あなたが猫になったら誰に会いに行きますか?
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ど、どうしよう?!
猫になってしまったファレスターは、部屋の中をぐるぐると歩き回り、ふと思いついたのが、エミリーの姿だった。
エミリーはこの屋敷の医務室を守る優秀な医師だ。こんな特異なことも、何かしら解決方法を知っているかもしれない。
ファレスターは早速扉を……開けるのは無理なので、窓をなんとかこじ開けて外へと飛び出した。
猫の体だからか、二階から飛び下りても上手く着地出来たファレスター。こういうところは便利だな……と思いながらも、いやいや、まずは自分の体を元に戻す方法を探さなくては、と医務室へ向かった。
運いいことに、誰かが渡り廊下の扉をしっかり閉め忘れたらしく、するりと体をくねらせて屋敷内へ入ることが出来た。
そして、ファレスターは医務室へ向かった。
医務室は、こんなに朝早いというのに、扉が開けっ放しだった。
チョッパーが、小鳥が巣を作りに来るからと入りやすいように開けっ放しにするようになってから、医務室に誰かいる時は、小鳥が巣立った後も、よく開いているのだ。
「ニャ、ニャー」
とりあえず、無言で入るのも忍びないので、ファレスターは慣れない猫の声を発しながら、医務室へと踏み込んだ。
「あら……?」
やはり、エミリーがそこにいた。
エミリーは奥の机で何か書き物をしていたらしいが、ファレスターの声に気が付いてこちらを振り向いた。
この目線の低さから見るエミリーの生足にファレスターは思わず目を逸らした。
「猫……? こんなところに」エミリーは呟き、ファレスターの心境を全く知らずに顔を近付けた。「……使徒さんの猫かしら……? それにしては見慣れない毛色ね」
そう言いながら、エミリーはファレスターの頭を撫でた。
それどころではないと分かってはいるが、撫でられると気持ちよくなってしまい、思わず喉が鳴ってしまうファレスター。
「ふふ、可愛いわね、ファレスターみたいに」
はい……?
エミリーからしたらそりゃあ自分は年下かもしれないけど、つまり俺は猫と思われてる……? とファレスターは思ったが、そんなことで怒っている場合ではない。まずはこの状況をなんとか伝えなくては。
「エミリー、気づいてくれ……! 俺なんだ!」
とファレスターは叫んだが、口から出てくるのはニャーニャーという鳴き声ばかりで、エミリーは首を傾げるだけだった。
「お喋りね……でもごめんなさいね。ここには食べるものがないのよ」それからふと考える素振りを見せてから。「そうね……厨房には何かあるかしら」
お腹が空いているのね、とエミリーが立ち上がった、その時。
「おっと、誰かと思えば。これはこれは、お早い起床で、エミリー先生?」
わざとらしい口調で医務室にやって来たのは、レオンだった。
「はぁ……なんの用かしら、レオンさん?」
あからさまに嫌な顔をしながら、エミリーがレオンに対応する。
「話し声が聞こえたからな……独り言を言ってる寂しい誰かの秘密でも盗み聞こうとしたのだが」
とニヤニヤするレオン。
エミリーはますますため息をついた。一言二言多い嫌味なレオンのことが、エミリーは少々苦手なことをファレスターは知っていた。
「あなたには関係のないことよ」
さ、行きましょ、とエミリーはファレスターを呼んで医務室を出ようとした。
「ん……? なんでここに猫が……?」
レオンもすぐにファレスターに気が付いた。
しかしレオンは、あろうことかファレスターの首根っこを掴んで持ち上げたので、猫の特性上抗うことが出来なかった。
「ちょっと、やめなさいっ」
さすがのエミリーも、大声を上げてレオンからファレスターを助け出したが、自然とその胸の膨らみに当たって平常心を装うのが困難になった。
「ククク……まだ何もしていないだろ?」
「まだって……あなた、この猫に何かするつもりだったのかしら?」
扇で顔を仰ぎながら涼しい顔をするレオンに対し、怒っているエミリー。
さすがというか、エミリーは、レオンがファレスターに何かイタズラをしようとしていたのを見抜いていたらしかった。
