あなたが猫になったら誰に会いに行きますか?
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ど、どうしよう?! とファレスターが部屋中を歩き回っていると、一つおかしなことに気がついた。
あれ、ここはどこだ……?
自分の部屋とほとんど同じ間取りではあったが、本棚や化粧台に置いてあった私物が一つもない。
そして、窓が板のようなもので覆われて暗いのだ。
猫の体の今だからこそ、この暗さでも辺りはよく見えるのだが、他に出入口がみつからないところ、自分は閉じ込められていたのだと察した。
(こんなことをするなんて、マスターハンドの仕業……?!)
だとしたら、自分が突然猫になってしまったことにも合点がいく。
どうにかしてここから出なくては、とファレスターは扉を引っ掻いてみるがびくともしない。ドアノブに飛びつくことは出来るが、こんな猫の手では捻ることが難しいらしい。
(私、これからどうしたら……)
窓を開けることも出来ずにウロウロしていたファレスターの横で、キィ……とゆっくり扉が開いたのを見た。
(きっとマスターハンドだ……!)
とファレスターが顔を上げると。
「おい、マスターハンド、また妙な部屋作って……って、ここもいないのかヨ」
白い大きな左手……クレイジーハンドだった。
「クレイジーハンド……! 助けて、クレイジーハンド!」
この際誰でもいいと、藁にもすがる思いでファレスターはそう叫んだのだが、口から出てくるのはニャーニャーという鳴き声ばかりだった。
「……? こんなところに……猫?」
クレイジーハンドは、それでも猫のファレスターには気づいてはくれた。それからクレイジーハンドは、ネズミも通さない屋敷なのに、なぜ猫が入ってきたんだと半ば文句のように呟き始めた。
「創造の主もとうとう腕が落ちたのかヨ……ん?」
そんな時、クレイジーハンドも、この部屋の異様さに気がついたようだった。
ベットと鏡以外の生活感のなさ過ぎる部屋、板を打ち付けられた窓……。
「なるほどナ……マスターハンドも趣味が悪い」何に勘づいたのか、クレイジーハンドはそう言った。「俺はやつの趣味に口を挟む気はないからナ。せいぜい楽しんでやれヨ、邪魔したナ」
なんということか!
クレイジーハンドは、猫とはいえファレスターを助けようとするどころか、さっさと部屋を出て行こうとしたのだ……!
「ま、待って、クレイジーハンド……!」
今ここでこの部屋から脱出しないと、それこそマスターハンドの好き勝手にされてしまうだろう。
扉が完全に閉められてしまう前に、逃げなくては……。
「おや、クレイジーハンド」
この声は……。
「なんだヨ、マスターハンド」
相変わらず不機嫌そうに返事をするクレイジーハンド。どうやら、扉の奥にはマスターハンドがいるらしい。
ファレスターは、完全に逃げるタイミングを失ってしまった。
「人の部屋に勝手に入るなんて、さすがクレイジーハンドだね♪」
褒める気のない軽い口調が、向こうから聞こえてきた。
「ああ、そうだナ。また勝手に部屋を作ったみたいだから、壊してやろうかと思ったところだヨ」
壊そうとしていた様子はなかったのだが……クレイジーハンドはマスターハンドに何を言わんとしているのだろうか、とファレスターが思わず聞き耳を立てていると。
「ハハハ、やだなぁ、破壊神だからって、勝手に部屋を壊されたら困るよ〜」
「だからとはいえ、窓もない部屋は気味が悪くてナ」
直後、目の前のクレイジーハンドが、くるりと回転して二本指で床に立った。
それは何気ない仕草にも見えたのだが、次の瞬間、意味深そうなマスターハンドの呼び声が聞こえた。
「クレイジーハンド……?」
「窓へ飛び込め、ファレスター!」
え……?
クレイジーハンドがなぜそう叫んだのか理解するより早く、先程まで固く閉ざされていた窓が、勢いよく割れた。
ここから逃げるには、今しかない!
ファレスターは、クレイジーハンドが割ってくれたのだろう窓へ、がむしゃらに飛び込んだ……。
その後、どうなったのか、ファレスターの記憶は飛んだのだが、高所から飛び降りたというのに無傷のまま、医務室へと運び込まれていた。
のちに、マスターハンドはファレスターを猫にして軟禁するつもりだったらしい、ということだけが判明し、それに腹を立てた屋敷の住民たちが、しばらくマスターハンドにファレスターが接触しないように配慮をしてくれた。
しかし、あの時の礼を言おうにも、ファレスターはいつまでもクレイジーハンドに会えずにいた。いたとしても、追いかけたらいつの間にか姿を消しているし、なぜ猫にさせられていたと気づいたのかも話を聞き出せないままだった。
「クレイジーハンドさんって、本当は……?」
ファレスターはため息をついた。これが何を意味するのか、今はまだ、自覚もないまま……。
あれ、ここはどこだ……?
