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鋼の錬金術師×るろうに剣心①

エドは朽ちた廃屋の壁にもたれながら、さっきの剣心との会話を思い返していた。

「……支えられていた、か」

確かに、今の自分があるのは、アルやウィンリィ、師匠……そして旅の中で出会った仲間たちがいたからだ。

——それでも、ここには誰もいない。

エドはふっと息を吐き、肩をすくめた。

「……さて、と」

動き出そうとした、その時だった。

「よう、お嬢ちゃん。随分と考え込んでたな」

どこからともなく響いた軽薄な声。

エドが咄嗟に振り向くと、そこには、黒い着物をまとった男が立っていた。

——さっきの、黒羽織の男とは違う。

それどころか、こいつは……まるで、どこにも属していないような、そんな“異質な気配”をまとっていた。

「……お前、誰だ?」

エドは警戒しながら問いかけた。

男は楽しげに微笑み、片手を軽く上げて見せる。

「俺か? まぁ、通りすがりの見届け人ってとこかな」

「見届け人……?」

何の冗談だ。

「それに、"お嬢ちゃん"じゃねぇ。エドワード・エルリックだ」

「ほう? エルリック……ねぇ」

男は意味ありげにその名を繰り返し、口角を上げる。

「……で、俺に何の用だ?」

「いや、別に。ただ、お前さんのことがちょっと気になってな」

「気になる?」

「そうさ。異国の、それもずいぶんと変わった技を使う旅人……いや、異邦人って言った方が正しいかな?」

エドの目が細まる。

——こいつ、何か知ってる。

「……なぁ、エルリック」

男はゆっくりと近づき、静かに呟いた。

「"この世界にも、扉はあるのか?"」

——瞬間、エドの背筋に冷たいものが走った。

「……ッ!?」

思わず身構える。

扉。

そう、“真理の扉”——それを知る者が、なぜこの世界に?

「おい……今の、どういう意味だ?」

エドが問い詰めると、男はふっと笑い、軽く手を振った。

「さぁな。ただの戯言さ。お前さんが何を知っているか、試してみたくなっただけだよ」

「ふざけんな……!」

思わず詰め寄るが、男はその場でひらりと身を翻し、笑う。

「またいずれ会おうぜ、エルリック」

次の瞬間——男の姿は、まるで霧のように掻き消えた。

「……っ!」

エドは周囲を見回すが、男の姿はどこにもない。

静寂だけが、辺りを支配していた。

「扉……だと?」

エドは強く拳を握る。

あの男——あいつは、何者なんだ?

エドがこの世界に飛ばされたことと関係があるのか?

「……クソ、考えても仕方ねぇ」

エドは小さく舌打ちをし、立ち上がった。

とにかく、あの男について探らなきゃならねぇ。

——この世界に"扉"があるのか、それを確かめるためにも。男が消えた後も、エドの胸には不快なざわつきが残っていた。

(……扉って、まさか“真理の扉”のことを言ってるのか?)

この世界にも扉があるのなら、そこを通じて元の世界に帰れるのかもしれない。

だが——それは本当に“望んでいいもの”なのか?

エドは小さく舌打ちし、手を握りしめた。

(考えても仕方ねぇ……今は情報を集めるしかねぇな)

まずは、あの男の正体を探る。

そして、この世界でどうやって生き抜くか考えなければならない。

「……ったく、つくづく面倒くせぇな」

エドは長い息をつき、森を抜けるべく歩き始めた。
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