「あんな人は放って置いて行きましょ」
「ニャー」
エミリーの言葉に返事の代わりに鳴き声を上げるファレスター。
それより早く下ろしてくれないか、とも言いたかったが、このソファのような居心地から出たくないという複雑な心境に、ファレスターは苦しめられた。
「ところでエミリー先生?」立ち去り際に、 レオンが引き留めるように切り出した。「ファレスターに話そうと思っていたことがあってな?」
「な、何よ……」
一応足を止めたエミリーだったが、その警戒心は緩まないといった感じだ。
「カエルになってしまった姫様が、王子の口付けで元に戻るという話の本がみつかったって伝えて欲しいんだ」
「何よそれ……私の世界にも、似たような本はあるけど」
突然何を言い出すのか、エミリーは困惑した様子だったが、ファレスターはあることに気づこうとしていた。
「そう、この本はおとぎ話だ。だが、この世界では散々、おとぎ話みたいなことが起きただろう?」
「だからなんだって言うのよ?」
「続きはファレスターに会ってから話すよ。お前には関係ない」
「あら、そう。だったら、ファレスターに本がみつかった話を伝えたらいいのね?」
「そういうことだ、ククク」
変な人ね、と言いながら踵を返すエミリーだったが、その腕に抱かれているファレスターは、レオンの言わんとしていることに気がついて動揺していた。
(俺が、エミリーにキ、キスをしろと……?)
なぜレオンが急に本の話をし出したのか全く検討のつかないファレスター。そんな本なんて探していないからだ。
だとしたら、自分を猫の体にしたのはレオンなのだろうか、とファレスターは考えたが、さすがにそこまでのイタズラをするとは到底思えなかった。
だとしたら……?
ファレスターの思考はそこで止まった。
今ファレスターは猫の体であることに変わりはしないし、もしレオンがこの状況に気づいてあの話をしたのだとしたら、自分はエミリーの唇に……。
「どうしたのかしら?」
エミリーがこちらをみつめた。こうして見ると、目は大きいしまつ毛も長い。そして唇は小さい割にはふっくらとしていて……。
「ニャー!」
ファレスターはエミリーの胸から逃げ出した。キスをして元に戻るなら、別にエミリーじゃなくてもいいのだ。
そうしてファレスターはエミリーから逃げ出したはず、なのだが。
「待ちなさい!」
エミリーが背後から追ってくる足音がして……。
ファレスターは気がついたら、医務室のベットで横たわっていた。
「あれ、俺は何を……?」
見ると、人間の手のひらが眼下に見えた。それだけではなく、体も足も人間の体そのものだ。
「目が覚めたかしら?」
「え、エミリー……」
カーテンの向こうからエミリーが入ってきた。手元には、濡れタオルや注射器のようなものが乗ったトレーがある。
「病気の猫なんじゃないかと思って、思わず鎮静剤を打ったら……あなただったとは知らなかったわ」
「え……ってことは、俺は鎮静剤で元の体に戻ったんですか……?」
「そういうことね。……まだ動かないでちょうだい。栄養剤を打つから」
「はい……」
ファレスターは大人しく従った。
仰向けになったファレスターの腕に栄養剤を打つのを見守りながら、ちょっと残念だったな、と密かに思った。
元の姿に戻ったのはよかったけど、キスで元の姿に戻るのは、やはりおとぎ話なのだ。
なんて考えていると、ふとファレスターはエミリーと目が合った。
ファレスターが、ありがとうと笑ってみせると、途端にエミリーが顔を赤くした。
「え、エミリー……」
ファレスターは何か言おうとしたが、それよりも早くエミリーは逃げ出すようにカーテンの奥へと隠れてしまった。
「チョッパー、ファレスターに栄養剤を打つの代わってくれるかしら?」
「おう、いいぞ!」
カーテンの向こうには、チョッパーもいるらしい。
なぜエミリーが顔を赤くして逃げ出してしまったのか分からないが、多分記憶がない間に自分が何かしてしまったんだろう、とファレスターは納得することにした。
間もなく、ファレスターの栄養剤はチョッパーが打つことになったのだが、エミリーのあの表情が、ファレスターの脳裏に焼き付くこととなった。
