目覚めた先の世界
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マリオとピーチは、ファレスターを屋敷へ案内する道中、色々と話をしてくれた。
それは、大乱闘という試合をしている「スマッシュブラザーズ」という世界にいた時の話だった。
大乱闘というのは名前だけで、ボクシングやカーレースのようなノリで参加する模擬戦闘試合だ、と二人は話していたが、そんなことをしていたなんて、彼らは兵隊か何かなんだろうか、とファレスターは考えた。
そんな世界で、マリオとピーチが試合に明け暮れていたある日、マスターハンドという謎の人物の話によればだが……世界に歪みが引き起こり、朝目が覚めたら、この世界にやって来た、とのことだった。
「それ、私もです」
とファレスターは言った。二人は驚いた顔をして、今度はファレスターの話に耳を傾ける。
ファレスターは確かに、自分の一人暮らしをしている部屋にいて、夜、自分のベットで床についたはずだった。
それなのに、目が覚めたらこんなところにいた。まだ夢だと思ってる、という話を、ファレスターは二人にした。
「僕も、ここは夢見心地な時があるよ」
とマリオは共感してくれた。この男性は、穏やかな話口調からして、優しい人だなとよく分かる。
「でも、作ったケーキはとても美味しいんですのよ」
と上品な口調で言ったピーチは、ちょっとマイペースかな、とファレスターは思った。謎の世界に引き込まれたこの状況だって、隠す様子なく楽しんでいるように見えたからだ。
「二人は、ここに来て長いんですか?」
ファレスターは訊ねた。
「みんな、一ヶ月くらい前からこの世界にやって来ているよ」
「一ヶ月前だったかしら? もう一年も経ったような気がしていたわ」
マリオの回答に、ピーチはくすくすと笑う。
ファレスターはなんとなく、空を見やった。青い空と白い雲の間に、太陽があることに安心感を覚えた。大体、十四時くらいの高さだろうか。この世界にいると、体感時間がとてもゆっくりなような気がしていたから、あると当たり前に思っていたものが存在していることが、とてもありがたいように感じた。
「ここにいると、時間がゆっくり感じます」
とファレスターが言うと、共感してくれたことが嬉しいのか、そうでしょう? とピーチは笑顔を見せた。大人っぽいのに、笑った顔が幼く見える、本当に美しい女性だな、とファレスターは思った。
そうこう話している内に、三人は屋敷の前へとやって来ていた。屋敷の前庭は、噴水や美しい彫刻などで飾られていて、とても豪華だった。
そして、遠くから見てもそうだったように、とても高い屋敷が目の前に立ちはだかった。幅もなかなかある建物で、屋敷と呼ばれるのも納得がいく建造物である。
「ここが屋敷……」
その豪邸ぶりな大きさと高さに、ファレスターは思わず呟いていると、前を歩いていたマリオがこちらを振り向いてこう話した。
「ここは、僕たちが住んでる場所でね」
とは言うものの、住む場所にしては大き過ぎる、どちらかといえば会社と思ってもおかしくない大規模な建物だった。そんなに、ここに住んでいる人が多いということ……?
「別の世界から来た人同士が住んでる場所なんですの」
「別の世界から来た人同士……?」
ピーチの言葉に、ファレスターは小首を傾げた。ここに住む人たちは、みんな「スマッシュブラザーズ」という世界から来た人たちなのではないだろうか?
