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イケメン戦国ss

何となく目を覚ますと、
珍しくまだ眠ったままの信玄様の姿が目に入った。
いつもなら、
私よりも早くに起きて寝顔を見つめているのに……
不思議な気持ちになりながら、
何となく外の様子が気になって、
信玄様を起こさないようにそっと布団から抜け出し、
音を立てずに襖を開ける。
外はまだ薄暗くて夜明けが訪れたばかりだった。

「(寒いなぁと思っていたら……雪が降ってたんだ)」

襖を開けた先の景色は一面真っ白で。
それは昨夜眠っているうちに、
雪が降っていたことが容易に想像できるものだった。
すっかり冷えきった越後。
今日は信玄様のお誕生日。
その為二日ほど前から信玄様の領地甲斐から、
謙信様が治める地、越後にやってきていた。

何だかんだで久しぶりに越後に来たはずなのに、
謙信様たちとは月に二度のペースで宴会をやっていて、
会っていたからか懐かしい気持ちはない。

「舞」
「信玄様!?」

そうしてぼんやりと雪の積もった庭を眺めていると、
後ろからいつの間にか起きていた信玄様に抱きしめられる。

「俺の天女はつれないな。
こんなにも寒いというのに、
共に布団の中で温まってくれないんだから」
「わっ……!」
「ほら、こんなに身体が冷えてる。中に戻ろう」

ふわっと浮いた感覚に驚いていると、
信玄様が私を横抱きにして、
もう一度部屋の中へ戻されてしまった。
現代では滅多に見ることのできなかった雪を見れて嬉しかったのだけれど、
それと同時にどうやら信玄様に心配をさせてしまったらしい。

部屋の中に戻った私は、
信玄様に背を向ける形で膝の上に抱えられ、
温もりを与えられる。
背中越しに感じる信玄様の体温にドキドキしながら、
今日何としても一番初めに伝えたかった言葉を告げる。

「信玄様、お誕生日おめでとうございます」
「あぁ、ありがとう。
こうやって今年も誕生日を迎えられるとは思っていなかったよ。
これも、天女のお陰だな」

後ろに振り向き、
信玄様のお顔を見てみると、
とても嬉しそうに微笑んでくれていて、
私も自分のことのように嬉しくなる。

「佐助くん達と一緒に、
お祝いのパーティーの用意をしたので楽しみにしていてくださいね」
「パーティーは確か宴会のようなものだったな。
あぁ、今から楽しみだよ。
幸村達がどんな品を用意してくれたのか……。
でも今は皆が起き始めるまで君を堪能させてほしい」

信玄様のお祝いの宴や贈り物を喜んでくれるだろうかと、
ワクワクしながらこれから訪れる甘い時間に胸を高鳴らせた───。


【the end】
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