バレンタイン前日
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
しんと静まり返る屋敷。
住民が三百人以上いるこの屋敷も、夜になると静かになるもので、ファレスターはあることをしに、こっそりと食堂へ向かっていた。
おそるおそる扉を開けると、やはり、食堂にも人はいない。もちろん、ゴリラや猿や犬がいる訳でもない。
ファレスターはそっと、厨房へ向かった。厨房には、マスターハンドたちが常に不思議な力で食材を補給してくれている大きな冷蔵庫がいくつか並んでいる。
いつも、ネロやサンジが立っている厨房に踏み込むのは、禁断の地へ入ってしまうかのような、妙に緊張を覚えるものがあった。
そう。そこは、聖地だった。
限られた人にしか侵入は許されず、その不思議な力を持つかのような人がリズムを奏でるように料理を生み出す……。
「夜食かい、救世主さん」
想像が大きく翼を広げたところで、掻き消す声が飛んだ。
ファレスターはびっくりして振り向いた。
そこには、水色髪を後ろで束ねた男性が立っていた。
「ネロ……」
こっそりとやるつもりだったのに、まさか、よりにもよって彼が出てくるなんて。
ファレスターは彼の名前を呼びながら、正直に答えようかどうか悩んだ。
「何が食べたいんだ? 作ってやるよ」
口はやや悪いけれど、初めて会った時から優しいネロに、つい、甘えたくなる気持ちを抑えてファレスターは答えた。
「あの、チョコレートを作りたいんです」
「チョコレート?」
わずかに首を傾げるネロを見て、やっぱり知らないのか、とファレスターは思った。
ファレスターはさらに言葉を続けた。
「明日、バレンタインデーで……好きな人にチョコレートを贈る日の」
ファレスターはゆっくりと話した。
ネロが、異世界のことをどれくらい知ってるのかは分からなかったし、それに、なぜか不意に顔が曇ったように見えて、ファレスターは話すのをためらった。
少し間があって、へぇ、とだけネロは頷いて大きな冷蔵庫へと向かった。
何を取り出すのだろうとファレスターが目で追っていると、ネロが厚めの板チョコを取り出してきて驚いた。
「バレンタインデーの話は、賢者さんからも聞いたことがある。これ、使うんだろ?」
ネロがはにかみながらファレスターに問う。ファレスターは頷いた。
「使います……!」
ファレスターは飛びつくようにその板チョコを受け取ったが、ネロは渡した後もその場から離れず、ファレスターは不思議に思いながら目を上げた。
ネロはずっとこちらを見ていたが、目が合うとすぐに逸らしてしまい、ファレスターはというと、ネロの前でチョコレートを作るのは気まずいという気持ちで、そっとこう言った。
「あの、ネロさん……」
「ああ、悪かった。今出るから……」
根を張ったかのようなネロの足がようやく上がる。
「あ、待ってください!」ファレスターはネロを引き止めた。「その……手伝って頂けますか……?」
チョコレートを自分だけで作るにはあまり自信がなかった。アドバイスだけでも、と付け足すと、ネロは観念したように頷いた。
「分かったよ。……で、どんなものを作るんだ?」
「……! ありがとうございます、ネロ!」
住民が三百人以上いるこの屋敷も、夜になると静かになるもので、ファレスターはあることをしに、こっそりと食堂へ向かっていた。
おそるおそる扉を開けると、やはり、食堂にも人はいない。もちろん、ゴリラや猿や犬がいる訳でもない。
ファレスターはそっと、厨房へ向かった。厨房には、マスターハンドたちが常に不思議な力で食材を補給してくれている大きな冷蔵庫がいくつか並んでいる。
いつも、ネロやサンジが立っている厨房に踏み込むのは、禁断の地へ入ってしまうかのような、妙に緊張を覚えるものがあった。
そう。そこは、聖地だった。
限られた人にしか侵入は許されず、その不思議な力を持つかのような人がリズムを奏でるように料理を生み出す……。
「夜食かい、救世主さん」
想像が大きく翼を広げたところで、掻き消す声が飛んだ。
ファレスターはびっくりして振り向いた。
そこには、水色髪を後ろで束ねた男性が立っていた。
「ネロ……」
こっそりとやるつもりだったのに、まさか、よりにもよって彼が出てくるなんて。
ファレスターは彼の名前を呼びながら、正直に答えようかどうか悩んだ。
「何が食べたいんだ? 作ってやるよ」
口はやや悪いけれど、初めて会った時から優しいネロに、つい、甘えたくなる気持ちを抑えてファレスターは答えた。
「あの、チョコレートを作りたいんです」
「チョコレート?」
わずかに首を傾げるネロを見て、やっぱり知らないのか、とファレスターは思った。
ファレスターはさらに言葉を続けた。
「明日、バレンタインデーで……好きな人にチョコレートを贈る日の」
ファレスターはゆっくりと話した。
ネロが、異世界のことをどれくらい知ってるのかは分からなかったし、それに、なぜか不意に顔が曇ったように見えて、ファレスターは話すのをためらった。
少し間があって、へぇ、とだけネロは頷いて大きな冷蔵庫へと向かった。
何を取り出すのだろうとファレスターが目で追っていると、ネロが厚めの板チョコを取り出してきて驚いた。
「バレンタインデーの話は、賢者さんからも聞いたことがある。これ、使うんだろ?」
ネロがはにかみながらファレスターに問う。ファレスターは頷いた。
「使います……!」
ファレスターは飛びつくようにその板チョコを受け取ったが、ネロは渡した後もその場から離れず、ファレスターは不思議に思いながら目を上げた。
ネロはずっとこちらを見ていたが、目が合うとすぐに逸らしてしまい、ファレスターはというと、ネロの前でチョコレートを作るのは気まずいという気持ちで、そっとこう言った。
「あの、ネロさん……」
「ああ、悪かった。今出るから……」
根を張ったかのようなネロの足がようやく上がる。
「あ、待ってください!」ファレスターはネロを引き止めた。「その……手伝って頂けますか……?」
チョコレートを自分だけで作るにはあまり自信がなかった。アドバイスだけでも、と付け足すと、ネロは観念したように頷いた。
「分かったよ。……で、どんなものを作るんだ?」
「……! ありがとうございます、ネロ!」
1/2ページ