あなたが猫になったら誰に会いに行きますか?
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ど、どうしよう?!
猫になってしまったファレスターは、部屋の中をぐるぐると歩き回り、ふと思いついたのが、ファウストの姿だった。
ファウストはほとんど部屋に引きこもっているが、いざと言う時は頼りになるし、心根は優しい人だ。
それに、魔法使いだしなんとかなるのではないか……?
ファレスターは早速扉を……開けるのは無理なので、窓をなんとかこじ開けて外へと飛び出した。
猫の体だからか、二階から飛び下りても上手く着地出来たファレスター。こういうところは便利だな……と思いながらも、いやいや、まずは自分の体を元に戻す方法を探さなくては、とファウストの部屋へ向かった。
運いいことに、誰かが渡り廊下の扉をしっかり閉め忘れたらしく、するりと体をくねらせて屋敷内へ入ることが出来た。
それにしても、朝早いからか屋敷内が静かだ。
今ならまだ部屋にいるはずと、ファウストの部屋の前まで着いてから気が付いた。
……どうやって中に入るの……?
普段ならどうということのない扉が、猫の体の今は、まるで巨大な壁かのように目の前に立ちはだかり、誰も通さんと言わんばかりだ。
ドアノブは捻るタイプだが、丸い形なので飛びついてもするする滑るばかりだ。
「ファウスト、お願い、扉を開けて……!」
ファレスターが必死に叫ぶも、出てくるのはニャーニャーという鳴き声ばかり。ついには扉を引っ掻こうとしたが。
「やめろ、シノ。そうやって猫の真似でおびき出しても僕は……」
扉が、開いた……!
「ニャ、ニャー」
なぜか怒っていそうなファウストを見上げながらファレスターはなんとか鳴いた。途端にファウストの表情が和らぎ、その場で膝をついた。
「本物の猫だったか……すまない。少し気が立っていて」
とファウストが口調も穏やかにしながら猫に対して謝る様子を見ていると、この目線からのファウストは割と貴重なのでは……? と思わず考えてしまってからファレスターは首を振った。
いやいや、今はこの状況をなんとかしなくては。
ファレスターはどうにかして、自分のことを伝えようと必死に叫ぶも、やはり言葉ではなくニャーニャーという声ばかりで、ファウストの下がった眉を更に下げるだけとなった。
「わざわざ僕のところに来るとはな……何か言いたそうだが」ふと、ファウストは部屋の奥を振り向いた。「そうか。僕の部屋に余ったものがあったな」
何が……? とファレスターは思いながらも、こっちに来なさいというファウストに従って部屋に入った。
相変わらずの火の匂いと影の多い部屋に緊張を覚えながら、ファウストは机の引き出しから何かを取り出した。
「ツナ缶だ。晶が、よく猫に与えてたものらしいな」
そう言いながら、ファウストの部屋とは似つかわしくない猫の皿を床に置き、ツナ缶をそこに出した。
今はそれどころではないのだが、目の前にツナ缶を出されたファレスターは、空腹を思い出して思わず頬張った。
美味しい……!
猫の体になって初めて、何の味もついていないツナ缶をこんなにも美味しいと感じるとは。
ファレスターはツナ缶の美味しさに感動しながらどんどん食べ続けた。
「ゆっくりと食べなさい。まだあるからな」とファウストは言った。「その後に、君がどこから来たのか探さないとな」
そしてファウストは、ふわりと鏡の魔法具を繰り出した。何度見ているとはいえ、やはり空中に浮かぶ魔法の鏡に、ファレスターは食べるのもやめて見取れてしまった。
「魔法具だよ。これで君の居場所を……」
ファウストは言葉を切った。
なんだろうと、ファレスターもファウストの鏡を覗き込むと、そこには、猫の姿の自分ではなく、元の姿の自分が、床に座り込んでいたのが映っていたのである……!
