血を得て満足している様子の舞智華ちゃんを見て、俺のいろいろなものが振り切れてしまった。
そして、自分でも思ってもいなかった提案をしてしまった。

「これから毎日来るよ。少しずつ、俺の血をあげる。」

俺の心はすっかり舞智華ちゃんに奪われてしまった。きっと本人にはその気は全くないと思うけど。
僅かな量の血を舐め取るときの、舞智華ちゃんの恍惚とした表情が脳裏に焼き付いて、その顔をまた見たいと思ってしまった。あの舌の感触をまた味わいたいと思ってしまった。

俺ってこんなに変態だったの？こんなに欲にまみれてたの？

と自分でも自分が信じられなかったけど、自分の気持ちに正直になるのがいちばんだと思った。
目の前の舞智華ちゃんは、驚きながらも喜んだ表情を見せ、小さな声で「ありがとうございます。では毎晩、この場所でお待ちしています。」と言った。

俺は、舞智華ちゃんに血を提供する約束をしてしまった。

禰󠄀豆子ちゃん、ごめん。俺は禰󠄀豆子ちゃんに申し訳ないぐらい、どうしようもない男だったよ。禰󠄀豆子ちゃん以外の鬼に傷口を舐められて、体に熱を持ってしまった。俺のお嫁さんになってほしいって、禰󠄀豆子ちゃんを見て思ったのに、俺は早くも浮気をしている。ごめん、禰󠄀豆子ちゃん。許して。

ただ、目の前にいる舞智華ちゃんを、俺は手放したくないんだ。手放しちゃいけない気がするんだ。どうにかして、俺との関係を繋いでいたいと思ってしまったんだ。

これ以上、屋敷の外にいるのはまずいと感じて、俺は戻ることにした。

「また明日、舞智華ちゃん。」
「ええ、また明日、善逸さん。」

こうして舞智華ちゃんと俺の密会は始まった。