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急ぎ足で進む、もうすっかり歩き馴れた道。
今日は一年で最も華やかに輝く夜。
それだけで緩んでしまう頬に気恥ずかしくなりながら── 君にもらった手袋と、 君が編んでくれたマフラー、 二人で選んだコートを身に着けて、待ち合わせの場所へ向かう。
服だけじゃない。
鞄の中の小物の一つ一つ、どれをとっても、どんな小さな物も、きっと全部が二人の想い出に繋がってる。
そんな風に君でいっぱいの鞄の中には、今夜のためのプレゼント。
歩きながら見上げる景色や、道のあちこちにも、二人の日々は溢れてる。
君を知らない頃の自分がどうやってここを歩いていたのかなんて、もう覚えてない。
それくらい長い年月を君と過ごしてきた。
今ここに足りないのは、君だけ。
何よりも大切な── 凪紗。
待ち合わせの場所に、まだ君はいなくて。
先に着いて良かったとホッとした息が、驚くほど白く広がった。
急に下がった気温に慌ててマフラーを引き上げて肩を竦ませたり、コートの襟を立てる通行人。
それをぼんやり見渡してから、自分もマフラーを深くして顔を半分隠した。
今まで何度も、同じように待ち合わせをした。
俺の方が先に着いた時。
「慌てないで」といつも言っているのに、それでも君はパタパタと急ぎ足で。
それなのに俺が走って来ると、 「そんなに急がなくていいよ?」と、同じ事を言う。
だから「お互い様だね」と笑い合って。
結局いつも、同じやり取りを繰り返す。
寒い日はマフラーで顔を隠して。 暑い日は、眼鏡をかけたり、君はメイクで少し雰囲気を変えたりして歩いた。
長い日々の中にあったのは、楽しい事ばかりではなくて。
ちょっとしたすれ違いがきっかけで不安になった日もあったし、寂しい思いもさせたと思う。
君はそういう気持ちを、なかなか打ち明けてはくれないけど。
そうして幾つもの季節を過ごして。
今日も、ここで君を待つ。
だけど、いつもと変わらない待ち合わせだけど、今年は少し違ってて。
だからきっと、特別な想い出になる。
次々溢れる想いに胸がいっぱいになって。
壁に凭れ、ゆっくりと空を見上げた。
君の事を考えながら目を閉じると、閉じた瞼の裏にも街の灯りは、じわりと滲んで。
なぜか涙が出そうになって……。
「……凪紗」
無意識に呟いた時。
唇に、冷たい何かが触れた。
そのすぐ後に、パタパタと聞きなれた音。
「雪……降ってきたね」
優しい声がして── 目の前には、待ち焦がれた笑顔。
イルミネーションを背にした君が、あまりに綺麗で儚げで。
「……夢みたいだ」
両手を広げてそう言った。
ぴょん、と、わざと飛び付くように半歩前に出た君は、同じように腕を広げ、俺の胸に頬を寄せた。
「夢じゃないよ」
そして背中に手を回して、お互いをそっと包み込んだ。
「メリークリスマス、一磨さん」
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