「君はもしかして」ファウストはファレスターへ視線を投げた。「サティルクナート・ムルクリード」
ファウストが詠唱した瞬間、ファレスターの周りで不思議な光が瞬き……。
「も、も、もど……った……?」
高くなった目線、長くなった手足。
ファレスターは自分の体をよく見回し、人間の体になっていることを目視した。
「わ、わ……! ファウスト、ありが……」
「まずはこれを着なさい」
礼を言うより早く、ファウストに大きな上着を着せられたファレスター。そうなのだ。ファレスターは裸だったのだ。
「わ、すみません、ファウスト!」
「謝らなくていい。それより早くここから……」
ドンドン!
その時、荒々しく叩かれる扉が、二人の間を裂く。
「ファウスト、いるんだろ? 今日は外の授業を……ん? 開いているのか、入るぞ、ファウスト」
「こら、待て、シノ!」
何事にも行動の早いシノが、ファウストの部屋に返事も聞かずに入ってきたのだ。
ファウストが前に出てきてくれてはいるが、ほぼ裸のファレスターを前に、シノが黙っているはずかなかった。
「ファウスト、もしかしてファレスターと寝ていたのか」
「誤解を招く言い方はやめてくれ……」
なんでこんなことに、とファウストが頭を抱えている中、宙に浮いたままの鏡から、ある人物が映った。
「フフフ……シノをここに呼んだのは僕だよ」
「DG……!」
DG、ドッペルゲンガーアルルの姿だった。
「もしかして、私を猫の体にしたのも……」
「さぁ、どうだろうね? フフフ……」
DGはそう言い残し、鏡から姿を消した。
「全く……なんだ、ファレスター。僕の鏡に何か?」
「あ、いえ……」
シノになんとか説明を終えたファウストが、すっと魔法具の鏡を仕舞った。
「まずは君の部屋に行こう。その姿だと色々面倒だからな」
「は、はい……」
ファウストはその後、ファレスターを猫にした人物を探すといっていたが、魔法具に棲む彼女の存在には、まだ気付いていないみたいだった。
猫になってしまったファレスターは、部屋の中をぐるぐると歩き回り、ふと思いついたのが、ファウストの姿だった。
ファウストはほとんど部屋に引きこもっているが、いざと言う時は頼りになるし、心根は優しい人だ。
それに、魔法使いだしなんとかなるのではないか……?
ファレスターは早速扉を……開けるのは無理なので、窓をなんとかこじ開けて外へと飛び出した。
猫の体だからか、二階から飛び下りても上手く着地出来たファレスター。こういうところは便利だな……と思いながらも、いやいや、まずは自分の体を元に戻す方法を探さなくては、とファウストの部屋へ向かった。
運いいことに、誰かが渡り廊下の扉をしっかり閉め忘れたらしく、するりと体をくねらせて屋敷内へ入ることが出来た。
それにしても、朝早いからか屋敷内が静かだ。
今ならまだ部屋にいるはずと、ファウストの部屋の前まで着いてから気が付いた。
……どうやって中に入るの……?
普段ならどうということのない扉が、猫の体の今は、まるで巨大な壁かのように目の前に立ちはだかり、誰も通さんと言わんばかりだ。
ドアノブは捻るタイプだが、丸い形なので飛びついてもするする滑るばかりだ。
「ファウスト、お願い、扉を開けて……!」
ファレスターが必死に叫ぶも、出てくるのはニャーニャーという鳴き声ばかり。ついには扉を引っ掻こうとしたが。
「やめろ、シノ。そうやって猫の真似でおびき出しても僕は……」
扉が、開いた……!
