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記憶と心

目を覚ますと、視界に大きな手が飛び込んできた。

自分のものでは無い。
その大きな手に繋がってる太い腕は、自分の頭の下敷きになっている。

(あぁ、そうか……)

寝起きでぼんやりしていた頭が少しずつハッキリとしてくると彼女、ファリスは昨晩の事を思い出した。

身体を起こし、腕が繋がっている本体の方に振り返る。
そこには赤い髪の大男が1人、布を纏わない姿で時折イビキをかきながら眠っていた。

敵の親衛隊長ギルガメッシュ
それが彼の名前だった。
彼と一夜を共にしたのはこれが初めてでは無かった。

仲間を裏切っている訳では無い。
町や移動中、ファリスが1人になった時にギルガメッシュは普段とは違う軽装で度々目の前に現れた。

そんな事が続いて気がついたら、いつの間にか身体の関係を持っていた。

(なんで、こんな関係になったんだっけ……)

ふと疑問に思い、記憶を探る。

始めて軽装で現れたとき、ギルガメッシュに愛の告白された。
もちろん、鼻で笑い飛ばし鉄拳を食らわせた。
何度もそんなやり取りをした記憶がある。
なら、いつから??

「まぁ、いいか。そんなことは……」

小さくそう呟いてため息を吐く。

「そんなことより……」

(俺は、どうしてコイツに抱かれるんだ??)

自分の事を好いているギルガメッシュが自分を抱くのは分かる。
なら自分は??

敵味方を抜きにすれば、気が合うところが沢山ある。
酒を飲めば、酒豪である自分についてこれるから飲んでて楽しい。
むしろ、自分が潰れてしまうことがあるぐらいギルガメッシュも酒豪だ。

だが、それだけで抱かれる理由になるのか??

「あー!!もう分かんねぇ!!」

ずっと自問自答を繰り返したが、結局考えるのを放棄し、仰向けに寝転んだ。

「何がわからねぇんだ??」

突然発せられた言葉に顔を向けると、いつの間に起きていたのだろうかニヤリと笑っているギルガメッシュの顔があった。

「別に……お前には関係ない」
「そうか」

言って、ギルガメッシュはファリスを抱きしめた。

(懐かしい匂いがする)

それはけっしていい匂いでは無かったが、荒くれ者の海賊の中で育ったファリスにとっては心地よく安心出来るものだった。

「ファリス」

呼ばれて顔を上げると、口付けをされた。
それすらも心地よくて……

その心地良さに、先程まで考えていたことがどうでもいい事のように消えていく。

ギルガメッシュの唇が頬、首、胸元と移動していく。
その刺激に、「んんっ」と軽く身をよじらせる。

「ファリス」

耳に響く低い声

「愛してる」

今度は深く口付けられる。

何もかもが心地良い。

その心地良さに、ファリスは全てを委ねた。
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