「おーい!」
その時、一つの声が飛んできた。
ファレスターたちは屋敷の正面玄関へと目を向けた。そこには、三人の男女が立っていて、声を上げた女性は、こちらに大きく手を振っていた。
「あら、フレイ様とレスト様ですわ」
「イライもいるね。天眼で、君が来ること知っていたのかも」
とピーチとマリオは言い、ファレスターを連れて彼らのもとへ近付いた。
「待ってたよー!」
と明るく話し始めたのは、ツインテールの女性。人懐っこく笑いながら、ファレスターに手を差し出した。
「私はフレイ! 初めまして!」
「初めまして、ファレスターです」
ファレスターはそう名乗りながら、彼女と握手を交わす。
「僕はレスト」
と落ち着いた様子で自己紹介をしてくれたのは、金髪の男性。控えめで、それでいてフレイとよく似た人懐っこそうな笑顔をファレスターに向けてくれた。
「私は、イライ·クラーク。イライと呼んでもらって構いません」
と名乗ったのは、全身を黒っぽいローブに身を包んだ、目隠しをした男性だった。一見、風変わりな格好にファレスターは少し驚いたが、イライは気にする様子なく穏やかな笑みを見せ、丁寧におじぎをした。
「あと……彼女は私の相棒です」
とイライが言葉を続けたので、誰のことだろう、とファレスターが首を傾げていると、ピュイっと背後から鳴き声が飛び、強い羽ばたき音を立てながら、一羽の梟が、イライの腕で止まった。
「わぁ……きれいな梟……!」
ファレスターは思わず声をあげた。
梟をこんなに間近で見るのも初めてだったが、きれいな羽毛と宝石をはめたようなその青い瞳に、ファレスターは心から、きれいと思ったのだ。
梟は、こちらの言葉が分かるのか、翼の裏を掻いたのち、誇らしそうに胸を張った気がした。
「ありがとう、ファレスターさん。彼女も嬉しいと言ってます」
とイライは言った。イライは、梟の言葉が分かるのだろうか。
「それで……僕たちのことを待っていたというのは?」
マリオが話を切り出した。ファレスターも、そういえば、フレイが「待っていた」と言っていたことを思い出し、そちらへ目を向けた。
しかし、フレイは肩をすくめて何も答えず、なぜかレストのほうを見る。
「イライが、この世界の救世主が現れると預言していたんだよ」
目線を辿ると、レストが代わりに答え、次にはイライへ視線を投げた。
「預言……?」
ファレスターはレストの視線につられてもう一度イライを見やる。
イライは、別段表情を変えることもなく、はい、と頷いた。
「貴方は、この世界の救世主です」
「きゅ、救世主……?」
そんな、いきなり言われても。都会の端で一人暮らしをしていただけの自分に、救世主という大それたもののはずがない、とファレスターは思った。
見れば、周りのみんなは期待の眼差しをファレスターに投げていて、誰も、イライの発言を否定しようとしてこなかった。
「あら、ファレスター様は救世主なんですのね!」
ただ一人、マイペースなピーチはのんきそうに笑ってファレスターの手を取った。
「なら、早速、マスターハンド様方にご挨拶に行きませんと!」
「でも私……」
スマッシュブラザーズという世界から来た訳でもない、なんの変哲もない至って普通の暮らしをしていた自分が、まさか、この世界の救世主だなんて。絶対何かの間違いだ、とファレスターは必死に首を振ったが、彼らは大丈夫だのとか安心してだのと口々に言い、ファレスターを屋敷の中へと連れ込んだ。
それは、大乱闘という試合をしている「スマッシュブラザーズ」という世界にいた時の話だった。
大乱闘というのは名前だけで、ボクシングやカーレースのようなノリで参加する模擬戦闘試合だ、と二人は話していたが、そんなことをしていたなんて、彼らは兵隊か何かなんだろうか、とファレスターは考えた。
そんな世界で、マリオとピーチが試合に明け暮れていたある日、マスターハンドという謎の人物の話によればだが……世界に歪みが引き起こり、朝目が覚めたら、この世界にやって来た、とのことだった。
「それ、私もです」
とファレスターは言った。二人は驚いた顔をして、今度はファレスターの話に耳を傾ける。
ファレスターは確かに、自分の一人暮らしをしている部屋にいて、夜、自分のベットで床についたはずだった。
それなのに、目が覚めたらこんなところにいた。まだ夢だと思ってる、という話を、ファレスターは二人にした。
「僕も、ここは夢見心地な時があるよ」
とマリオは共感してくれた。この男性は、穏やかな話口調からして、優しい人だなとよく分かる。
「でも、作ったケーキはとても美味しいんですのよ」
と上品な口調で言ったピーチは、ちょっとマイペースかな、とファレスターは思った。謎の世界に引き込まれたこの状況だって、隠す様子なく楽しんでいるように見えたからだ。
「二人は、ここに来て長いんですか?」
ファレスターは訊ねた。
「みんな、一ヶ月くらい前からこの世界にやって来ているよ」
「一ヶ月前だったかしら? もう一年も経ったような気がしていたわ」
マリオの回答に、ピーチはくすくすと笑う。
ファレスターはなんとなく、空を見やった。青い空と白い雲の間に、太陽があることに安心感を覚えた。大体、十四時くらいの高さだろうか。この世界にいると、体感時間がとてもゆっくりなような気がしていたから、あると当たり前に思っていたものが存在していることが、とてもありがたいように感じた。
「ここにいると、時間がゆっくり感じます」
とファレスターが言うと、共感してくれたことが嬉しいのか、そうでしょう? とピーチは笑顔を見せた。大人っぽいのに、笑った顔が幼く見える、本当に美しい女性だな、とファレスターは思った。
そうこう話している内に、三人は屋敷の前へとやって来ていた。屋敷の前庭は、噴水や美しい彫刻などで飾られていて、とても豪華だった。
そして、遠くから見てもそうだったように、とても高い屋敷が目の前に立ちはだかった。幅もなかなかある建物で、屋敷と呼ばれるのも納得がいく建造物である。
「ここが屋敷……」
その豪邸ぶりな大きさと高さに、ファレスターは思わず呟いていると、前を歩いていたマリオがこちらを振り向いてこう話した。
「ここは、僕たちが住んでる場所でね」
とは言うものの、住む場所にしては大き過ぎる、どちらかといえば会社と思ってもおかしくない大規模な建物だった。そんなに、ここに住んでいる人が多いということ……?
