歌う魔法生物
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ぼんやりと覚えていることを辿ると、あれは確か、オズを殺しに行った時だった。
夜になれば、奇妙な傷で魔法が使えなくなるオズの命を狙おうとして、夕暮れに返り討ちに遭って吹き飛ばされた後。思い出すだけでもやり返したくなるが、気付いたら、この奇妙な世界にやってきていた。
厄災で世界が滅ぼされることはない世界なんて初めて見たが、ミスラの体に刻まれたあの忌々しい刻印は消えていなかった。
どういうことなのか、と考えたところでミスラは思考を放棄した。元より彼は、考えるのが苦手である。
弱いか生きるか。殺されるか殺すか。死ぬか生きるか。ミスラの頭の中は、そんな単純な天秤で出来ていた。
「まぁ、死なないなら別にいいです」
よく分からない世界に引き込まれて数日後。ミスラは一人呟いたが、そうだった。自分の体にある刻印は消えてはいない。奇妙な傷も、残ったままなのだ。
「はぁ……」
ミスラは頭をさすった。もう、三徹以上のミスラの機嫌は最悪だった。
眠れない。
そんな簡単なことが出来なくなるとは思いもよらなかったミスラは、この奇妙な傷をひどく嫌っていた。
この世界に飛ばされたのは自分だけなのだろうか、とミスラは考えたが、それすら思考を放棄した。一人ではないということが分かっていたので、それですでに面倒臭さを感じていたのだ。
この数日間で分かったことは、まず、あのマスターハンドだと名乗る手だけの魔法生物は、オズか、それ並み以上に強いということ。
「殺します」
とミスラが骸骨の魔法具を振りかざした途端、クレイジーハンドが横入りしてきて返り討ち。
何度か戦ったが勝つことはなく、ただ、マスターハンドもクレイジーハンドもこちらを本気で殺す気はないらしい、ということだけが分かり、ミスラはしぶしぶ、与えられた部屋で過ごすことにした。
そして、もう一つは、その与えられた部屋が静かではないということ。
「うるさいですね……」
とミスラが魔法を放っていたら、間もなくマスターハンドたちに拘束され、長々と説教をされる始末。
ミスラはただ眠りたいだけだった。だが、この世界は、魔法の扉でどこか遠くへ行こうものなら、謎の人形に襲撃されて静かな場所がない。
「はぁ……」
そうして、唯一人形の襲撃から守るために周りに結界が貼られてある屋敷へとミスラは戻ってくるのだが、こうなることなら、賢者を連れてきたら良かった、と考え始めていた。異世界に来ると分かっていたのなら、触れるだけで眠れるあの賢者さえいれば、ミスラはどこの世界で生きようがどうでもよかったのだ。
「アルシム」
詠唱するミスラ。すると、いつもの魔法の扉が目の前に現れたが、ミスラはその扉を開けようともせず、目を伏せた。
……元の世界への扉は繋がらない。
となると、まずは賢者を探すことから始めたらいいのでは、とミスラながらいいことを思いついてはいた。だが、今はそんなことより早く眠りたい。眠れば、探索魔法だってすぐに使える。
ミスラは木陰に腰を下ろした。よく知らない女がこの中庭の管理をしているそうだが、ミスラにとってはどうでもいいことだった。
中庭にはいい香りが漂っていた。眠気でぼんやりとする頭の中、ここなら眠れるかも、とミスラが目を閉じた時。
「プリプリー!」
いつも決まって邪魔が入る。
「なんですか」
ミスラは頭をさすりながら、声の主を見やった。
ピンク色の丸い生き物が、マイクを持って目の前にいた。
変な魔法生物、とミスラは思ったが、眠りを妨げたことには変わりない。ミスラは指を突き出した。
「アルシ……」
いつものように呪文を唱えようとしたところだった。ピンク色の丸い魔法生物が、突然不思議な形をした杖を構えたのだ。
例えこの生き物が魔法生物だとしても、魔法使いのように杖や魔法具を使うなんて見たことも聞いたこともない。
「プ〜プリ〜プ〜プリ〜プ〜プリ〜ル〜♪」
それは、不思議な呪文だった。
ミスラの体中から一気に力が抜け、視点は地面へと倒れる。次には、強い睡魔。
ミスラは、何が起きたか分からないまま、ようやく眠りについたのである。
後に、ミスラは賢者と再会し、救世主と呼ばれる人物がこの世界にやってくるのだが……世界のことを放って、プリンと呼ばれるピンク色の丸い魔法生物を追い回すきっかけになるのは、また、別の話。
