たのを反射的に薙刀を放ったのだが、ファリスには当たらなかった。
だが、完全に避けられる距離ではなかったのかファリスの服が薙刀の犠牲になった。
ギルガメッシュはその姿に驚愕したのだ。
「おっ、女ぁ?!」
犠牲になった服の隙間から女性にしかない膨らみが顔を出していたのだ。
「チッ!!サラシも逝っちまったか!!」
苦々しく呟くファリスは、胸が多少見えたぐらいでは躊躇せずにそのまま戦闘態勢に入り、そのままギルガメッシュに向かって床を蹴る。
「ち………ちょーっと待った!!」
あまりに衝撃な出来事に慌てたギルガメッシュは咄嗟に相手を制止させた。
「急用を思い出したぜ!!必ず戻ってくるからなっ!!」
そう言い放ち、そそくさとその場を後にする。
(どうりで……あの整った顔で男ってのに違和感があったのか)
逃げながらギルガメッシュは考えを巡らす。
戦いの中で、胸が晒されようが気にせずに突っ込んで来る姿。
普通の女なら恥じらいが出て出来ないだろう。
それを気にせず向かって来れるのは、相当な修羅場を潜ってきた証拠だ。
ギルガメッシュはビッグブリッヂの戦いでファリスに興味が湧いた瞬間だった。
「ん??」
突然吹いてきた強風に思考を止めて辺りを見ると、目の前に迫るバリアの壁。
「しまった!!」
(そうだった!!バリアが完成するって報告受けてたのを忘れてた!!)
迫り来るバリアの壁を回避する暇もなく、ギルガメッシュはバリアに衝突した。
「あ~れ~!!」
衝突した衝撃波で、ギルガメッシュは空高く飛ばされたのであった。
***********************
ファリスは遠巻きに感じる視線と気配にうんざりしていた。
ビッグブリッヂでの戦いのあと、エクスデス城から放たれたバリアに吹き飛ばされ、気が付いたら新たな地で倒れていた。
倒れていた場所の近くにあるルゴルと言う村で、この世界の地理をガラフに教えてもらったり、装備やアイテムなどの買い出しをするのに2日間滞在していた。
その視線は、この大陸で目を覚ました時から宿屋に居る時以外はずっと今までファリスにまとわりついていた。
何も仕掛けて来ないので害はないと野放しにしていたのだが、流石に落ち着かなくなってきたファリスは人気のない場所へ移動し、視線を感じる木に投げナイフを飛ばした。
「そこにいるのは分かってるんだ!!命が惜しくなかったら、さっさと出て来い!!」
「いやー!!流石だな!!一応気配は消してたつもりだったんだが」
何やら嬉しそうに出てくる相手に、ファリスは鋭い視線を向けた。
(やっぱり、牢で見張りをしてた奴か…)
ビッグブリッヂで一戦交えた相手に警戒しながら、ファリスは話しかける。
「偵察か??それとも、4人纏めてじゃかなわないから1人ずつ仕留めようって考えか??」
「いやぁ、実はよ。久しぶりに強敵に会えたのが嬉しくてな、夢中になって戦ってたらバリアの完成をわすれちまっててよ」
照れ臭そうに頭をかきながら敵の親衛隊長は続ける。
「あの後、お前さん達同様にバリアに飛ばされちまって仲間が迎えに来るのを待ってたんだ」
その言葉にファリスは呆気にとられた。
ガラフと戦った後も、ビッグブリッヂで戦った時もふざけた奴だとは思っていたが、ここまでアホな奴だとは思わなかったからだ。
「お前…………バカだろ」
「なっ!!バカとは失礼なっ!!」
心外だと言うように地団駄を踏んでいる相手に、警戒をしてるのがバカバカしくなったファリスはため息を吐いた。
「じゃあ、偵察でも誘き出しでもないなら、なんで俺を監視してたんだ??」
真っ直ぐ相手を見据えたファリスに、ギルガメッシュはニヤリと笑ながら言った。
「お前さんに興味があったからだ」
「俺に??」
予想外の言葉にファリスは怪訝な表情を浮かべる。
それを気にせず、ギルガメッシュは続けた。
「ビッグブリッヂで戦った時に、お前さんは胸が露になっても気にする様子もなくかかってきただろ??