(後で謝らないとな……)
ファレスターとエミリーのこれからの話は、また、どこかで。
猫になってしまったファレスターは、部屋の中をぐるぐると歩き回り、ふと思いついたのが、エミリーの姿だった。
エミリーはこの屋敷の医務室を守る優秀な医師だ。こんな特異なことも、何かしら解決方法を知っているかもしれない。
ファレスターは早速扉を……開けるのは無理なので、窓をなんとかこじ開けて外へと飛び出した。
猫の体だからか、二階から飛び下りても上手く着地出来たファレスター。こういうところは便利だな……と思いながらも、いやいや、まずは自分の体を元に戻す方法を探さなくては、と医務室へ向かった。
運いいことに、誰かが渡り廊下の扉をしっかり閉め忘れたらしく、するりと体をくねらせて屋敷内へ入ることが出来た。
そして、ファレスターは医務室へ向かった。
医務室は、こんなに朝早いというのに、扉が開けっ放しだった。
チョッパーが、小鳥が巣を作りに来るからと入りやすいように開けっ放しにするようになってから、医務室に誰かいる時は、小鳥が巣立った後も、よく開いているのだ。
「ニャ、ニャー」
とりあえず、無言で入るのも忍びないので、ファレスターは慣れない猫の声を発しながら、医務室へと踏み込んだ。
「あら……?」
やはり、エミリーがそこにいた。
エミリーは奥の机で何か書き物をしていたらしいが、ファレスターの声に気が付いてこちらを振り向いた。
この目線の低さから見るエミリーの生足にファレスターは思わず目を逸らした。
「猫……? こんなところに」エミリーは呟き、ファレスターの心境を全く知らずに顔を近付けた。「……使徒さんの猫かしら……? それにしては見慣れない毛色ね」
そう言いながら、エミリーはファレスターの頭を撫でた。
それどころではないと分かってはいるが、撫でられると気持ちよくなってしまい、思わず喉が鳴ってしまうファレスター。
「ふふ、可愛いわね、ファレスターみたいに」
はい……?
エミリーからしたらそりゃあ自分は年下かもしれないけど、つまり俺は猫と思われてる……? とファレスターは思ったが、そんなことで怒っている場合ではない。まずはこの状況をなんとか伝えなくては。
「エミリー、気づいてくれ……! 俺なんだ!」
とファレスターは叫んだが、口から出てくるのはニャーニャーという鳴き声ばかりで、エミリーは首を傾げるだけだった。
「お喋りね……でもごめんなさいね。ここには食べるものがないのよ」それからふと考える素振りを見せてから。「そうね……厨房には何かあるかしら」
お腹が空いているのね、とエミリーが立ち上がった、その時。
「おっと、誰かと思えば。これはこれは、お早い起床で、エミリー先生?」
わざとらしい口調で医務室にやって来たのは、レオンだった。
「はぁ……なんの用かしら、レオンさん?」
あからさまに嫌な顔をしながら、エミリーがレオンに対応する。
「話し声が聞こえたからな……独り言を言ってる寂しい誰かの秘密でも盗み聞こうとしたのだが」
とニヤニヤするレオン。
エミリーはますますため息をついた。一言二言多い嫌味なレオンのことが、エミリーは少々苦手なことをファレスターは知っていた。
「あなたには関係のないことよ」
さ、行きましょ、とエミリーはファレスターを呼んで医務室を出ようとした。
「ん……? なんでここに猫が……?」
レオンもすぐにファレスターに気が付いた。
しかしレオンは、あろうことかファレスターの首根っこを掴んで持ち上げたので、猫の特性上抗うことが出来なかった。
「ちょっと、やめなさいっ」
さすがのエミリーも、大声を上げてレオンからファレスターを助け出したが、自然とその胸の膨らみに当たって平常心を装うのが困難になった。
「ククク……まだ何もしていないだろ?」
「まだって……あなた、この猫に何かするつもりだったのかしら?」
扇で顔を仰ぎながら涼しい顔をするレオンに対し、怒っているエミリー。
さすがというか、エミリーは、レオンがファレスターに何かイタズラをしようとしていたのを見抜いていたらしかった。
「あんな人は放って置いて行きましょ」
「ニャー」
