イケメン戦国ss
明日は信長様のお誕生日。
一月前に突然開いたワームホールにより、強制的に現代へ帰された私は、今年は大好きな人のお誕生日を祝えないのだろうか……と不安になっていたけれど、
信長様のお誕生日の三日前に、こうして信長様の元へ戻ってくることができた。
一ヶ月間信長様に会えない日々は、まるで心に穴が空いたように空っぽな気持ちでいっぱいだった。
ようやく会えた時、嬉しくて涙を流してしまったけれど、そんな私を信長様は優しく抱き締めてくれた。
それから約二日関の間に、現代へ強制的に帰される前に作っていた新しい着物を完成させることに集中した。
毎年信長様のお誕生日には、新しい着物を作り、贈るようにしていた。
毎年市へ赴いては、信長様に似合う反物を探す日々も楽しくて仕方ない。
そんな私を信長様はきっと知っているからこそ、誕生月になると「新しい着物を作れ」と、私に言ってくるのだろう。
だから毎年、信長様が満足していただけるような素敵な着物を仕立てることにしている。
そんな充実した時間は一刻一刻と過ぎていき───。
遂に信長様のお誕生日当日がやってきた。
天主に差し込む陽の光にゆっくりと瞼を開けると、隣にはゆったりと眠っている信長様のお顔が近くにあった。
突然現代に帰されたあの日から、三日前に帰ってきたとき、
若干の疲れと憔悴した表情を見せていた信長様は、
きっと私が居ない一月の間、一睡もしなかったのだろう。
現代からようやく安土城に帰ってきた時に、 秀吉さんから「今日はずっと信長様の傍にいてくれないか」と言われた。
こうしてぐっすりと眠っている姿を見ると、何だか嬉しく感じてしまう。
こんなにも無防備な姿を見せてくれる信長様が、より一層愛おしく感じてしまう。
私の腰に片腕を回し、がっしりと抱きしめる信長様を
起こさないようにそっと起き上がる。
さて、着替えたら早速お祝いの料理を作ろう!と張り切って身支度を始める。
「……舞」
「わっ……!?」
いそいそと帯を結んでいると、 後ろから寝起き特有の掠れた声で、 私の名を呼んだ信長様に抱きしめられた。
「の、信長様!? ごめんなさい、起こしてしまって……!」
「どこへ行くつもりだ?」
「あ、えっと……祝宴の料理のお手伝いをしに行こうと……」
私の肩に顎を乗せた信長様に、 これからしようとしていることを簡潔に話す。
心地良さそうに眠っていたから起こしたくはなかったのだけれど、勝手にどこかへ行こうとしている私に、不機嫌になっていることだけは、
纏っている信長様の雰囲気で察してしまった。
「俺の許諾なしにどこかへ行こうとするとはな。
あれだけ仕置きをしてやったというのに、 どうやらまだ分かっておらんようだな」
「えっ……あっ!?」
突然視界が揺れて、信長様と天井しか視界に映らなくなる。
天井を見てやっと押し倒されたのだと気付いた。
「の、信長様……?」
「俺の傍から離れることは許さん。
祝宴の支度は秀吉たちに任せておけ。
今日の貴様の役目は俺の相手をすることだ」
グッと近付いてきた信長様の端正なお顔と、真っ直ぐに私を見下ろす深紅の瞳に、私は目が離せなくなる。
「それが貴様から貰う最初の贈り物だ」
折角結んだ帯をあっという間に解かれ、近付いてくる信長様の顔を見て、
私はゆっくりと受け入れるために瞼を閉じた──。
いつも余裕で不敵な笑みを浮かべるあなたの顔も、
時折見せる少年のような悪戯な笑みも、
私だけに見せてくれる弱々しいお姿も、 何もかも私を魅了する全てで。
もう二度とあなたのいない日々には戻れないのだと、
一ヶ月離れていた日々の中で強く実感した。
もうあなたと離れ離れの日々は耐えられないから、
どうか私を捕らえて離さないで。
私の人生の全て、愛おしい人。
今年もあなたの生まれ日を共に迎えられて良かった。
【the end】
