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感謝の気持ち

「…っ!」
「大丈夫ですか?沁みますか?」
「いや、大丈夫だァ。」
不死川様が今回の任務で深めの傷を負ったとのことで、現場での手当てが必要となり、私が向かうこととなった。
私は初め、見た目が怖い不死川様のことを中身も怖いひとなのだろうと決めつけていた。
ある日、蝶屋敷を訪れた時、不意に柔らかい表情の不死川様が目に入り、本当はお優しい方なのだろうと気づかされた。
それから何度か傷の手当てや治療をしたことがあったけれど、印象が悪かったことなど一度もなかった。
「今日はま一段と…傷が深いですね…。」
「油断した俺が悪かったんだァ。」
「不死川様でも油断なんてなさるんですね。」
「考え事しちまったんだァ。」
「考え事ですか?」
「ああ、お前のなァ。」
「え、私ですか?」
「ああ。お前はいつも適切な処置をする。お陰で大きな傷跡は増えていない。」
「それは何よりです。不死川様は大切な存在の方ですから。」
「誰にとってだァ?」
「え?」
「鬼殺隊にとってか?お前にとってか?」
「…どちらにとってもです!」
まさか急に不死川様からそんなことを言われるとは思わず、心臓が飛び上がってしまった。
本当は私にとって大切な方だけれど、率直に言うのはどこか恥じらいを覚えてしまい、「どちらにとっても」という安易な回答をしてしまった。
「そうか…。お前にとってだったら良かったんだがなァ…。」
「え?」
「まあ、いい。礼を言う。また手当てを頼む。」
「はい、お任せください。」
そう言うと不死川様はご自分のお屋敷へと帰っていった。
不死川様の言葉の意味が理解できず、悶々としながら毎日を過ごすことになろうとは、この時は微塵も思ってもみなかった。

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