あなたが猫になったら誰に会いに行きますか?
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ど、どうしよう?!
猫になってしまったファレスターは、部屋の中をぐるぐると歩き回り、ふと思いついたのが、マリオの姿だった。
マリオはその勇敢さや明るさで、いつも様々な困難を切り抜けてきた。マリオなら、なんとかしてくれるかも……?
ファレスターは早速扉を……開けるのは無理なので、窓をなんとかこじ開けて外へと飛び出した。
「うわぁ?!」
なんと運のいいことか。ファレスターは、誰かの胸の中へと落下したらしい。
痛い、と思うところはなかったが、それより何より、誰が自分を受け止めてくれたのか、とファレスターが顔を上げると……。
「びっくりしたよ……大丈夫かい、猫ちゃん?」
マ、マリオ……?!
まさかこんなにも、会いたいと思っていた人物にすぐ会えるとは思ってもいなかったファレスターは、驚きのあまり硬直してしまったが、いや、今はそれどころではないと必死に思いを伝えようとした。
「マリオ、私なの! 猫になってしまったの!」
とファレスターは叫んだつもりだったが、今の体ではニャーニャーという鳴き声になるだけで、マリオを困惑させてしまった。
「なんだい? 何か言いたいみたいだね……?」
察しのいいマリオでも、さすがに人間が猫になっているとは思いもしないだろう。ファレスターは落胆した。
「マリオ? どうしたのかしら?」
その時、マリオに声を掛けてきた女性が近付いてきた。ファレスターも顔を上げる。
「やぁ、ピーチ姫。猫が突然上から降って来てね」
マリオはそのままのことを伝えると、ピーチはくすくすと笑った。
「まぁ、わたくしと似てやんちゃな猫さんなのかしら。一緒にお茶会に来る? 今日はフォルテ様もいらっしゃるのよ」
とピーチが指し示す方向には、よく陽の当たる中庭に、手頃な丸いテーブルを囲う四つの椅子が置いてあった。
その席の一つには、緊張気味なフォルテが座っていた。
「本当はファレスターさんも呼ぼうと思いましたけれど、また別の日でもいいですわよね♪」
とにこりとするピーチに複雑な心境を抱えながら、ファレスターはニャーと返事をした。
「返事のいい猫ちゃんだね。ピーチのクッキーが食べたいのかな?」
とファレスターを抱えながら席に近付くマリオ。丸いテーブルには、食べたらサクサクしていそうな、プレーンのクッキーがバスケットに並んでいたのが見えた。
「お待たせしましたわ、フォルテ様。モーニングティを始めましょ」
と言いながらピーチも席についた。すると、マリオがすかさずテーブルのティーポットを手に取り、さっとピーチのカップに紅茶を注いだ。
「ありがとう、マリオ」
必然的に、ファレスターはテーブルの上に下ろされていたのだが、それより何より、マリオの手早い気遣いにぼうっと見取れてしまっていた。
「さぁ、フォルテにも」
とマリオがフォルテのカップにも紅茶を注ごうとすると、遠慮がちにすみませんと言いながらこう言った。
「しかし、私は騎士なので、やはりこういったことは……」
フォルテは甘い物が好きだが、人前ではそれを隠していることはファレスターは知っていた。
「ふふ、そんな堅いことはおっしゃらないで……自分のしたいと思ったことをやらなきゃ、失敗だとしても損ですわ」
ピーチらしい言葉だな、とファレスターは思った。
「そ、そうですね……」
フォルテはおずおずと頷き、さぁどうぞ、と言ったピーチのクッキーを一口食べた。
「お、美味しい、です……」
フォルテは俯きながら素直に感想を漏らした。
「まぁ、よかったわ!」満面の笑みを浮かべながらピーチは喜んだ。「マリオもぜひ食べて欲しいわ」
「うん、ありがとう、ピーチ」
マリオもようやく席につき、クッキーを食べ始める。
キノコ王国では、朝からこんな優雅な時間を過ごしているものだろうか、とファレスターが考えていると、ピーチがクッキーを砕いて猫にも食べやすいようにお裾分けしてくれた。この体で食べるのは少し違和感があるけど……と思いながらもファレスターは一欠片のクッキーを食べた。甘過ぎないクッキーが口の中に広がり、幸せな気持ちにしてくれた気がした。
