見えない人の力
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「わー!」
それは、マスターハンド側の仲間から聞こえてきていた。
それから、大勢の人間や何やらがこちらに押し寄せてきたので、メルエムはかばうようにコムギを抱き寄せた。
「メ、メルエム様……?」
「安心しろ、すぐに片付ける」
何が起きているのか分からないコムギは、メルエムの腕の中で戸惑いの表情を浮かべる。
メルエムは、こちらに押し寄せてくる集団を、一気に抹殺しようと尻尾を振りあげようとしていた……。
「はーい、待ってねー!」
「何……?!」
自分の速さより勝る者がいるのか。
メルエムはあっという間にマスターハンドにすくい上げられ、そのまま空へと飛んだ。メルエムはコムギを抱えたまま、マスターハンドの手の中に収まった。
このまま握りつぶすつもりなのか、とメルエムは思ったが、そうではないらしい。むしろ、メルエムがコムギにそうしているように、優しいものだった。
「お主、なんのつもりだ……?」
答えによっては殺す、とメルエムは言いながら。
しかし、マスターハンドは怯える様子なく、地上が見えるように小さく傾いた。
「あれ、見て」
「……?」
メルエムは、マスターハンドが指し示す方向を見やった。そこには、布で出来たような人間が数体いて、剣やら斧やらを振り回している様が見えた。
「メルエム様……」
コムギは不安そうにメルエムにしがみついてきた。コムギは全盲だが、決して、何が見えているのか聞いてこない小娘だった。メルエムは、言葉の代わりに抱き返した。
「あれを殺せばいいのか」
メルエムは訊ねた。自分が誰かに指示をされるのは癪に触ったが、やたらめったら誰かを殺していいものではないことを、今のメルエムは分かっていた。
「いいや、今来ると思うから」
とマスターハンドが言った直後、マスターハンドと瓜二つの存在が、まるで空気中から突如現れるように飛び出してきた。
そして、その奇怪な手だけの存在は指を奇妙に振り、瞬く間に布で出来た人間を蹴散らして行った。
布で出来た人間は次々と倒れ、霧のように消えていく。
「ほう」
とメルエムは声を漏らした。あれは、レアモノというものだ。だから、このマスターハンドと、そこの瓜二つの存在も手だけの姿なのかは分からないが……とよく見ると、そっくりなそれは「左手」で、マスターハンドとは逆の手だということにメルエムは気が付いた。
マスターハンドは、そっと、メルエムとコムギを地上に下ろした。
「ここがどういう世界か分からないけど……人形が襲ってくるって世界なのかな?」
とマスターハンドが呟けば、いまだメルエムの腕にいるコムギが少し驚いたような顔をした。
「ここは、人形が襲ってくる世界なんですか……?」
コムギは不安そうに訊ねてきた。メルエムにとっては他愛もない言葉であったが、コムギからしたら恐ろしい言葉のはずである。
「心配するな、コムギ。お主は余が守る」
メルエム自身、この言葉が自分から出てくるとは思わなかった。だが、コムギはあまりにもか弱かった。
「はい、メルエム様!」
コムギは嬉しそうに笑った。
メルエムはその顔に満足し、布で出来た人間……どうや人形というらしい……がいた方向へ視線を投げた。
人形には、死体の欠片すらなかった。あの左手が粉々になるまで蹴り飛ばしたという線もあるが、恐らく、人形の性質だと思われた。何かしらの攻撃を受けると、霧散する人形の性質……。
「なんだヨ?」
メルエムが見据えていると、左手が怪訝そうに言葉を返してくる。この左手から、ただならぬ強さをメルエムは感じ取っていた。出来ることなら自分の配下にしたいが……。
「ああ、彼はクレイジーハンド」マスターハンドが、急に話しかけてきた。「クレイジーハンドは、破壊の化身でね。戦闘が得意なんだ」
と説明をしたが、攻撃をしようとしたメルエムの体ごといきなりすくい上げたマスターハンドも、只者ではないと思われた。
「さて、これからどうしようか」
独り言のように、マスターハンドは考える素振りを見せた。クレイジーハンドが答える様子もない。
メルエムは口を開いた。
「住処が必要だ。あと、コムギの餌を」
「そ、そんな、めっそうもない……」
コムギは慌てて手を前に振ったが、メルエムは気にしなかった。
「ああ、そうだね!」一方のマスターハンドは、いい案だね、と人差し指を突き出した。「まずは、みんなの住処を用意しようか」
と言うなり、マスターハンドは大きく宙を舞った。すると次の瞬間地面が揺れ出し、メルエムは強くコムギを抱き寄せた。
