一章
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「えー、では。以上がこの合宿でのルールです。女の子を迎え入れること自体が今回初めてなので、しっかり確立できていない所や厳しすぎることもあるかもしれないから、不便があるようなら言ってください。一応はこれが資料なので細かい部分についてはこれに目を通してね。」
盛大なノック音を鳴らして猫宮の後に入った齋藤は、赤くなった額を擦りながら資料を猫宮に渡した。
ちなみに背後で盛大なノック音を聞いた猫宮はとても驚いて目を見開いたが、コンマ数秒で冷静さを取り戻し安否を尋ねていた。※1
「なるほど。てっきり前例があるのかと思っていたのですが、私が初めてだったんですね。それは光栄です。」
「まぁ、どうしても体の作り的に優劣が出てしまうからね。今回猫宮さんが選ばれたのもミックスダブルスでの功績が大きいところだよ。それにプラスしてシングルスで優勝しているからね。」
「体力差というのは産まれ持った差がそのまま反映されますからね。そこは切り捨てましたわ」
「へぇ……。切り捨てたっていうのは?」
「……これからお調べになっては?ここは選手すら気付かないポテンシャルを引き出す場だと思っていますわ。であれば、選手が気付いている能力は知っていて当たり前。そうでは?」
猫宮は規則説明の間しっかりと正していた姿勢を崩し、椅子の背もたれにもたれ掛かると右腕をお腹に添わせ、左手を口元から頬へ当て、首を傾げながらにっこりと人を喰ったような笑みを浮かべる。
猫宮のその笑みを見た齋藤は一瞬、虚をつかれたようにパチリと瞬きをするが、すぐにいつもの笑みを浮かべて頷く。
「確かに。猫宮さんの言う通りですね。では、この後は施設案内に移ります。ちょうどお昼時になるから、その時にここのご飯を食べてみてください。あ、そうそう。その格好では目立つと思うけど、ジャージに着替えるかい?」
「えぇ。そうします。」
「じゃあ、柘植コーチに持たせるからここで待っててね。」
そう言い残して部屋を出ると静けさが訪れる。
「(選手もコーチもすぐにコントロールするのは難しそうね。まずは序列化とパラメーター化から始めるべきかしら……。)……ねぇ、ジェリー。楽しい事になりそうだと思わない?高校生相手なんだから、手加減、しないとダメよね?できるかしら……こんなに楽しそうなのに…。」
膝に乗っているジェリーの額を撫でながらクスリと笑みを浮かべる。ジェリーはご主人の楽しそうな笑みをじーっと見つめると、なぁおと短く、返事をするかのように鳴いた。
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「あ、黒べぇ、戻ってたんだね。」
「えぇ。今し方。彼女はどうですか?」
モニタールームに戻り、黒部の姿を捉えた齋藤が話しかける。
「彼女、凄いねぇ。もしかしたら僕の指導なんていらないんじゃないかな。流石に世界を知っていて、世間を騒がすだけあるよ。」
「そうですか。」
「……でも、だからこそ彼女は育てがいがありそうだって思うよ。まだまだ伸び代がある。」
「珍しいですね。あなたがそこまで言うのは。」
「そうかい?でも、黒べぇも彼女に会ってみればそう思うんじゃないかな?」
黒部は楽しそうに笑う齋藤を横目で見ながら「そうですか。」と返した。
「そう言えば、柘植コーチは、まだ高校生の練習かい?」
「えぇ。もうそろそろ終わるはずです。」
2人がモニターに目を向けると、ちょうど柘植が今日の練習のフィードバックをしている所が映っていた。