a spoonful of happiness
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「おいしい……それに、あったかい」
覗き込んだ彼女は少し体を小さくして、ほんのり染まった頬を綻ばせた。
でもすぐにそれが、少し困ったような笑顔に変わる。
「今年のクリスマスは、一磨さんに貰いっぱなし」
そう言いながら両手で持ったマグを顔に近づけ、尖らせた唇でフーっと吹いてから、今度は半分ほどの量を一度に飲んだ。
「……やっぱり、あったかい」
また、俺の腕にコツンとくっついて。
「私は何も用意してない……」
ため息をついて、俯いた。
「 そんな事ない。昨日プレゼントだって貰ったよ」
「でも、ケーキもご馳走も作らなかった」
「それも一緒に決めてた事だよ。夜遅いし、ゆっくり休もうって」
「それでも一磨さんは朝のスムージー、クリスマスカラーにしてくれました。私は夕べお皿洗っただけで寝ちゃったのに」
「ライブの前だから早く寝てって、俺の方から言ったんだよ」
「そうだけど……」
「このコーヒーも、一磨さんは私のにだけ、クリームとミント載せてくれてる」
「え?」
凪紗ちゃんは「可愛い」と、マグに視線を落とした。
「私も一磨さんに、少しだけでもいいから……何か特別な事したかったな」
“気にすることないのに”
そう言ってしまいそうになった。
一緒にいられるだけでいい、それは嘘ではないし。彼女もその気持ちは同じだと思う。
けど凪紗ちゃんが思ってくれてるのは、きっとそんな難しいことじゃなくて。
でもすれ違いも多い二人にはきっと大切なこと。
気持ちをどうにかして伝えたくて。
彼女の手からマグを取ってテーブルに置いて、正面の床に膝立ちになって抱き締めた。
「特別なこと、してくれたよ? 先に帰ってきて、ここで待っててくれた」
「そんなの……」
「そんなのじゃない。どれ位嬉しかったか、上手く説明も出来ないよ」
「……ね?」
ソファーに座り直してまた抱き締めて、凪紗ちゃんを胸に押し付けるみたいにピッタリくっついて。
彼女が安心するように、そのまま動かずにいた。
そうする内に、少しずつ肩の力が抜けふわりと身体をこちらに預けた凪紗ちゃん。
「今度は……」
「今度鍵を使わせてもらうときは……頑張るから。楽しみにしてくださいね?」
背中に回した手をキュッと握る彼女に、
「もっと気楽に使って欲しいなぁ」と笑うと、
「いいの、最初はそうしたいんだから」と、またさっきの拗ねた口調で答えて。
それから、「……二回目だけど」と呟いた時には、もう二人とも笑い声で。
「わかった。楽しみにしてる」
ぎゅっと彼女を包んで、いつの間にか終わっていたテレビの電源を落とした。
そのまま凪紗ちゃんをひょいと持ち上げて、「明日も早いから、もう寝よう?」と歩き出す。
「自分で歩けますよ」
「だめ、俺がしたいんだから」
バタバタする凪紗ちゃんにそう答えながら、ベッドルームのドアを開けた。
「あ、そうだ。特別な事、してくれるんだよね?」
ポスンとベッドに凪紗ちゃんを下ろして、きょとんとしている彼女の顔のすぐ横に近づいて。
「おやすみのキス、凪紗ちゃんからして欲しいな」
俺だけの愛しいサンタに、お願い事をひとつ。
日付はもう変わってしまったけど。
あわてんぼうのサンタがいるなら、のんびり屋のサンタもいるかもしれないし。
「お願い聞いてくれるよね?」
Fin.
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