真空色(まそらいろ)の想い
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「……あの、さ」
凪紗ちゃんを誘おうと口を開いたとき、 それを遮る震動。
「……あ。マネージャーさんだ。すみません、ちょっと失礼します」
彼女は席を立って、壁際に寄ってから話し始めた。
その声は、段々トーンが落ちていき、でも最後には
「いえ、なんでもありません。……今はちょっと外にいるので……はい。一時間以内には行けると思います」
そう明るく答えて、通話を終えた。
「……すみません、一磨さん。オフじゃなくなってしまいました……」
申し訳なさそうに頭を下げる。
その姿を見て、残念な気持ちと同時に、誘う前で良かったとも思った。
律儀な彼女のことだから、きっと凄く気にしてしまうだろう。
だから勢いづいた気持ちを胸にしまって、冷静な顔で。
「仕事なんだし、気にしないで」
そう答えた。
そして、電車で行けるから大丈夫と固辞するのを、さっきみたいな事もあるしと説得して、少しだけ先の、いつもの駐車場へ向かうことにした。
外に出ると、青空から落ちてくる弱い雨。
凪紗ちゃんが開いた、お気に入りの傘。
さっき見た、薄いブルーの。 空の色に馴染んで、まるで彼女の周りで魚が踊っているようで。
落ちてくる僅かな雨粒がキラキラ光り、更に彼女を照らす。
「……綺麗だ」
「え?」
立ち止まって彼女を見る俺を振り返って「……あぁ」と、傘を見上げた。
「天の色、天色(あまいろ)っていう色なんですって。‘青天の澄んだ空のような青色’そういう意味だそうです」
傘の事を言ったと勘違いしている凪紗ちゃんは、周囲を確認してから、くるくると楽しそうにそれを回す。
「ロケにいった先のお店で見つけたんです。パーツとか柄とか、一つずつ選んで作ってもらえるんですよ。一目で好きになっちゃって」
「雨の日も気持ちが明るくなるし、楽しいだろうなって。それに……」
一度言葉を切って、真っ直ぐにこっちを見た。
「別名が、‘真空色’(まそらいろ)……って、言うんです」
彼女はしっかりと、目を反らさずに俺に視線を合わせて続けた。
「……映画の、あの時の一磨さんとの事を、思い出すから……だから……」
「……待って」
言葉の続きを待たず、凪紗ちゃんを遮った。
先に話すことがある。
これは俺の方から伝えたいと、思ったから。
「今度はさ。……初めから約束をして、会えないかな?」
「え?」
「これからも、こんな風に、君と一緒にいたい。仕事仲間としてじゃなくて……」
あぁ、こんな言い方じゃ駄目だ。
もっとはっきり、ちゃんと伝えないと。
深く息を吸い込んで、 空を見上げて、 ゆっくりと視線を彼女の瞳に戻して。
「好きなんだ、凪紗ちゃんの事が」