そうしてファレスターは、ロビンに誘われるまま、白く丸いテーブルのある椅子に案内された。
｢わぁ、これがみかん畑……！｣
　船に畑があるという不思議さ。つい手を伸ばしてしまうと、すぐにロビンが引き止めた。
｢触らない方がいいわよ｣
｢あっ……！｣
　ファレスターはすぐに手を引っ込めた。
　確か漫画には、ナミにとっては大事なものであり、勝手にミカンを取ろうとしたルフィがナミにボコボコにされたシーンがあった。
｢それより、あなたのお話、聞かせてくれるかしら？｣
｢……！　私の話でよければ！｣
　ファレスターはウエストポーチから、一冊の漫画を取り出した。
　その漫画のページを適当に開いた時、ロビンは目を丸くした。
｢これは……エニエス・ロビーの？｣
｢あ、すみませんっ｣
　エニエス・ロビーは、ロビンにとってとても深い関わりのある島だった。適当に手に取ったとはいえ、この漫画を見せるにはロビンにとっては心苦しかったのかもしれない。
　ファレスターはすぐに漫画を仕舞おうとしたが、ロビンがくすくす微笑んだ。
｢いいのよ、気を遣わなくても｣とロビンは言った。｢これは、私のとても大切な思い出｣
　それから、ロビンは甲板で仲間たちと何やら話し込んでいるルフィを見やった。ファレスターもそちらへ目を向ける。
｢彼はとても面白い船長よ｣
　賑やかで、個性的な船員たちが乗る船長のルフィ。漫画でその人柄はよく見ていたが、あの会議室を一気に明るくしたのも彼であり、太陽な存在な気がした。
｢私も、そう思います｣
　ファレスターは、仲間たちと一緒にケラケラ笑ってるルフィを見つめながら頷いた。
｢続き、読んでも？｣
｢あ、もちろんです！｣
　ファレスターは手元の漫画をロビンに手渡した。ロビンはありがとうと微笑んで、漫画を受け取るなりページを開き始めた。
　ページ開くの早いな。
　とファレスターが思っていると、ロビンはすぐに気付いてくすくすと笑った。
｢誰かを観察するのは好き？｣
｢すみません、つい……｣とファレスターは答えながら、ウエストポーチからもう一冊の本を取り出した。｢晶さんからもらった賢者の書なんですが、みんなのことが書いてあるらしくて、私もこういうの書けたらなって｣
　でもそういえば、中身を読んだことがなかったな、とファレスターが苦笑するも、ロビンは変わらず穏やかな表情だった。
｢その本は読んだことがあるわ。彼の住んでいた世界には、魔法使いがいるみたいね｣