どんなに戦いなれしてる女でも、恥じらいが出て戦闘を続けられる状態にはならねぇ。
その点、お前さんはそんな素振りも見せず突っ込んできた。
相当な修羅場を潜ってきた証拠だ。
だから、どんな奴なのか興味が出た」
「それだけの事でか??」
「おう!!」
ファリスは思わず頭の抱えた。
ただ、それだけの事で相手に目を付けられて身辺をウロウロされていたのかと思うと頭痛さえしてきた。
そんなファリスを余所に、ギルガメッシュは続けた。
「で、ここ2~3日お前さんを観察した結果、ファリスお前さんのことをもっと知りたくなった」
「はぁ?!」
思わず間の抜けた声を上げた。
なぜそんな思考に行き着くのかが理解出来ないでいると、ギルガメッシュは手振り身振りをしながら話始めた。
「お前が寝た後、一人になるとお前の事ばかり考えてしまうんだ。寝ても覚めてもお前のことばかり………」
ふざけた動きをしながら勝手に話し続けるギルガメッシュに、ファリスは空いた口が塞がらなかった。
「これを恋と言わずに何と言うのかっ!!」
呆れと驚きを通り越し、ファリスの心の中には沸沸と怒りが込み上げてきていた。
「ファリス!!俺様はお前に惚れたぞ!!」
その言葉にファリスの怒りは頂点に達した。
静かに、ゆっくりとギルガメッシュに歩み寄る。
「ギルガメッシュ………」
始めて名前を呼ばれ、ギルガメッシュは少し驚いた様子を見せた。
「お、俺様の名前……覚えていてくれたのか」
「あぁ。それと、今の話の返事だがな………」
ファリスは静かに言って、ニッコリと微笑みかける。
その綺麗な顔に、ギルガメッシュは一瞬見惚れた。
その隙をファリスは見逃さなかった。
「ふざけた事ぬかしてんじゃねぇーっ!!」
ファリスの叫びと共に放たれた拳は、見事にギルガメッシュの顎にクリティカルヒットし、ギルガメッシュの巨体は大きな音を立てて倒れた。
「バカバカしいっ!!」
ファリスはそう言い放ち、その場を後にした。
*******************
「おーい、ギルガメッシュー生きてるかー??」
自分を呼ぶ声に目を覚ますと、緑色の魔族が居た。
ズキズキと痛む顎を摩りながら、ギルガメッシュは身体を起こした。
「おー、エンキドゥ。なんとか生きてるぜ」
「そりゃ良かった。まったく、お前さん敵と一緒にバリアに飛ばされるとかアホなのか??」
相棒であるエンキドゥにアホと言われ何も言い返せなかった。
「まぁ、そう言うなよ。迷惑かけてすまなかったな」
「ま、お前さんとは長い付き合いだからな、今回は多めに見てやる。早く掴まれ、城に帰るぞ」
エンキドゥに促され、その言葉に従う。
「そう言えば、異世界から来た奴らはどうなった??」
ファリスのアッパーを食らってエンキドゥに起こされるまで伸びていたので、状況がどうなったのか知りたかったギルガメッシュは言った。
その言葉に、エンキドゥは「さぁな」と肩を竦めた。
「だが、バル城から飛竜が砂漠の方に飛んでいったのが目撃されたから、死んではいないんじゃないか??」
それを聞いてギルガメッシュは心の中で安堵した。
また、ファリスに会えるかもしれない。
そう思っただけで、ギルガメッシュの心はウキウキしていた。
ビッグブリッヂでの戦いの最中だった。
捕虜の見張りをしていた彼は、助けに来た捕虜の仲間に押され逃げたのを挽回しようとビッグブリッヂで待ち構えていたのだが、捕虜との戦いの中それは起こった。
一人一人の戦力は申し分なく、久しぶりに楽しい戦いを経験した彼は喜びに駆られていたのだが、驚愕したのはそこでは無かった。
捕虜の中でもかなり素早い動きをする赤紫色の長髪の人物。
名前はファリスと呼ばれていたと思う。
そのファリスが青魔法アクアブレスを放ち、視界を遮ると同時に自分に突っ込んで来たのを反射的に薙刀を放ったのだが、ファリスには当たらなかった。