と同時に、もう一生このままの姿なんじゃないかという不安がファレスターを襲った。
そうだった。今こうしてのんびりモーニングティを楽しんでいる場合ではないのだ。
「それにしても……先程のお言葉、ピーチさんらしいですね」
フォルテが、紅茶を啜りながら話し出した。ピーチはくすくすと笑った。
「あら、なんの言葉だったかしら?」
「自分のしたいと思ったことはやらなきゃ損……というものです」
とフォルテが答えれば、それは、とピーチがマリオへ視線を注いだ。
「これは、マリオの言葉なんですの。わたくしのことを助けてくれた時、マリオが言っていたのよ」
「ハハッ、そんなこと言ってたかな」とぼけているのかなんなのか、マリオは軽く笑った。「ピーチを助けたのは、僕が助けたいと思ったからでさ。誰かを待つんじゃなくて、自分が、ね」
それからマリオが、なぜかファレスターへと目配せをした。
それは偶然なのか、それとも本当は、ファレスターだと気付いているのか、真意は全く分からないが……。
「そろそろお片付けをしましょうか。朝食の時間ですわ♪」
と言いながら、ピーチがテーブルの上を片付け始めた。
フォルテが慌てて、こういう仕事は私がやりますので、と手を挟んでいたが、そのそばでマリオがさり気なくサポートをしていたのをファレスターは横目で見た。
そして、ファレスターはというと。
(そうだ……マリオなら、この状況をいつも自分の力で突破していたはずだ)ファレスターの中で、燃え上がるものが出来ていた。(元に戻る方法がどこかにあるはず……まずは自分で探してみなきゃ!)
ファレスターはぴょんっと飛び出した。
マリオが、どこに行くのかと聞いてきたが、ニャーと返事だけをして屋敷へ駆けた。
やってみなきゃ分からない。でも、元に戻る方法を自力で探そう!
失敗を怖がっていては何も始まらないのだ。マリオはそうやって、スーパースターになったのだ。
そして、元に戻った日にはマリオに一番にお礼を言いに行こう。
そう心に決めて……。
──数日後、ファレスターはついに元に戻るのだが、しばらく高所の飛び降りや爪研ぎの癖が直らなかったのは、また別のお話。
猫になってしまったファレスターは、部屋の中をぐるぐると歩き回り、ふと思いついたのが、マリオの姿だった。
マリオはその勇敢さや明るさで、いつも様々な困難を切り抜けてきた。マリオなら、なんとかしてくれるかも……?
ファレスターは早速扉を……開けるのは無理なので、窓をなんとかこじ開けて外へと飛び出した。
「うわぁ?!」
なんと運のいいことか。ファレスターは、誰かの胸の中へと落下したらしい。
痛い、と思うところはなかったが、それより何より、誰が自分を受け止めてくれたのか、とファレスターが顔を上げると……。
「びっくりしたよ……大丈夫かい、猫ちゃん?」
マ、マリオ……?!
まさかこんなにも、会いたいと思っていた人物にすぐ会えるとは思ってもいなかったファレスターは、驚きのあまり硬直してしまったが、いや、今はそれどころではないと必死に思いを伝えようとした。
「マリオ、私なの! 猫になってしまったの!」
とファレスターは叫んだつもりだったが、今の体ではニャーニャーという鳴き声になるだけで、マリオを困惑させてしまった。
「なんだい? 何か言いたいみたいだね……?」
察しのいいマリオでも、さすがに人間が猫になっているとは思いもしないだろう。ファレスターは落胆した。
「マリオ? どうしたのかしら?」
その時、マリオに声を掛けてきた女性が近付いてきた。ファレスターも顔を上げる。
「やぁ、ピーチ姫。猫が突然上から降って来てね」
マリオはそのままのことを伝えると、ピーチはくすくすと笑った。
「まぁ、わたくしと似てやんちゃな猫さんなのかしら。一緒にお茶会に来る? 今日はフォルテ様もいらっしゃるのよ」
とピーチが指し示す方向には、よく陽の当たる中庭に、手頃な丸いテーブルを囲う四つの椅子が置いてあった。
その席の一つには、緊張気味なフォルテが座っていた。
「本当はファレスターさんも呼ぼうと思いましたけれど、また別の日でもいいですわよね♪」
