見えない人の力
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翌朝、コムギは、ネフェルピトーと一緒に部屋を出て行った。
コムギはあんなにも低姿勢な態度ではあるが、なぜだか少し嬉しそうな表情だった。そんなに、ヘレナという人物が気に入っているのか、本というものが気になるのか。
数時間後、コムギとネフェルピトーは、その全盲の少女を連れて来た。
「お主がヘレナか」
「はい。ヘレナ·アダムスです」
メルエムの言葉に、ヘレナと名乗る少女は礼儀正しく頭を下げた。どうやら見る限り、コムギと違って目は開いている。
「遅くなった理由を申せ」
メルエムは問いただした。コムギが食堂で食事に行っている間は、せいぜい二時間で帰ってきていた。
ヘレナは脇に抱えていた本をメルエムに見せた。
「コムギちゃんに合いそうな本を選んでいました」
その本は、カラフルな絵柄をした表紙だった。
見えない人間にカラフルな本なんて、とメルエムは思ったが、よく見たら凹凸のある表紙だった。
「ほう」
メルエムはその本を見据えた。それが、コムギの欲しかったものなのだろうか、とネフェルピトーへ目を向けるが、瞬きを返されるだけ。
一方のコムギは、恐縮そうにおどおどしていた。
「メ、メルエム様、遅くなってしまい、申し訳ねぇです……」
「構わん」
コムギに対しても、メルエムは、帰りが遅かったことは怒ってもいなかった。ただ、気になっただけで。
「その本は、コムギも読めるのか」
メルエムはヘレナに聞いた。ヘレナはにこりと笑った。
「はい。ページの文字が点字になっていて、触ることで読むことが出来るんですよ」
とヘレナはメルエムに本を開いて見せた。
「ほう」メルエムは相槌を打ち、コムギへ目を向けた。「コムギ、読んでみろ」
「は、はい……?!」
コムギは驚き過ぎたのか変な声をあげた。
「どうした?」
とメルエムが目を上げると、コムギはうやうやしく床に座りながら頭を下げた。
「も、申し訳ねぇです、メルエム様……ワダす、文字読めなくて……」
「どういうことだ?」
コムギの言葉が理解出来なかったメルエム。すると、ヘレナが半歩前に出てきた。
「文字は、勉強したら読めるようになると思いますよ」
勉強か、とメルエムは考えた。ネフェルピトーが人間から情報を得たように、コムギにも、そのような行動が必要なのかもしれない。
「それは、コムギに教えてやれるのか」
「はい、もちろん出来ますよ!」
メルエムの態度に尻込みすることなく、ヘレナは笑った。
「なら、教えてやって欲しい」
「はい、もちろんです!」
見えない人間とは、このような生き物なのだろうか、とメルエムはヘレナを眺めた。コムギと同じように小さくて細い、か弱そうな人間なのに。
「メ、メルエム様、ヘレナ様、なんともったいなきお言葉……」
コムギはいまだ頭を下げたままそう言った。
メルエムは、コムギの「欲しいもの」を与えたかっただけだった。ただ、これが正しいことだったのか分からない。メルエムは、答えをみつけようと、ふとネフェルピトーを見やった。
ネフェルピトーは、猫のような瞳をくるりとさせ、それはまるで、僕には分からない、と言ってるかのようだった。
そうして、メルエムらの部屋に、点字を読む会が開かれるようになったのは、あの救世主から来てからなのだが、また、別の話。
コムギはあんなにも低姿勢な態度ではあるが、なぜだか少し嬉しそうな表情だった。そんなに、ヘレナという人物が気に入っているのか、本というものが気になるのか。
数時間後、コムギとネフェルピトーは、その全盲の少女を連れて来た。
「お主がヘレナか」
「はい。ヘレナ·アダムスです」
メルエムの言葉に、ヘレナと名乗る少女は礼儀正しく頭を下げた。どうやら見る限り、コムギと違って目は開いている。
「遅くなった理由を申せ」
メルエムは問いただした。コムギが食堂で食事に行っている間は、せいぜい二時間で帰ってきていた。
ヘレナは脇に抱えていた本をメルエムに見せた。
「コムギちゃんに合いそうな本を選んでいました」
その本は、カラフルな絵柄をした表紙だった。
見えない人間にカラフルな本なんて、とメルエムは思ったが、よく見たら凹凸のある表紙だった。
「ほう」
メルエムはその本を見据えた。それが、コムギの欲しかったものなのだろうか、とネフェルピトーへ目を向けるが、瞬きを返されるだけ。
一方のコムギは、恐縮そうにおどおどしていた。
「メ、メルエム様、遅くなってしまい、申し訳ねぇです……」
「構わん」
コムギに対しても、メルエムは、帰りが遅かったことは怒ってもいなかった。ただ、気になっただけで。
「その本は、コムギも読めるのか」
メルエムはヘレナに聞いた。ヘレナはにこりと笑った。
「はい。ページの文字が点字になっていて、触ることで読むことが出来るんですよ」
とヘレナはメルエムに本を開いて見せた。
「ほう」メルエムは相槌を打ち、コムギへ目を向けた。「コムギ、読んでみろ」
「は、はい……?!」
コムギは驚き過ぎたのか変な声をあげた。
「どうした?」
とメルエムが目を上げると、コムギはうやうやしく床に座りながら頭を下げた。
「も、申し訳ねぇです、メルエム様……ワダす、文字読めなくて……」
「どういうことだ?」
コムギの言葉が理解出来なかったメルエム。すると、ヘレナが半歩前に出てきた。
「文字は、勉強したら読めるようになると思いますよ」
勉強か、とメルエムは考えた。ネフェルピトーが人間から情報を得たように、コムギにも、そのような行動が必要なのかもしれない。
「それは、コムギに教えてやれるのか」
「はい、もちろん出来ますよ!」
メルエムの態度に尻込みすることなく、ヘレナは笑った。
「なら、教えてやって欲しい」
「はい、もちろんです!」
見えない人間とは、このような生き物なのだろうか、とメルエムはヘレナを眺めた。コムギと同じように小さくて細い、か弱そうな人間なのに。
「メ、メルエム様、ヘレナ様、なんともったいなきお言葉……」
コムギはいまだ頭を下げたままそう言った。
メルエムは、コムギの「欲しいもの」を与えたかっただけだった。ただ、これが正しいことだったのか分からない。メルエムは、答えをみつけようと、ふとネフェルピトーを見やった。
ネフェルピトーは、猫のような瞳をくるりとさせ、それはまるで、僕には分からない、と言ってるかのようだった。
そうして、メルエムらの部屋に、点字を読む会が開かれるようになったのは、あの救世主から来てからなのだが、また、別の話。
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