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イケメン源氏伝ss

今日で私がこの鎌倉にやってきて二年目となった。
初めはやっぱり、
この幕府にも馴染めるのか不安でしかたなかったけれど、
いつも支えてくれた玉藻がいたから、
こうして今ではすっかり、
たくさんの人に幕府の一員として認められている。

玉藻も、
皆の前であやかしであることを隠す必要がなくなったからか、
何だか以前よりも生き生きしているような気がする。
今まではあやかしだとバレたら、
恐れられ、忌み嫌われてきた。
そんな過去を玉藻から聞いた事のある私としては、
こうして色んな人から玉藻が尊敬されているところを見ると、
本当に嬉しくなる。

今でも玉藻と一緒に狐印の薬屋を開いていて、
相変わらずこちらも人気だった。
やっぱりみんな、
玉藻目当てなのかな?と思っているのだけれど、
それは何故か玉藻にあっさり否定された。

「今日でここに来て二年目になるな」
「そうだね。
玉藻と出会ってもう二年も経ったんだ……」

長かったような、短かったような、
そんな不思議な気持ちで胸がいっぱいになる。
去年もそうだったけれど、
今年も幕府の皆が私が来て二年目のこの日を祝う宴を開いてくれた。
もちろん家臣の人達込みでという訳ではなく、
頼朝様、盛長さん、景時さん、重衡くん、
そして私と玉藻のいつもの人達でお祝いをしてもらった。
そして今は玉藻の部屋で一緒に縁側に座りながら星空を見上げ、
ゆったりとしている。

「そうだ、お前にこれをやろう」
「え?」

隣に座っていた玉藻が急に立ち上がると、
そのまま部屋の奥へと消えてしまった。
何だろう?と思いつつ玉藻が戻ってくるのを待つ。
しばらくして戻ってきた玉藻が手に持っていたのは小さな小箱だった。

「これは?」
「開けてみるといい」

玉藻に開けるよう促されて、
私はパカッとその小箱を開けてみる。
すると、
中には白色と金色が少し入っている髪飾りだった。

「これ……」
「あぁ、俺と同じ色だろう?
今日のために職人に特注で作ってもらったものだ」

ぱちぱちと目を瞬きながら、
隣にいる玉藻へ顔を向けると、
綺麗な微笑みを浮かべていて顔が熱くなっていく。
まさか、自分に見立てた髪飾りをわざわざ職人に頼んでまで用意してくれるなんて……。

「あの、玉藻。ありがとう、大事にするね」
「ああ、この際だから毎日それをつけるようにな?」

少し恥ずかしくなって口をもごもごさせながら、
何とかお礼を言えた私に玉藻は笑って、
毎日つけるようにと耳元で囁かれた。

くすぐったいと玉藻に言えば、
笑われるだけでどうにもまだ玉藻に弄ばれるみたいだ。
あれから二年も経ったのだから、
玉藻に一つや二つ、
驚いてもらいたかったのに、
どうやらまだ私には難しそうだ。

でも、玉藻と出会った大切な日に、
こうして贈り物を貰えたことは本当に嬉しい。
本当は私も何か贈り物をしたかったのだけれど、
ここ最近は薬師としての仕事で奔走していたため、
用意する暇がなかった。
来年こそは何か玉藻に贈り物を用意しなくちゃ!
と私は新たに決意をして、

「これからもよろしくね、玉藻」
「あぁ、こちらこそ。よろしくな、由乃」

来年もまた、
こうして二人で寄り添っていますように。
私にとって人生を変えたこの日を、
また祝えますように。
そして、大切な人と共にいられますように。
願いたい幸せはたくさんある。
それでもただ、
玉藻がそばにいてくれれば、
私はこれからも前を向いていける。

大切な仲間と、愛しい人と、
こうしていつまでも一緒にいられますように。

そうして私と玉藻は星空を一緒に見上げながら、
これからのことを、
他愛のない話を夜が更けるまで二人、
寄り添いながら語り合うのだった───。


【the end】
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