｢行ってらっしゃいー！｣
　ファレスターたちは、フレイたちを含む多くの仲間たちに見送られながら、海へと旅立った。
　生まれて一度も船に乗ったことはない……といえば言い過ぎかもしれないが(確か修学旅行には乗ったことあるかも)船に揺られるのがほとんどないファレスターにとって、船酔いはするのか、という心配はあったが、大丈夫であった。
　船は、大きいということもあるからか、あまり揺れないのだ。
　とは言っても、麦わら海賊団の船員とは初めましてのばかりである。ファレスターは船の端っこで緊張がほぐれずにいた。
｢お嬢さん｣
　と丁寧な口調で話しかけてきたのは、白骨化したアフロ頭……いや、ブルックである。
｢ブルックさん……｣
　こうして彼と会うのはここで初めてだったが、ブルックのこともよく知っていたファレスターは、あまり驚かなかった。本当に、どこもかしこも骨ばかりである。
｢ヨホッ、そんなにみつめられたら、照れてしまいますねェ｣
｢あ、すみませんっ｣
　失礼な態度だったろうな、とファレスターが慌てて目を逸らしたが、ブルックは違った。
｢いえ、お気になさらずに……かわいらしいあなたになら、いくらでも見られていたい｣
　かわいいだなんてそんな、とファレスターが顔を上げると、ブルックがいつの間にか、バイオリンを取り出していた。
　確か、ブルックは音楽家である。緊張しているファレスターに一曲聴かせてくれるのだろうか、と期待に胸をふくらませてブルックの次の言葉を待った。
｢では早速……｣ブルックが話し出す。｢パンツ、見せてもらってもよろしいでしょうか？｣
｢え……？｣
｢こぉらぁ、ブルック！｣
　ファレスターが返事をするよりも早く、ナミが怒声を上げた。次には、強烈な一発。
｢ヨホホ……｣
　ブルックの頭にはタンコブが大きく膨れ上がった。
｢ごめんね、ファレスターちゃん。こいつがまた変なことが言ったら、すぐ言って！　すぐにこうして置くから！｣
　とナミはファレスターに言った。
　ナミは、見た目は一般女性で、スタイル抜群なのでファレスターも憧れてしまう程であるが、その頭脳はずば抜けていて、この船の航海士だ。この船の上では、彼女が一番偉いのかもしれない、とファレスターは思った。
｢ふふ、にぎやかね｣
｢ロビンさん……！｣
　と声を掛けてきたのはロビン。船に乗る前からも声を掛けてくれていたので、ファレスターが気になっている人物だった。
｢よかったら、予習の話、聞かせてもらえるかしら？｣
　ロビンからのお誘い。まさか、ロビンからそう言ってもらえるなんて！
　ファレスターはこくりと頷いた。
｢はい、ロビンさん！｣