イケメン戦国ss
あっという間に秋の季節が巡り日が落ちるのが早くなったある日。
いつも通り仕事を終えた私は帰蝶さんが待つ堺の商館へと急いで帰った。
「(暗くなる前に帰ってこれてよかった……)」
帰りが遅くなると流石に帰蝶さんが心配してしまう。
それだけは避けなければと大急ぎで帰って来たことで、
日が落ち始め、綺麗な夕暮れの空が商館内に差し込んでいた。
帰蝶さんはどこにいるんだろう?と思いながら、
とりあえずいつもいる部屋のドアを開くと、
ソファにもたれて眠っている帰蝶さんの姿を発見した。
「(寝てる……?珍しいな……)」
起こさないようにそっと静かにドアを閉め、
私は帰蝶さんの傍へ歩み寄る。
目の下にクマができるほど、
帰蝶さんの見た目は健康そうには見えず、
寝不足気味なのではないかといつも気にしていた。
私と恋仲になって、今までより休んでいると言われても、
未だその目の下のクマはほんの少しだけ薄れた程度だ。
まだ明るくても、そろそろ日が暮れる時。
加えて夏場ではないためこれから急激に冷えてくる。
そう考えて私はブランケットを引っ張り出して、
眠る帰蝶さんにそっとかける。
「(お誕生日に風邪を引いてしまっては元も子もないしね)」
今夜は私の手料理を振る舞うつもりだ。
そんなに料理が得意というほどではないけれど、
先日お誕生日に何か欲しいものはあるかと聞けば、
帰蝶さんからそう返ってきた。
今日も朝から忙しくされていたし、
きっとお疲れなんだろうなと思って、
私は帰蝶さんのすぐ隣にゆっくり座り、
せめて身体が冷えないようにとそっと擦り寄る。
今年も祝えて嬉しいな。
今夜は何を作ろうかなと考えているうちに、
瞼が重くなってきて、私はいつの間にか眠ってしまった。
■
「……」
自分の肩に寝入ってしまう前までには感じなかった重さを感じて目を開けると、
隣でいつの間にか帰ってきていた舞が眠っていた。
俺のところにブランケットがかけられているのは舞がしてくれたのだと気付くと同時に、
自分には一切かけていない姿を見て相変わらずだと苦笑する。
夕暮れより少し前に寝入ってしまったはずなのに、
外はもうすっかり暗くなっていた。
肩にもたれ掛かる舞をそっと抱き寄せて温もりを分ける。
その小さな身体は少し冷えていて、
俺よりもお前に必要だったのではないかと呆れながらブランケットを羽織らせる。
すっかり寒くなり、夜も長くなった。
以前はなんとも思わなかったが、
今となっては長い夜も良いのかもしれないと思い始めた。
夜が長ければ長いほど、舞といられる時間も長くなる。
そう思うと秋も良いものかもしれないな。
隣ですやすやと心地良さそうに眠る舞の寝顔を見ながら、
そんなことをひっそりと思った。
こんなにも心地の良いゆったりとした時間を過ごすのはいつぶりだろう。
舞と恋仲になってからあらゆるものが変わってしまった。
前の過ごし方も霞に消えてなくなるような、
以前の自分には到底考えつかなかった日常がここにある。
与えた本人はぐっすりと眠っているが。
こんな、ただのんびりする時間を過ごすのも良いだろう。
部屋は明かりがついておらず、
この室内を照らすのは月明かりだけ。
しばらくの穏やかな時を満喫することにした──。
──この後起きた舞が寝入ってしまったことに驚いて慌てるのは言うまでもないが。
【終】
いつも通り仕事を終えた私は帰蝶さんが待つ堺の商館へと急いで帰った。
「(暗くなる前に帰ってこれてよかった……)」
帰りが遅くなると流石に帰蝶さんが心配してしまう。
それだけは避けなければと大急ぎで帰って来たことで、
日が落ち始め、綺麗な夕暮れの空が商館内に差し込んでいた。
帰蝶さんはどこにいるんだろう?と思いながら、
とりあえずいつもいる部屋のドアを開くと、
ソファにもたれて眠っている帰蝶さんの姿を発見した。
「(寝てる……?珍しいな……)」
起こさないようにそっと静かにドアを閉め、
私は帰蝶さんの傍へ歩み寄る。
目の下にクマができるほど、
帰蝶さんの見た目は健康そうには見えず、
寝不足気味なのではないかといつも気にしていた。
私と恋仲になって、今までより休んでいると言われても、
未だその目の下のクマはほんの少しだけ薄れた程度だ。
まだ明るくても、そろそろ日が暮れる時。
加えて夏場ではないためこれから急激に冷えてくる。
そう考えて私はブランケットを引っ張り出して、
眠る帰蝶さんにそっとかける。
「(お誕生日に風邪を引いてしまっては元も子もないしね)」
今夜は私の手料理を振る舞うつもりだ。
そんなに料理が得意というほどではないけれど、
先日お誕生日に何か欲しいものはあるかと聞けば、
帰蝶さんからそう返ってきた。
今日も朝から忙しくされていたし、
きっとお疲れなんだろうなと思って、
私は帰蝶さんのすぐ隣にゆっくり座り、
せめて身体が冷えないようにとそっと擦り寄る。
今年も祝えて嬉しいな。
今夜は何を作ろうかなと考えているうちに、
瞼が重くなってきて、私はいつの間にか眠ってしまった。
■
「……」
自分の肩に寝入ってしまう前までには感じなかった重さを感じて目を開けると、
隣でいつの間にか帰ってきていた舞が眠っていた。
俺のところにブランケットがかけられているのは舞がしてくれたのだと気付くと同時に、
自分には一切かけていない姿を見て相変わらずだと苦笑する。
夕暮れより少し前に寝入ってしまったはずなのに、
外はもうすっかり暗くなっていた。
肩にもたれ掛かる舞をそっと抱き寄せて温もりを分ける。
その小さな身体は少し冷えていて、
俺よりもお前に必要だったのではないかと呆れながらブランケットを羽織らせる。
すっかり寒くなり、夜も長くなった。
以前はなんとも思わなかったが、
今となっては長い夜も良いのかもしれないと思い始めた。
夜が長ければ長いほど、舞といられる時間も長くなる。
そう思うと秋も良いものかもしれないな。
隣ですやすやと心地良さそうに眠る舞の寝顔を見ながら、
そんなことをひっそりと思った。
こんなにも心地の良いゆったりとした時間を過ごすのはいつぶりだろう。
舞と恋仲になってからあらゆるものが変わってしまった。
前の過ごし方も霞に消えてなくなるような、
以前の自分には到底考えつかなかった日常がここにある。
与えた本人はぐっすりと眠っているが。
こんな、ただのんびりする時間を過ごすのも良いだろう。
部屋は明かりがついておらず、
この室内を照らすのは月明かりだけ。
しばらくの穏やかな時を満喫することにした──。
──この後起きた舞が寝入ってしまったことに驚いて慌てるのは言うまでもないが。
【終】