知
お名前は?
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そんなある日のことだった。
夕方、厠から戻ってくると、伊之助と炭治郎が部屋で何やら話をしているのが聞こえた。
「最近の紋逸、おかしいんじゃねえか。」
「…伊之助もそう思うか?」
「ああ。あいつじゃねえ何かを感じるぜ。」
「…俺もそうなんだ。うっすらだけど、善逸から鬼のようなにおいがするんだ。」
「はあ?!鬼だと?!」
「うん…。でも…なんだろう…。普通の鬼とは違うというか…。」
「お前の妹とも似てねえのか?」
「禰󠄀豆子の匂いとも違う。」
2人は俺が何をしているかは分かっていないにしても、鬼の気配を感じ取ってはいた。部屋に入るのを少し躊躇っていると、後ろから肩をツンツンとつつかれた。この不思議な音は、あの人しかいないと思って振り向くと、舞智華ちゃんによく似た髪色の女性が立っていた。
「ここは廊下の真ん中ですから、通行の妨げになっていますよ、善逸くん。」
笑顔で言うしのぶさんに、少しだけ怖さを覚えたのは、笑顔だけど目の奥が笑っていなかったからだと思う。きっと、しのぶさんも俺から何かを感じ取っているんだと思う。
「ところで善逸くん。調子はどうですか?」
「あのまっずい薬湯のおかげで、腕も足も長くなってきました。」
「そうですか。まずいは余計ですが、それは良かったです。」
「はい。」
しのぶさんはちょっとだけ冷たい視線を俺に向けながら、俺の耳元で囁いた。
「何をしているかまではわかりかねますが、夜更けに許可なく屋敷を抜け出してはいけませんよ。」
しのぶさんはそう言うと「そろそろ機能回復訓練に戻ってくださいねー」とゆるゆると言い放って、部屋の前を去っていった。
やっぱりバレていた。バレないはずがないとは思っていた。そうだよ、炭治郎も伊之助も、俺の様子がおかしいことに気がついてるんだ。柱のしのぶさんが、気づかないはずがない。
恐る恐る病室に戻ると、炭治郎が温かい笑顔で「おかえり」と言った。
「今そこにしのぶさんが居なかったか?しのぶさんのにおいがした。」
「うん、いたよ。」
「何を話してたんだ?」
「俺の調子を聞きにきたみたい。腕も足も縮んでたからな。」
「言われてみれば、だいぶ元に戻ってきてるな。」
「不本意だけどあの薬のおかげだな。ほんとにマズイけど。」
「それでも善逸はがんばって飲んでるんだ。善逸にしてはえらいぞ。」
…炭治郎は俺を馬鹿にしてるのか…?と真剣に思うものの、炭治郎からは至極真面目な音しかしない。変な褒め方しかできない炭治郎の天然ぶりに、少し哀れみを覚える。
…でも、それと同時に炭治郎からは俺を心配する音がしている。きっと、さっき伊之助と話していたことだろうと思うけど、2人に話すわけにはいかない。
そんな伊之助からは、俺に対する殺気にも似た音がしていて、逆にどうすればいいかわからなかった。
「…そんなに睨むなよ。」
「けっ、長ぇ廁だったな。」
「お前だってあるだろ、そういう時ぐらい。」
俺は、2人から何か話を切り出されるんじゃないかと思って、心底ドキドキしていた。でも、結局その後、2人とも何も聞いてこなかった。
すっかり夜も更けて、俺は今日、炭治郎にも伊之助にも、そしてしのぶさんにもはっきりと疑いの目をかけられていることが分かったにも関わらず、性懲りも無く蝶屋敷を抜け出して舞智華ちゃんに会いに行った。
俺は舞智華ちゃんに会いたい気持ちが抑えられなかった。
夕方、厠から戻ってくると、伊之助と炭治郎が部屋で何やら話をしているのが聞こえた。
「最近の紋逸、おかしいんじゃねえか。」
「…伊之助もそう思うか?」
「ああ。あいつじゃねえ何かを感じるぜ。」
「…俺もそうなんだ。うっすらだけど、善逸から鬼のようなにおいがするんだ。」
「はあ?!鬼だと?!」
「うん…。でも…なんだろう…。普通の鬼とは違うというか…。」
「お前の妹とも似てねえのか?」
「禰󠄀豆子の匂いとも違う。」
2人は俺が何をしているかは分かっていないにしても、鬼の気配を感じ取ってはいた。部屋に入るのを少し躊躇っていると、後ろから肩をツンツンとつつかれた。この不思議な音は、あの人しかいないと思って振り向くと、舞智華ちゃんによく似た髪色の女性が立っていた。
「ここは廊下の真ん中ですから、通行の妨げになっていますよ、善逸くん。」
笑顔で言うしのぶさんに、少しだけ怖さを覚えたのは、笑顔だけど目の奥が笑っていなかったからだと思う。きっと、しのぶさんも俺から何かを感じ取っているんだと思う。
「ところで善逸くん。調子はどうですか?」
「あのまっずい薬湯のおかげで、腕も足も長くなってきました。」
「そうですか。まずいは余計ですが、それは良かったです。」
「はい。」
しのぶさんはちょっとだけ冷たい視線を俺に向けながら、俺の耳元で囁いた。
「何をしているかまではわかりかねますが、夜更けに許可なく屋敷を抜け出してはいけませんよ。」
しのぶさんはそう言うと「そろそろ機能回復訓練に戻ってくださいねー」とゆるゆると言い放って、部屋の前を去っていった。
やっぱりバレていた。バレないはずがないとは思っていた。そうだよ、炭治郎も伊之助も、俺の様子がおかしいことに気がついてるんだ。柱のしのぶさんが、気づかないはずがない。
恐る恐る病室に戻ると、炭治郎が温かい笑顔で「おかえり」と言った。
「今そこにしのぶさんが居なかったか?しのぶさんのにおいがした。」
「うん、いたよ。」
「何を話してたんだ?」
「俺の調子を聞きにきたみたい。腕も足も縮んでたからな。」
「言われてみれば、だいぶ元に戻ってきてるな。」
「不本意だけどあの薬のおかげだな。ほんとにマズイけど。」
「それでも善逸はがんばって飲んでるんだ。善逸にしてはえらいぞ。」
…炭治郎は俺を馬鹿にしてるのか…?と真剣に思うものの、炭治郎からは至極真面目な音しかしない。変な褒め方しかできない炭治郎の天然ぶりに、少し哀れみを覚える。
…でも、それと同時に炭治郎からは俺を心配する音がしている。きっと、さっき伊之助と話していたことだろうと思うけど、2人に話すわけにはいかない。
そんな伊之助からは、俺に対する殺気にも似た音がしていて、逆にどうすればいいかわからなかった。
「…そんなに睨むなよ。」
「けっ、長ぇ廁だったな。」
「お前だってあるだろ、そういう時ぐらい。」
俺は、2人から何か話を切り出されるんじゃないかと思って、心底ドキドキしていた。でも、結局その後、2人とも何も聞いてこなかった。
すっかり夜も更けて、俺は今日、炭治郎にも伊之助にも、そしてしのぶさんにもはっきりと疑いの目をかけられていることが分かったにも関わらず、性懲りも無く蝶屋敷を抜け出して舞智華ちゃんに会いに行った。
俺は舞智華ちゃんに会いたい気持ちが抑えられなかった。