one morning
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「一磨さん、真っ赤。」
その言葉に、一気に目が覚めた。
意識がはっきりした状態で辺りを見渡すと、日差しはかなり高い。
きっともう、朝というよりは昼に近い。
彼女はもうだいぶ前に起きていたのだろう。
髪はきちんと後ろで纏めて、エプロン姿。
太陽と……ほんのり甘い香り。
お互いに仕事のないこんな朝は、今まで何度も過ごしてきた。
いつもは俺の腕の中に小さく納まって、可愛い寝顔を見せる凪紗ちゃんだけど、俺がたまに寝過ごしてしまう時は、立場が逆転して、少し悪戯な顔になる。
そんなことも思い出して。
だけど甘えさせてくれる彼女にたまには委ねて、このままでいたい気持ちもした。
でもやっぱり、逆転している立場を返したくもなる。
だから、二度寝で軋んだ身体をぐっと起こして勢いよく凪紗ちゃんに手を伸ばすと、そのままベッドへ引き込んだ。
「きゃ……」と、驚いた声を上げた凪紗ちゃんの、その肩に手を当て、くるりと反転させて覆いかぶさるように近づいて。
そのまま唇を合わせて視線を絡ませる。
凪紗ちゃんの顔は、見る見るうちに赤く染まっていく。
「凪紗も、赤いよ?」
「……もぅ。ずるいなぁ、一磨さんは」
拗ねた口ぶりでそう言った彼女は、すぐにまた笑った。
「おはよう。もう、洗濯も乾いたよ?」
「ご飯、食べましょ?」
抱き寄せられた頭。 体重をかけないように気を付けながら、彼女の胸の鼓動に耳を傾けた。
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顔を洗って身支度を整えてからリビングへ戻ると、すっかり乾いた洗濯物がソファーの上で綺麗に畳まれていて。
今は、シーツが洗濯機の中。
忙しく動き回る凪紗ちゃんが食卓に並べ始めたブランチに、素直に感嘆の声を上げた。
「すごいな、カフェで食べるみたいだ」
「ちょっと、張り切っちゃった。ほら、昨日はパーティで、あまりきちんと食べられなかったでしょ? 一磨さんあちこちで捕まっちゃってたから」
はにかみながら、色とりどりのマフィンをひとつひとつ説明してくれる。
彼女の甘い香りの理由は、俺への気遣い。
自分だって同じ場所にいて、同じように疲れているはずなのに。
「……私は、山田さんが一緒だったから。お酒もあまり飲まなくて済んだし」
気持ちを見透かしたように笑う。
だから素直に「ありがとう」と、そう言って席に着いた。
向かい合って「いただきます」と言い、コーヒーに口をつけた。
「監督、久しぶりでしたね」
「ああ……お酒が入ってから挨拶に行ったからさ、ひやひやしたよ」
「あ、私は叱られました。`お前ら使いたくても忙しすぎてスケジュールが合わない、なんとかしろ’って」
「……ははっ。相変わらずだなぁ」
「あ、あと……千秋楽のチケット送ってくれるって。`ちゃんと事務所宛に招待状を送るから、堂々と揃って来い’って」
昨日のこと、今日これからのこと、仕事の話や次の約束。
なんでもないこと、少し真面目な話。
ゆったり流れるこの時間も、まだ世間には知られていない関係の俺たちには、必ず区切りがある。
それが数時間でも数日でも、「またね」と言わなければならない時が来る。
「今日はどうする?」
あれこれと二人で計画を立てながら。
心の片隅では、今夜の「おやすみ」が今朝のような「おはよう」に繋がらないことを、寂しく思った。