だが、完全に避けられる距離ではなかったのかファリスの服が薙刀の犠牲になった。
ギルガメッシュはその姿に驚愕したのだ。
「おっ、女ぁ?!」
犠牲になった服の隙間から女性にしかない膨らみが顔を出していたのだ。
「チッ!!サラシも逝っちまったか!!」
苦々しく呟くファリスは、胸が多少見えたぐらいでは躊躇せずにそのまま戦闘態勢に入り、そのままギルガメッシュに向かって床を蹴る。
「ち………ちょーっと待った!!」
あまりに衝撃な出来事に慌てたギルガメッシュは咄嗟に相手を制止させた。
「急用を思い出したぜ!!必ず戻ってくるからなっ!!」
そう言い放ち、そそくさとその場を後にする。
(どうりで……あの整った顔で男ってのに違和感があったのか)
逃げながらギルガメッシュは考えを巡らす。
戦いの中で、胸が晒されようが気にせずに突っ込んで来る姿。
普通の女なら恥じらいが出て出来ないだろう。
それを気にせず向かって来れるのは、相当な修羅場を潜ってきた証拠だ。
ギルガメッシュはビッグブリッヂの戦いでファリスに興味が湧いた瞬間だった。
「ん??」
突然吹いてきた強風に思考を止めて辺りを見ると、目の前に迫るバリアの壁。
「しまった!!」
(そうだった!!バリアが完成するって報告受けてたのを忘れてた!!)
迫り来るバリアの壁を回避する暇もなく、ギルガメッシュはバリアに衝突した。
「あ~れ~!!」
衝突した衝撃波で、ギルガメッシュは空高く飛ばされたのであった。
***********************
ファリスは遠巻きに感じる視線と気配にうんざりしていた。
ビッグブリッヂでの戦いのあと、エクスデス城から放たれたバリアに吹き飛ばされ、気が付いたら新たな地で倒れていた。
倒れていた場所の近くにあるルゴルと言う村で、この世界の地理をガラフに教えてもらったり、装備やアイテムなどの買い出しをするのに2日間滞在していた。
その視線は、この大陸で目を覚ました時から宿屋に居る時以外はずっと今までファリスにまとわりついていた。
何も仕掛けて来ないので害はないと野放しにしていたのだが、流石に落ち着かなくなってきたファリスは人気のない場所へ移動し、視線を感じる木に投げナイフを飛ばした。
「そこにいるのは分かってるんだ!!命が惜しくなかったら、さっさと出て来い!!」
「いやー!!流石だな!!一応気配は消してたつもりだったんだが」
何やら嬉しそうに出てくる相手に、ファリスは鋭い視線を向けた。
(やっぱり、牢で見張りをしてた奴か…)
ビッグブリッヂで一戦交えた相手に警戒しながら、ファリスは話しかける。
「偵察か??それとも、4人纏めてじゃかなわないから1人ずつ仕留めようって考えか??」
「いやぁ、実はよ。久しぶりに強敵に会えたのが嬉しくてな、夢中になって戦ってたらバリアの完成をわすれちまっててよ」
照れ臭そうに頭をかきながら敵の親衛隊長は続ける。
「あの後、お前さん達同様にバリアに飛ばされちまって仲間が迎えに来るのを待ってたんだ」
その言葉にファリスは呆気にとられた。
ガラフと戦った後も、ビッグブリッヂで戦った時もふざけた奴だとは思っていたが、ここまでアホな奴だとは思わなかったからだ。
「お前…………バカだろ」
「なっ!!バカとは失礼なっ!!」
心外だと言うように地団駄を踏んでいる相手に、警戒をしてるのがバカバカしくなったファリスはため息を吐いた。
「じゃあ、偵察でも誘き出しでもないなら、なんで俺を監視してたんだ??」
真っ直ぐ相手を見据えたファリスに、ギルガメッシュはニヤリと笑ながら言った。
「お前さんに興味があったからだ」
「俺に??」
予想外の言葉にファリスは怪訝な表情を浮かべる。
それを気にせず、ギルガメッシュは続けた。
「ビッグブリッヂで戦った時に、お前さんは胸が露になっても気にする様子もなくかかってきただろ??