自分の部屋とほとんど同じ間取りではあったが、本棚や化粧台に置いてあった私物が一つもない。
そして、窓が板のようなもので覆われて暗いのだ。
猫の体の今だからこそ、この暗さでも辺りはよく見えるのだが、他に出入口がみつからないところ、自分は閉じ込められていたのだと察した。
(こんなことをするなんて、マスターハンドの仕業……?!)
だとしたら、自分が突然猫になってしまったことにも合点がいく。
どうにかしてここから出なくては、とファレスターは扉を引っ掻いてみるがびくともしない。ドアノブに飛びつくことは出来るが、こんな猫の手では捻ることが難しいらしい。
(私、これからどうしたら……)
窓を開けることも出来ずにウロウロしていたファレスターの横で、キィ……とゆっくり扉が開いたのを見た。
(きっとマスターハンドだ……!)
とファレスターが顔を上げると。
「おい、マスターハンド、また妙な部屋作って……って、ここもいないのかヨ」
白い大きな左手……クレイジーハンドだった。
「クレイジーハンド……! 助けて、クレイジーハンド!」
この際誰でもいいと、藁にもすがる思いでファレスターはそう叫んだのだが、口から出てくるのはニャーニャーという鳴き声ばかりだった。
「……? こんなところに……猫?」
クレイジーハンドは、それでも猫のファレスターには気づいてはくれた。それからクレイジーハンドは、ネズミも通さない屋敷なのに、なぜ猫が入ってきたんだと半ば文句のように呟き始めた。
「創造の主もとうとう腕が落ちたのかヨ……ん?」
そんな時、クレイジーハンドも、この部屋の異様さに気がついたようだった。
ベットと鏡以外の生活感のなさ過ぎる部屋、板を打ち付けられた窓……。
「なるほどナ……マスターハンドも趣味が悪い」何に勘づいたのか、クレイジーハンドはそう言った。「俺はやつの趣味に口を挟む気はないからナ。せいぜい楽しんでやれヨ、邪魔したナ」
なんということか!
クレイジーハンドは、猫とはいえファレスターを助けようとするどころか、さっさと部屋を出て行こうとしたのだ……!
「ま、待って、クレイジーハンド……!」
今ここでこの部屋から脱出しないと、それこそマスターハンドの好き勝手にされてしまうだろう。
扉が完全に閉められてしまう前に、逃げなくては……。
「おや、クレイジーハンド」
この声は……。
「なんだヨ、マスターハンド」
相変わらず不機嫌そうに返事をするクレイジーハンド。どうやら、扉の奥にはマスターハンドがいるらしい。
ファレスターは、完全に逃げるタイミングを失ってしまった。
「人の部屋に勝手に入るなんて、さすがクレイジーハンドだね♪」
褒める気のない軽い口調が、向こうから聞こえてきた。
「ああ、そうだナ。また勝手に部屋を作ったみたいだから、壊してやろうかと思ったところだヨ」
壊そうとしていた様子はなかったのだが……クレイジーハンドはマスターハンドに何を言わんとしているのだろうか、とファレスターが思わず聞き耳を立てていると。
「ハハハ、やだなぁ、破壊神だからって、勝手に部屋を壊されたら困るよ〜」
「だからとはいえ、窓もない部屋は気味が悪くてナ」
直後、目の前のクレイジーハンドが、くるりと回転して二本指で床に立った。
それは何気ない仕草にも見えたのだが、次の瞬間、意味深そうなマスターハンドの呼び声が聞こえた。
「クレイジーハンド……?」
「窓へ飛び込め、ファレスター!」
え……?
クレイジーハンドがなぜそう叫んだのか理解するより早く、先程まで固く閉ざされていた窓が、勢いよく割れた。
ここから逃げるには、今しかない!
ファレスターは、クレイジーハンドが割ってくれたのだろう窓へ、がむしゃらに飛び込んだ……。
その後、どうなったのか、ファレスターの記憶は飛んだのだが、高所から飛び降りたというのに無傷のまま、医務室へと運び込まれていた。
のちに、マスターハンドはファレスターを猫にして軟禁するつもりだったらしい、ということだけが判明し、それに腹を立てた屋敷の住民たちが、しばらくマスターハンドにファレスターが接触しないように配慮をしてくれた。
しかし、あの時の礼を言おうにも、ファレスターはいつまでもクレイジーハンドに会えずにいた。いたとしても、追いかけたらいつの間にか姿を消しているし、なぜ猫にさせられていたと気づいたのかも話を聞き出せないままだった。
「クレイジーハンドさんって、本当は……?」
ファレスターはため息をついた。これが何を意味するのか、今はまだ、自覚もないまま……。