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凪紗はエプロンを外して、空になった食器だけをキッチンへ片付ける。
一磨がそれを手伝いながら、すれ違い様に凪紗の頬にキスを落とす。
立ち止まって、さっきのようにまた手を頬に当てて……それから凪紗は一磨のシャツの裾を軽く引いた。
「凪紗ちゃん?」
「……今日も、電話していいですか?」
下を向いたまま、ポスンと小さな身体が一磨の胸に納まる。
「うん、もちろん」
「……時間、遅くても?」
「何時でもいいよ」
「じゃあ、お休みなさいを言わせて?」
一磨の背中にきゅっと回した手の力が少し強くなり、すぐに離れた。
「行ってきます。一磨さんもお仕事頑張って下さいね」
「うん、オフが予定通り取れるように、あと少し頑張ろう」
玄関までの短い距離を、指を絡ませるように手を繋いで歩く。
初めて鍵を使って部屋に入り、そこで待っていてくれた凪紗を抱き締めた数時間前の事が、一磨にはもう夢のように感じられて。
ため息をつきそうになった、その時──。
「あの……ね」
凪紗がブーツを履いて振り返って、バッグから鍵を取り出した。
「鍵、私が掛けてもいいですか?」
「え?……ああ、もちろん構わないよ?」
何故か赤くなる凪紗を見下ろしながら答えると、「ありがとう」と下を向いたまま少し笑う。
一磨が掬い上げるように唇に触れると、それに応えて少し上向きになった顎に指を添え、今度は少し長く重ねた。
「行ってらっしゃい、凪紗」
「はい、行ってきます、一磨さん」
凪紗の姿がドアの向こうに消える。
でも扉の向こうに気配を感じて、一磨は扉に手を当てた。
その時、鍵がカチリと鳴り回転する。
ロックされた扉に触れたまま、もう片方の手で胸を押さえた一磨は、凪紗も同じように扉に触れているのを感じた。
見えたわけではなく、でも確かに。
そこに、今の自分と同じようにしているのが分かった。
やがて、コツン……と音がして。
小さな足音が遠ざかる。
『私も一磨さんに、少しだけでもいいから……何か特別な事したかったな』
夕べの言葉を思い起こして──
「十分、特別な日だよ」
扉に向かって、頬を緩めた。
Fin.
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