【桃色のチューリップ(恋の始まり)】キャラはLoveDuet設定
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「一磨さん?」
「え、ああ、ごめん。ちょっとボーッとしてた」
「ごめんなさい、ひとりではしゃいじゃって。戻って休みましょう」
「あ、ごめん、違うんだ。そういうことじゃなくて」
ロケ先での休憩時間。 偶然隣り合って食事をして、その場にいたスタッフや役者仲間と、何となく散歩をする流れになって── 道々の店で立ち止まったり、そのまま話し込んだり。
そうする内にいつの間にか、二人になっていた。
凪紗ちゃんはそれに気付いているのかいないのか、特に急ごうとする様子もなくて。
他に日本語は聞こえてこないそんな環境で、少し解放感があるせいもあって、俺も気にしないことにして……
二人だけで、のんびり歩いた。
そんな道すがらに見つけた、石畳に佇む小さな店。
独特の足音が響くこの道は、俺の鼓動を上手く消してくれているだろうか。
──聞こえたとしても、彼女が俺の気持ちを知るはずもないのだけど。
「いいなあ……でも、ホテルに飾っても日本には持って帰れないし……ううーん、ああでも……っ」
ワゴンの前でうんうんと悩んでいる顔はあまりに真剣で、よっぽど気に入ったのだろうと更に覗き込むと、眉間にシワまで寄せている。
横から見たり一歩引いてみたり、凪紗ちゃんは忙しそうだ。
そうこうする内に、店番をしていた、俺よりは少し年上に見える青年が、こちらに向かってジェスチャーで語りかけてきた。
『買ってあげなよ』
そんな感じの陽気な仕草。
彼もきっと、この様子を楽しんでいるんだろう、腕組みをして、にこにこと口元を綻ばせている。
そんな彼に目配せをして互いに頷き、ポケットの中のコインと花束を、静かに交換した。
後ろ手にそれを隠してもう一度彼女の隣へ立つと、ハッとしたようにこちらを向いて、また「あっ」と慌てた顔になる。
それから少し照れたようにへへっと笑う仕草をして、屈んだ姿勢をまっすぐに直して「堪能しました、ありがとうございます。もう戻りましょうか」、そう言ってくるりとこちらを向いた。
そのタイミングで。
「どうぞ、よかったら」
「え?」
「このままだとチューリップに穴が開いちゃいそうだし、ね」
なるべく自然に……深い意味があるようになんて見えないように──見上げてくる凪紗ちゃんの片手を導いて、花束を握らせた。