そして、徐々に地面が盛り上がり始めて……。
それは、マスターハンド側の仲間から聞こえてきていた。
それから、大勢の人間や何やらがこちらに押し寄せてきたので、メルエムはかばうようにコムギを抱き寄せた。
「メ、メルエム様……?」
「安心しろ、すぐに片付ける」
何が起きているのか分からないコムギは、メルエムの腕の中で戸惑いの表情を浮かべる。
メルエムは、こちらに押し寄せてくる集団を、一気に抹殺しようと尻尾を振りあげようとしていた……。
「はーい、待ってねー!」
「何……?!」
自分の速さより勝る者がいるのか。
メルエムはあっという間にマスターハンドにすくい上げられ、そのまま空へと飛んだ。メルエムはコムギを抱えたまま、マスターハンドの手の中に収まった。
このまま握りつぶすつもりなのか、とメルエムは思ったが、そうではないらしい。むしろ、メルエムがコムギにそうしているように、優しいものだった。
「お主、なんのつもりだ……?」
答えによっては殺す、とメルエムは言いながら。
しかし、マスターハンドは怯える様子なく、地上が見えるように小さく傾いた。
「あれ、見て」
「……?」
メルエムは、マスターハンドが指し示す方向を見やった。そこには、布で出来たような人間が数体いて、剣やら斧やらを振り回している様が見えた。
「メルエム様……」
コムギは不安そうにメルエムにしがみついてきた。コムギは全盲だが、決して、何が見えているのか聞いてこない小娘だった。メルエムは、言葉の代わりに抱き返した。
「あれを殺せばいいのか」
メルエムは訊ねた。自分が誰かに指示をされるのは癪に触ったが、やたらめったら誰かを殺していいものではないことを、今のメルエムは分かっていた。
「いいや、今来ると思うから」
とマスターハンドが言った直後、マスターハンドと瓜二つの存在が、まるで空気中から突如現れるように飛び出してきた。
そして、その奇怪な手だけの存在は指を奇妙に振り、瞬く間に布で出来た人間を蹴散らして行った。
布で出来た人間は次々と倒れ、霧のように消えていく。
「ほう」
とメルエムは声を漏らした。あれは、レアモノというものだ。だから、このマスターハンドと、そこの瓜二つの存在も手だけの姿なのかは分からないが……とよく見ると、そっくりなそれは「左手」で、マスターハンドとは逆の手だということにメルエムは気が付いた。
マスターハンドは、そっと、メルエムとコムギを地上に下ろした。
「ここがどういう世界か分からないけど……人形が襲ってくるって世界なのかな?」
とマスターハンドが呟けば、いまだメルエムの腕にいるコムギが少し驚いたような顔をした。
「ここは、人形が襲ってくる世界なんですか……?」
コムギは不安そうに訊ねてきた。メルエムにとっては他愛もない言葉であったが、コムギからしたら恐ろしい言葉のはずである。
「心配するな、コムギ。お主は余が守る」
メルエム自身、この言葉が自分から出てくるとは思わなかった。だが、コムギはあまりにもか弱かった。
「はい、メルエム様!」
コムギは嬉しそうに笑った。
メルエムはその顔に満足し、布で出来た人間……どうや人形というらしい……がいた方向へ視線を投げた。
人形には、死体の欠片すらなかった。あの左手が粉々になるまで蹴り飛ばしたという線もあるが、恐らく、人形の性質だと思われた。何かしらの攻撃を受けると、霧散する人形の性質……。
「なんだヨ?」
メルエムが見据えていると、左手が怪訝そうに言葉を返してくる。この左手から、ただならぬ強さをメルエムは感じ取っていた。出来ることなら自分の配下にしたいが……。
「ああ、彼はクレイジーハンド」マスターハンドが、急に話しかけてきた。「クレイジーハンドは、破壊の化身でね。戦闘が得意なんだ」
と説明をしたが、攻撃をしようとしたメルエムの体ごといきなりすくい上げたマスターハンドも、只者ではないと思われた。
「さて、これからどうしようか」
独り言のように、マスターハンドは考える素振りを見せた。クレイジーハンドが答える様子もない。
メルエムは口を開いた。
「住処が必要だ。あと、コムギの餌を」
「そ、そんな、めっそうもない……」
コムギは慌てて手を前に振ったが、メルエムは気にしなかった。
「ああ、そうだね!」一方のマスターハンドは、いい案だね、と人差し指を突き出した。「まずは、みんなの住処を用意しようか」
と言うなり、マスターハンドは大きく宙を舞った。すると次の瞬間地面が揺れ出し、メルエムは強くコムギを抱き寄せた。
そして、徐々に地面が盛り上がり始めて……。