このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

あなたが猫になったら誰に会いに行きますか?

夢小説設定

本棚全体の夢小説設定
色んな世界の住民たちと触れ合うことになる女の子です
色んな世界の住民たちと触れ合うことになる男の子です

 ど、どうしよう?!

 猫になってしまったファレスターは、部屋の中をぐるぐると歩き回り、ふと思いついたのが、ガノンドロフの姿だった。

 ガノンドロフはあんな感じだが、本当は優しい心を持っている。

 それに、大魔王だしなんとかなるのではないか……?

 ファレスターは早速扉を……開けるのは無理なので、窓をなんとかこじ開けて外へと飛び出した。

 猫の体だからか、二階から飛び下りても上手く着地出来たファレスター。こういうところは便利だな……と思いながらも、いやいや、まずは自分の体を元に戻す方法を探さなくては、と屋上へ向かった。

 ガノンドロフがいつもそこにいるとは限らなかったが……今日は、いた。

 屋上の目立たないような端で、身を乗り出す訳でもなく、空を……風に当たっていた。

 朝の風も、心地いい。

 いやいや、今はガノンドロフの後ろ姿に見取れている場合ではないのだ。なんとか目の前のガノンドロフにこの状況を話さなくては、とファレスターが近付くと。

「ワシの背後を取るとはな」

 屋上に来てまだ数歩しか歩いていないのに、遠くにいるガノンドロフはこちらに気が付いて振り向いた。

 距離がかなりあるというのに、ガノンドロフの声がよく通った。

「ガノンドロフ、私なの! 猫になっちゃったの!」

 ファレスターは必死に言ったつもりだったが、口から出てくるのはニャーニャーという鳴き声ばかり。

 そうこうしている内に、ガノンドロフはマントをはためかせ、カツカツと近付いてきた。

 いきなり蹴り飛ばすことはないんだと思うけど……こうして低い猫の目線から見上げたガノンドロフはほぼ壁で、圧倒感があった。

「ニャ、ニャー……」

 思わず媚を売るような鳴き声を発してしまうファレスター。逆光も相まって、怒っているのかどうか分からない。

「……猫だと? あのマスターハンドらめ、ネズミも通さぬバリアを張っていたのではなかったのか」

 とうとう間近に近付いた時、ガノンドロフはファレスターの目の前で跪いた。

 あの体の大きなガノンドロフが、わざわざ目線の高さを合わせてくれているのは本当に珍しく、つい見取れてしまっていると……。

「ンニャ……?」

 なんとガノンドロフは、ファレスターの首根っこを掴んで持ち上げたのだ!

(ガノンドロフ、そんな持ち方はやめて……!)

 ファレスターは、今自分が猫の体とはいえ、この持ち方は恥ずかしかった。

 しかし、猫というのはこの抱え方が落ち着くらしく、ファレスターは一切の抵抗も出来ないまま、向かった先は……え、謝必安と范無咎の部屋……?

「おい、いるんだろう、出てこい」

 ガノンドロフはまだ朝だというのに、彼らの部屋の扉を乱暴に叩いて呼び出した。しかし、返事はすぐにあった。

「フンッ、その声はガノンドロフか」これは、范無咎の声だ。「待ってろ、今謝必安を呼ぶ」

「いや、貴様でもいい」ガノンドロフが言った。「ワシはこいつを渡すだけでいいからな」

 わ、渡す……?

 もしかして今自分はガノンドロフにとって厄介者で、早く手放したいと考えている……?

 ちょっとショックを受けてるファレスターの前で、間もなく扉が開いた。出てきたのは、謝必安だった。

「貴様が出てきたのか」

「ええ……面倒事を押し付けるのはごめんだ、と」それから、謝必安はファレスターへ目を向けた。「おや、珍しいですね」

 謝必安がファレスターを目で指しながらそう言った。

「これをどうしたらいいか分からん」

 ガノンドロフはファレスターをつまみ上げたまま、謝必安に押し付けようとした。

「猫なんて私も分かりませんよ?」

「ワシもだ」とガノンドロフは言った。「ファレスターが猫になっている」

 へ……?

 なぜ分かったのか。分からないまま謝必安をみつめると、なるほど、とガノンドロフの発言を否定することなくファレスターをみつめた。
15/15ページ
スキ