夜になれば、奇妙な傷で魔法が使えなくなるオズの命を狙おうとして、夕暮れに返り討ちに遭って吹き飛ばされた後。思い出すだけでもやり返したくなるが、気付いたら、この奇妙な世界にやってきていた。
厄災で世界が滅ぼされることはない世界なんて初めて見たが、ミスラの体に刻まれたあの忌々しい刻印は消えていなかった。
どういうことなのか、と考えたところでミスラは思考を放棄した。元より彼は、考えるのが苦手である。
弱いか生きるか。殺されるか殺すか。死ぬか生きるか。ミスラの頭の中は、そんな単純な天秤で出来ていた。
「まぁ、死なないなら別にいいです」
よく分からない世界に引き込まれて数日後。ミスラは一人呟いたが、そうだった。自分の体にある刻印は消えてはいない。奇妙な傷も、残ったままなのだ。
「はぁ……」
ミスラは頭をさすった。もう、三徹以上のミスラの機嫌は最悪だった。
眠れない。
そんな簡単なことが出来なくなるとは思いもよらなかったミスラは、この奇妙な傷をひどく嫌っていた。
この世界に飛ばされたのは自分だけなのだろうか、とミスラは考えたが、それすら思考を放棄した。一人ではないということが分かっていたので、それですでに面倒臭さを感じていたのだ。
この数日間で分かったことは、まず、あのマスターハンドだと名乗る手だけの魔法生物は、オズか、それ並み以上に強いということ。
「殺します」
とミスラが骸骨の魔法具を振りかざした途端、クレイジーハンドが横入りしてきて返り討ち。
何度か戦ったが勝つことはなく、ただ、マスターハンドもクレイジーハンドもこちらを本気で殺す気はないらしい、ということだけが分かり、ミスラはしぶしぶ、与えられた部屋で過ごすことにした。
そして、もう一つは、その与えられた部屋が静かではないということ。
「うるさいですね……」
とミスラが魔法を放っていたら、間もなくマスターハンドたちに拘束され、長々と説教をされる始末。
ミスラはただ眠りたいだけだった。だが、この世界は、魔法の扉でどこか遠くへ行こうものなら、謎の人形に襲撃されて静かな場所がない。
「はぁ……」
そうして、唯一人形の襲撃から守るために周りに結界が貼られてある屋敷へとミスラは戻ってくるのだが、こうなることなら、賢者を連れてきたら良かった、と考え始めていた。異世界に来ると分かっていたのなら、触れるだけで眠れるあの賢者さえいれば、ミスラはどこの世界で生きようがどうでもよかったのだ。
「アルシム」
詠唱するミスラ。すると、いつもの魔法の扉が目の前に現れたが、ミスラはその扉を開けようともせず、目を伏せた。
……元の世界への扉は繋がらない。
となると、まずは賢者を探すことから始めたらいいのでは、とミスラながらいいことを思いついてはいた。だが、今はそんなことより早く眠りたい。眠れば、探索魔法だってすぐに使える。
ミスラは木陰に腰を下ろした。よく知らない女がこの中庭の管理をしているそうだが、ミスラにとってはどうでもいいことだった。
中庭にはいい香りが漂っていた。眠気でぼんやりとする頭の中、ここなら眠れるかも、とミスラが目を閉じた時。
「プリプリー!」
いつも決まって邪魔が入る。
「なんですか」
ミスラは頭をさすりながら、声の主を見やった。
ピンク色の丸い生き物が、マイクを持って目の前にいた。
変な魔法生物、とミスラは思ったが、眠りを妨げたことには変わりない。ミスラは指を突き出した。
「アルシ……」
いつものように呪文を唱えようとしたところだった。ピンク色の丸い魔法生物が、突然不思議な形をした杖を構えたのだ。
例えこの生き物が魔法生物だとしても、魔法使いのように杖や魔法具を使うなんて見たことも聞いたこともない。
「プ〜プリ〜プ〜プリ〜プ〜プリ〜ル〜♪」
それは、不思議な呪文だった。
ミスラの体中から一気に力が抜け、視点は地面へと倒れる。次には、強い睡魔。
ミスラは、何が起きたか分からないまま、ようやく眠りについたのである。
後に、ミスラは賢者と再会し、救世主と呼ばれる人物がこの世界にやってくるのだが……世界のことを放って、プリンと呼ばれるピンク色の丸い魔法生物を追い回すきっかけになるのは、また、別の話。
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