エミリーの言葉に返事の代わりに鳴き声を上げるファレスター。
それより早く下ろしてくれないか、とも言いたかったが、このソファのような居心地から出たくないという複雑な心境に、ファレスターは苦しめられた。
「ところでエミリー先生?」立ち去り際に、 レオンが引き留めるように切り出した。「ファレスターに話そうと思っていたことがあってな?」
「な、何よ……」
一応足を止めたエミリーだったが、その警戒心は緩まないといった感じだ。
「カエルになってしまった姫様が、王子の口付けで元に戻るという話の本がみつかったって伝えて欲しいんだ」
「何よそれ……私の世界にも、似たような本はあるけど」
突然何を言い出すのか、エミリーは困惑した様子だったが、ファレスターはあることに気づこうとしていた。
「そう、この本はおとぎ話だ。だが、この世界では散々、おとぎ話みたいなことが起きただろう?」
「だからなんだって言うのよ?」
「続きはファレスターに会ってから話すよ。お前には関係ない」
「あら、そう。だったら、ファレスターに本がみつかった話を伝えたらいいのね?」
「そういうことだ、ククク」
変な人ね、と言いながら踵を返すエミリーだったが、その腕に抱かれているファレスターは、レオンの言わんとしていることに気がついて動揺していた。
(俺が、エミリーにキ、キスをしろと……?)
なぜレオンが急に本の話をし出したのか全く検討のつかないファレスター。そんな本なんて探していないからだ。
だとしたら、自分を猫の体にしたのはレオンなのだろうか、とファレスターは考えたが、さすがにそこまでのイタズラをするとは到底思えなかった。
だとしたら……?
ファレスターの思考はそこで止まった。
今ファレスターは猫の体であることに変わりはしないし、もしレオンがこの状況に気づいてあの話をしたのだとしたら、自分はエミリーの唇に……。
「どうしたのかしら?」
エミリーがこちらをみつめた。こうして見ると、目は大きいしまつ毛も長い。そして唇は小さい割にはふっくらとしていて……。
「ニャー!」
ファレスターはエミリーの胸から逃げ出した。キスをして元に戻るなら、別にエミリーじゃなくてもいいのだ。
そうしてファレスターはエミリーから逃げ出したはず、なのだが。
「待ちなさい!」
エミリーが背後から追ってくる足音がして……。
ファレスターは気がついたら、医務室のベットで横たわっていた。
「あれ、俺は何を……?」
見ると、人間の手のひらが眼下に見えた。それだけではなく、体も足も人間の体そのものだ。
「目が覚めたかしら?」
「え、エミリー……」
カーテンの向こうからエミリーが入ってきた。手元には、濡れタオルや注射器のようなものが乗ったトレーがある。
「病気の猫なんじゃないかと思って、思わず鎮静剤を打ったら……あなただったとは知らなかったわ」
「え……ってことは、俺は鎮静剤で元の体に戻ったんですか……?」
「そういうことね。……まだ動かないでちょうだい。栄養剤を打つから」
「はい……」
ファレスターは大人しく従った。
仰向けになったファレスターの腕に栄養剤を打つのを見守りながら、ちょっと残念だったな、と密かに思った。
元の姿に戻ったのはよかったけど、キスで元の姿に戻るのは、やはりおとぎ話なのだ。
なんて考えていると、ふとファレスターはエミリーと目が合った。
ファレスターが、ありがとうと笑ってみせると、途端にエミリーが顔を赤くした。
「え、エミリー……」
ファレスターは何か言おうとしたが、それよりも早くエミリーは逃げ出すようにカーテンの奥へと隠れてしまった。
「チョッパー、ファレスターに栄養剤を打つの代わってくれるかしら?」
「おう、いいぞ!」
カーテンの向こうには、チョッパーもいるらしい。
なぜエミリーが顔を赤くして逃げ出してしまったのか分からないが、多分記憶がない間に自分が何かしてしまったんだろう、とファレスターは納得することにした。
間もなく、ファレスターの栄養剤はチョッパーが打つことになったのだが、エミリーのあの表情が、ファレスターの脳裏に焼き付くこととなった。
(後で謝らないとな……)
ファレスターとエミリーのこれからの話は、また、どこかで。