どんなに戦いなれしてる女でも、恥じらいが出て戦闘を続けられる状態にはならねぇ。
その点、お前さんはそんな素振りも見せず突っ込んできた。
相当な修羅場を潜ってきた証拠だ。
だから、どんな奴なのか興味が出た」
「それだけの事でか??」
「おう!!」
ファリスは思わず頭の抱えた。
ただ、それだけの事で相手に目を付けられて身辺をウロウロされていたのかと思うと頭痛さえしてきた。
そんなファリスを余所に、ギルガメッシュは続けた。
「で、ここ2~3日お前さんを観察した結果、ファリスお前さんのことをもっと知りたくなった」
「はぁ?!」
思わず間の抜けた声を上げた。
なぜそんな思考に行き着くのかが理解出来ないでいると、ギルガメッシュは手振り身振りをしながら話始めた。
「お前が寝た後、一人になるとお前の事ばかり考えてしまうんだ。寝ても覚めてもお前のことばかり………」
ふざけた動きをしながら勝手に話し続けるギルガメッシュに、ファリスは空いた口が塞がらなかった。
「これを恋と言わずに何と言うのかっ!!」
呆れと驚きを通り越し、ファリスの心の中には沸沸と怒りが込み上げてきていた。
「ファリス!!俺様はお前に惚れたぞ!!」
その言葉にファリスの怒りは頂点に達した。
静かに、ゆっくりとギルガメッシュに歩み寄る。
「ギルガメッシュ………」
始めて名前を呼ばれ、ギルガメッシュは少し驚いた様子を見せた。
「お、俺様の名前……覚えていてくれたのか」
「あぁ。それと、今の話の返事だがな………」
ファリスは静かに言って、ニッコリと微笑みかける。
その綺麗な顔に、ギルガメッシュは一瞬見惚れた。
その隙をファリスは見逃さなかった。
「ふざけた事ぬかしてんじゃねぇーっ!!」
ファリスの叫びと共に放たれた拳は、見事にギルガメッシュの顎にクリティカルヒットし、ギルガメッシュの巨体は大きな音を立てて倒れた。
「バカバカしいっ!!」
ファリスはそう言い放ち、その場を後にした。
*******************
「おーい、ギルガメッシュー生きてるかー??」
自分を呼ぶ声に目を覚ますと、緑色の魔族が居た。
ズキズキと痛む顎を摩りながら、ギルガメッシュは身体を起こした。
「おー、エンキドゥ。なんとか生きてるぜ」
「そりゃ良かった。まったく、お前さん敵と一緒にバリアに飛ばされるとかアホなのか??」
相棒であるエンキドゥにアホと言われ何も言い返せなかった。
「まぁ、そう言うなよ。迷惑かけてすまなかったな」
「ま、お前さんとは長い付き合いだからな、今回は多めに見てやる。早く掴まれ、城に帰るぞ」
エンキドゥに促され、その言葉に従う。
「そう言えば、異世界から来た奴らはどうなった??」
ファリスのアッパーを食らってエンキドゥに起こされるまで伸びていたので、状況がどうなったのか知りたかったギルガメッシュは言った。
その言葉に、エンキドゥは「さぁな」と肩を竦めた。
「だが、バル城から飛竜が砂漠の方に飛んでいったのが目撃されたから、死んではいないんじゃないか??」
それを聞いてギルガメッシュは心の中で安堵した。
また、ファリスに会えるかもしれない。
そう思っただけで、ギルガメッシュの心はウキウキしていた。
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