[桃色のチューリップ(恋の始まり)]
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
これ、どうするかな……
小道具の花束を見た瞬間、あの子を思い出した。
色んな色の花束があって好きなものを選べたんだけど、何でかひとつだけが目について、だから迷わずその花を選んで撮影して──その間もずっと、あの子の笑顔がちらついて離れなくて。
だから何となく、つい、勢いで……貰ってきたのはいいんだけど。
プレゼントしようとか考えたんじゃないし、そもそもオレ……あの子が今日何してるかも分からないし。
オレんちに飾ればいいんだよな、そうだよ。
だって、使い終わったこういうのって、欲しい人にあげることはあっても、余ったらそのまんま捨てられるみたいだし……勿体ないじゃん?
「やばっ時間時間」
早く楽屋に戻んないと。次の仕事どこだっけ?
足を早めたら、花の香りがふわっと鼻を擽った。
束ねたピンクのチューリップの、ひとつひとつの隙間に散らばるかすみ草や小さな他の花が、あの子が笑ったときの髪みたいに小さく揺れてて……
──可愛いな。
……って、だからそうじゃなくて!
ぶんぶん。
頭を振ってそのイメージを追い払うけど、逆効果。
やればやるほど、頭の中にあの子が浮かんでくる……。
「はあ……」
オレ、廊下で一人、何やってるんだろ。
あの子も今日、どこかで撮影とかしてるのかな。
──ばったり会えたりしないかな。
「あー、もう!」
花を持ってない方の手で髪をぐしゃぐしゃってして
──そしたらやっぱり、花束からは甘い香りと、キラキラした笑顔のイメージ。
立ち止まって、花束の中心を覗く──
やっぱり……好き、だな。
「これ……ほんとにどうしよ」
「これって……そのお花?」
「──っ、ぅうわっ!」
「え? あ、ご、ごめんなさい!」
「え、いやこっちこそごめん! えっと……」
「おはようございます、翔くん」
「お、おはよ!」
丁寧なお辞儀の後に、少し首を傾けて笑ってるのは……
嘘だろ。
目の前に、今まさに想像してた、“あの子” が立ってる。
魔法みたいに現れた凪紗ちゃんの服は、薄いピンク色のフワフワした袖が、オレが持ってる花と雰囲気も被ってて……揺れる髪とか、スカートとか、……やっぱり、可愛い。
「翔くんも、ここだったんだね」
「あー、うん。でもオレは、終わったとこ、凪紗ちゃんは今から?」
「そうなんだね。私はさっきまで事務所にいて、今から入るの」
「そっか。残念……」
「え?」
「あ。いや、何でもない。あ、じゃなくて、はい! よかったら!」
勢いよく差し出したチューリップは、パサパサと小さな音を出して揺れて、その向こう側にいる凪紗ちゃんは目を丸くした。
「……いいの?」
「えーと、嫌いじゃなければ。撮影に使ったやつだけど」
「勿論、素敵な花束だもん。でも──本当に私にくれていいの?」
「あ、でも。撮影で使ったやつとか、迷惑かな……」
「まさか、そんなことないよ、すごく嬉しい」
「そっか……よかった」
「うん。本当にありがとう」
そしたら──
ツキン──って、胸の真ん中辺が痛くなった。
あれ……? ってびっくりして。
今度は、手放した花束が彼女の腕の中で揺れるている。
オレの斜め下正面から、ゆっくり……そろそろーって感じで視線を上に移した凪紗ちゃん。
「どうしよう──すごく、嬉しい」
そう言いながら、少しだけオレと目が合って。
慌てたようにすぐに俯いて花の中心に顔を寄せた君の頬はほんのりピンク色、ふわふわ揺れる桜の花みたい。
──って、この場合は “チューリップの花みたい” が正解かな。
思わず『チューリップとお揃いだね』なんて台詞が出てきそうになった。
言えるわけないんだけど。
その時また、顔を覗かせた彼女と目が合って。
「ありがとう、翔くん」
ほころんだ笑顔、色づいた頬、花を抱きしめるキレイな手。
──ドキン。
また鳴った音は、今度はオレの頬を赤くする合図。
fin.
1/2ページ