一月前に突然開いたワームホールにより、強制的に現代へ帰された私は、今年は大好きな人のお誕生日を祝えないのだろうか……と不安になっていたけれど、
信長様のお誕生日の三日前に、こうして信長様の元へ戻ってくることができた。
一ヶ月間信長様に会えない日々は、まるで心に穴が空いたように空っぽな気持ちでいっぱいだった。
ようやく会えた時、嬉しくて涙を流してしまったけれど、そんな私を信長様は優しく抱き締めてくれた。
それから約二日関の間に、現代へ強制的に帰される前に作っていた新しい着物を完成させることに集中した。
毎年信長様のお誕生日には、新しい着物を作り、贈るようにしていた。
毎年市へ赴いては、信長様に似合う反物を探す日々も楽しくて仕方ない。
そんな私を信長様はきっと知っているからこそ、誕生月になると「新しい着物を作れ」と、私に言ってくるのだろう。
だから毎年、信長様が満足していただけるような素敵な着物を仕立てることにしている。
そんな充実した時間は一刻一刻と過ぎていき───。
遂に信長様のお誕生日当日がやってきた。
天主に差し込む陽の光にゆっくりと瞼を開けると、隣にはゆったりと眠っている信長様のお顔が近くにあった。
突然現代に帰されたあの日から、三日前に帰ってきたとき、
若干の疲れと憔悴した表情を見せていた信長様は、
きっと私が居ない一月の間、一睡もしなかったのだろう。
現代からようやく安土城に帰ってきた時に、 秀吉さんから「今日はずっと信長様の傍にいてくれないか」と言われた。
こうしてぐっすりと眠っている姿を見ると、何だか嬉しく感じてしまう。
こんなにも無防備な姿を見せてくれる信長様が、より一層愛おしく感じてしまう。
私の腰に片腕を回し、がっしりと抱きしめる信長様を
起こさないようにそっと起き上がる。
さて、着替えたら早速お祝いの料理を作ろう!と張り切って身支度を始める。
「……舞」
「わっ……!?」
いそいそと帯を結んでいると、 後ろから寝起き特有の掠れた声で、 私の名を呼んだ信長様に抱きしめられた。
「の、信長様!? ごめんなさい、起こしてしまって……!」
「どこへ行くつもりだ?」
「あ、えっと……祝宴の料理のお手伝いをしに行こうと……」
私の肩に顎を乗せた信長様に、 これからしようとしていることを簡潔に話す。
心地良さそうに眠っていたから起こしたくはなかったのだけれど、勝手にどこかへ行こうとしている私に、不機嫌になっていることだけは、
纏っている信長様の雰囲気で察してしまった。
「俺の許諾なしにどこかへ行こうとするとはな。
あれだけ仕置きをしてやったというのに、 どうやらまだ分かっておらんようだな」
「えっ……あっ!?」
突然視界が揺れて、信長様と天井しか視界に映らなくなる。
天井を見てやっと押し倒されたのだと気付いた。
「の、信長様……?」
「俺の傍から離れることは許さん。
祝宴の支度は秀吉たちに任せておけ。
今日の貴様の役目は俺の相手をすることだ」
グッと近付いてきた信長様の端正なお顔と、真っ直ぐに私を見下ろす深紅の瞳に、私は目が離せなくなる。
「それが貴様から貰う最初の贈り物だ」
折角結んだ帯をあっという間に解かれ、近付いてくる信長様の顔を見て、
私はゆっくりと受け入れるために瞼を閉じた──。
いつも余裕で不敵な笑みを浮かべるあなたの顔も、
時折見せる少年のような悪戯な笑みも、
私だけに見せてくれる弱々しいお姿も、 何もかも私を魅了する全てで。
もう二度とあなたのいない日々には戻れないのだと、
一ヶ月離れていた日々の中で強く実感した。
もうあなたと離れ離れの日々は耐えられないから、
どうか私を捕らえて離さないで。
私の人生の全て、愛おしい人。
今年もあなたの生まれ日を共に迎えられて良かった。
【the end】
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