とにこりとするピーチに複雑な心境を抱えながら、ファレスターはニャーと返事をした。
「返事のいい猫ちゃんだね。ピーチのクッキーが食べたいのかな?」
とファレスターを抱えながら席に近付くマリオ。丸いテーブルには、食べたらサクサクしていそうな、プレーンのクッキーがバスケットに並んでいたのが見えた。
「お待たせしましたわ、フォルテ様。モーニングティを始めましょ」
と言いながらピーチも席についた。すると、マリオがすかさずテーブルのティーポットを手に取り、さっとピーチのカップに紅茶を注いだ。
「ありがとう、マリオ」
必然的に、ファレスターはテーブルの上に下ろされていたのだが、それより何より、マリオの手早い気遣いにぼうっと見取れてしまっていた。
「さぁ、フォルテにも」
とマリオがフォルテのカップにも紅茶を注ごうとすると、遠慮がちにすみませんと言いながらこう言った。
「しかし、私は騎士なので、やはりこういったことは……」
フォルテは甘い物が好きだが、人前ではそれを隠していることはファレスターは知っていた。
「ふふ、そんな堅いことはおっしゃらないで……自分のしたいと思ったことをやらなきゃ、失敗だとしても損ですわ」
ピーチらしい言葉だな、とファレスターは思った。
「そ、そうですね……」
フォルテはおずおずと頷き、さぁどうぞ、と言ったピーチのクッキーを一口食べた。
「お、美味しい、です……」
フォルテは俯きながら素直に感想を漏らした。
「まぁ、よかったわ!」満面の笑みを浮かべながらピーチは喜んだ。「マリオもぜひ食べて欲しいわ」
「うん、ありがとう、ピーチ」
マリオもようやく席につき、クッキーを食べ始める。
キノコ王国では、朝からこんな優雅な時間を過ごしているものだろうか、とファレスターが考えていると、ピーチがクッキーを砕いて猫にも食べやすいようにお裾分けしてくれた。この体で食べるのは少し違和感があるけど……と思いながらもファレスターは一欠片のクッキーを食べた。甘過ぎないクッキーが口の中に広がり、幸せな気持ちにしてくれた気がした。
と同時に、もう一生このままの姿なんじゃないかという不安がファレスターを襲った。
そうだった。今こうしてのんびりモーニングティを楽しんでいる場合ではないのだ。
「それにしても……先程のお言葉、ピーチさんらしいですね」
フォルテが、紅茶を啜りながら話し出した。ピーチはくすくすと笑った。
「あら、なんの言葉だったかしら?」
「自分のしたいと思ったことはやらなきゃ損……というものです」
とフォルテが答えれば、それは、とピーチがマリオへ視線を注いだ。
「これは、マリオの言葉なんですの。わたくしのことを助けてくれた時、マリオが言っていたのよ」
「ハハッ、そんなこと言ってたかな」とぼけているのかなんなのか、マリオは軽く笑った。「ピーチを助けたのは、僕が助けたいと思ったからでさ。誰かを待つんじゃなくて、自分が、ね」
それからマリオが、なぜかファレスターへと目配せをした。
それは偶然なのか、それとも本当は、ファレスターだと気付いているのか、真意は全く分からないが……。
「そろそろお片付けをしましょうか。朝食の時間ですわ♪」
と言いながら、ピーチがテーブルの上を片付け始めた。
フォルテが慌てて、こういう仕事は私がやりますので、と手を挟んでいたが、そのそばでマリオがさり気なくサポートをしていたのをファレスターは横目で見た。
そして、ファレスターはというと。
(そうだ……マリオなら、この状況をいつも自分の力で突破していたはずだ)ファレスターの中で、燃え上がるものが出来ていた。(元に戻る方法がどこかにあるはず……まずは自分で探してみなきゃ!)
ファレスターはぴょんっと飛び出した。
マリオが、どこに行くのかと聞いてきたが、ニャーと返事だけをして屋敷へ駆けた。
やってみなきゃ分からない。でも、元に戻る方法を自力で探そう!
失敗を怖がっていては何も始まらないのだ。マリオはそうやって、スーパースターになったのだ。
そして、元に戻った日にはマリオに一番にお礼を言いに行こう。
そう心に決めて……。
──数日後、ファレスターはついに元に戻るのだが、しばらく高所の飛び降りや爪研ぎの癖が直らなかったのは、また別のお話。