「別の世界から来た人同士が住んでる場所なんですの」
「別の世界から来た人同士……?」
ピーチの言葉に、ファレスターは小首を傾げた。ここに住む人たちは、みんな「スマッシュブラザーズ」という世界から来た人たちなのではないだろうか?
「おーい!」
その時、一つの声が飛んできた。
ファレスターたちは屋敷の正面玄関へと目を向けた。そこには、三人の男女が立っていて、声を上げた女性は、こちらに大きく手を振っていた。
「あら、フレイ様とレスト様ですわ」
「イライもいるね。天眼で、君が来ること知っていたのかも」
とピーチとマリオは言い、ファレスターを連れて彼らのもとへ近付いた。
「待ってたよー!」
と明るく話し始めたのは、ツインテールの女性。人懐っこく笑いながら、ファレスターに手を差し出した。
「私はフレイ! 初めまして!」
「初めまして、ファレスターです」
ファレスターはそう名乗りながら、彼女と握手を交わす。
「僕はレスト」
と落ち着いた様子で自己紹介をしてくれたのは、金髪の男性。控えめで、それでいてフレイとよく似た人懐っこそうな笑顔をファレスターに向けてくれた。
「私は、イライ·クラーク。イライと呼んでもらって構いません」
と名乗ったのは、全身を黒っぽいローブに身を包んだ、目隠しをした男性だった。一見、風変わりな格好にファレスターは少し驚いたが、イライは気にする様子なく穏やかな笑みを見せ、丁寧におじぎをした。
「あと……彼女は私の相棒です」
とイライが言葉を続けたので、誰のことだろう、とファレスターが首を傾げていると、ピュイっと背後から鳴き声が飛び、強い羽ばたき音を立てながら、一羽の梟が、イライの腕で止まった。
「わぁ……きれいな梟……!」
ファレスターは思わず声をあげた。
梟をこんなに間近で見るのも初めてだったが、きれいな羽毛と宝石をはめたようなその青い瞳に、ファレスターは心から、きれいと思ったのだ。
梟は、こちらの言葉が分かるのか、翼の裏を掻いたのち、誇らしそうに胸を張った気がした。
「ありがとう、ファレスターさん。彼女も嬉しいと言ってます」
とイライは言った。イライは、梟の言葉が分かるのだろうか。
「それで……僕たちのことを待っていたというのは?」
マリオが話を切り出した。ファレスターも、そういえば、フレイが「待っていた」と言っていたことを思い出し、そちらへ目を向けた。
しかし、フレイは肩をすくめて何も答えず、なぜかレストのほうを見る。
「イライが、この世界の救世主が現れると預言していたんだよ」
目線を辿ると、レストが代わりに答え、次にはイライへ視線を投げた。
「預言……?」
ファレスターはレストの視線につられてもう一度イライを見やる。
イライは、別段表情を変えることもなく、はい、と頷いた。
「貴方は、この世界の救世主です」
「きゅ、救世主……?」
そんな、いきなり言われても。都会の端で一人暮らしをしていただけの自分に、救世主という大それたもののはずがない、とファレスターは思った。
見れば、周りのみんなは期待の眼差しをファレスターに投げていて、誰も、イライの発言を否定しようとしてこなかった。
「あら、ファレスター様は救世主なんですのね!」
ただ一人、マイペースなピーチはのんきそうに笑ってファレスターの手を取った。
「なら、早速、マスターハンド様方にご挨拶に行きませんと!」
「でも私……」
スマッシュブラザーズという世界から来た訳でもない、なんの変哲もない至って普通の暮らしをしていた自分が、まさか、この世界の救世主だなんて。絶対何かの間違いだ、とファレスターは必死に首を振ったが、彼らは大丈夫だのとか安心してだのと口々に言い、ファレスターを屋敷の中へと連れ込んだ。