「ニャ、ニャー」
なぜか怒っていそうなファウストを見上げながらファレスターはなんとか鳴いた。途端にファウストの表情が和らぎ、その場で膝をついた。
「本物の猫だったか……すまない。少し気が立っていて」
とファウストが口調も穏やかにしながら猫に対して謝る様子を見ていると、この目線からのファウストは割と貴重なのでは……? と思わず考えてしまってからファレスターは首を振った。
いやいや、今はこの状況をなんとかしなくては。
ファレスターはどうにかして、自分のことを伝えようと必死に叫ぶも、やはり言葉ではなくニャーニャーという声ばかりで、ファウストの下がった眉を更に下げるだけとなった。
「わざわざ僕のところに来るとはな……何か言いたそうだが」ふと、ファウストは部屋の奥を振り向いた。「そうか。僕の部屋に余ったものがあったな」
何が……? とファレスターは思いながらも、こっちに来なさいというファウストに従って部屋に入った。
相変わらずの火の匂いと影の多い部屋に緊張を覚えながら、ファウストは机の引き出しから何かを取り出した。
「ツナ缶だ。晶が、よく猫に与えてたものらしいな」
そう言いながら、ファウストの部屋とは似つかわしくない猫の皿を床に置き、ツナ缶をそこに出した。
今はそれどころではないのだが、目の前にツナ缶を出されたファレスターは、空腹を思い出して思わず頬張った。
美味しい……!
猫の体になって初めて、何の味もついていないツナ缶をこんなにも美味しいと感じるとは。
ファレスターはツナ缶の美味しさに感動しながらどんどん食べ続けた。
「ゆっくりと食べなさい。まだあるからな」とファウストは言った。「その後に、君がどこから来たのか探さないとな」
そしてファウストは、ふわりと鏡の魔法具を繰り出した。何度見ているとはいえ、やはり空中に浮かぶ魔法の鏡に、ファレスターは食べるのもやめて見取れてしまった。
「魔法具だよ。これで君の居場所を……」
ファウストは言葉を切った。
なんだろうと、ファレスターもファウストの鏡を覗き込むと、そこには、猫の姿の自分ではなく、元の姿の自分が、床に座り込んでいたのが映っていたのである……!
「君はもしかして」ファウストはファレスターへ視線を投げた。「サティルクナート・ムルクリード」
ファウストが詠唱した瞬間、ファレスターの周りで不思議な光が瞬き……。
「も、も、もど……った……?」
高くなった目線、長くなった手足。
ファレスターは自分の体をよく見回し、人間の体になっていることを目視した。
「わ、わ……! ファウスト、ありが……」
「まずはこれを着なさい」
礼を言うより早く、ファウストに大きな上着を着せられたファレスター。そうなのだ。ファレスターは裸だったのだ。
「わ、すみません、ファウスト!」
「謝らなくていい。それより早くここから……」
ドンドン!
その時、荒々しく叩かれる扉が、二人の間を裂く。
「ファウスト、いるんだろ? 今日は外の授業を……ん? 開いているのか、入るぞ、ファウスト」
「こら、待て、シノ!」
何事にも行動の早いシノが、ファウストの部屋に返事も聞かずに入ってきたのだ。
ファウストが前に出てきてくれてはいるが、ほぼ裸のファレスターを前に、シノが黙っているはずかなかった。
「ファウスト、もしかしてファレスターと寝ていたのか」
「誤解を招く言い方はやめてくれ……」
なんでこんなことに、とファウストが頭を抱えている中、宙に浮いたままの鏡から、ある人物が映った。
「フフフ……シノをここに呼んだのは僕だよ」
「DG……!」
DG、ドッペルゲンガーアルルの姿だった。
「もしかして、私を猫の体にしたのも……」
「さぁ、どうだろうね? フフフ……」
DGはそう言い残し、鏡から姿を消した。
「全く……なんだ、ファレスター。僕の鏡に何か?」
「あ、いえ……」
シノになんとか説明を終えたファウストが、すっと魔法具の鏡を仕舞った。
「まずは君の部屋に行こう。その姿だと色々面倒だからな」
「は、はい……」
ファウストはその後、ファレスターを猫にした人物を探すといっていたが、魔法具に棲む彼女の存在には、まだ気付いていないみたいだった。