｢わっ、立ったまま寝てますよ？！｣
　ファレスターがびっくりして声をあげていると、レストはくすくすと笑い、フレイはケラケラと笑った。
｢え、なんで笑って……？｣
｢ごめんなさい、つい……｣とレストはなんとか笑い止む。｢彼女はクローリカ。僕たちの城にいる執事見習いなんだ｣
｢執事見習い……｣
　ファレスターは呟いた。レストとフレイはファレスターに気さくに接してくれているが、城の話をさらりと出てきた辺り、二人が本当に王族の人間なのだな、と改めて感じる瞬間だった。
　とファレスターが考えている内に、フレイがさらに説明を付け足してくれた。
｢クローリカは寝ながら色々なことが出来る器用な執事見習いなんだよ〜｣
｢寝ながら色々なことが……？｣
　ここには驚きがたくさんだ。そんな人が世の中に存在するなんて、とファレスターはにわかには信じられなかったが、クローリカは、どうぞ〜と言いながら目の前にカレーライスを並べてくれていた。寝ながら。
｢ありがとう、クローリカ！｣
　フレイはにこりとお礼を言う。クローリカはにこりと微笑んだ。
｢どういたしまして〜……スヤァZzz｣
　起きたと思ったらまた寝るクローリカ。どうなっているのだろうか。
｢もう少し夜になったら起きていることも多いとは思うけど……｣
　とフレイがちらりとクローリカを見やると、クローリカが突然ぱちりと目を開けて、急に頬を膨らませた。
｢ひどいです〜。私がいつも寝てるみたいな言い方をして〜｣
　とは言っているものの、クローリカの話口調はとてもゆっくりしていて、あまり怖くはない。
　そんなクローリカにフレイはごめんねと謝ると、クローリカはすぐに許し、次の仕事をしに厨房へと戻って行った。
　ファレスターは、あんな人もいるんだな、とクローリカの背中を見送った。
｢さぁ、食べようか｣
｢うん！｣
　レストの声を合図に、フレイは出されたカレーライスを食べ始める。
｢いただきます！｣
　ファレスターも手を合わせてカレーライスを食べてみる。ごろごろと食感のいい具材と程よい辛さがベストマッチしたとても美味しいカレーだ。
｢美味しい……！｣
　とファレスターが感想を漏らすと、レストもフレイも同意見で、お互い頷きを見せ合いっこ。
　そんな一時を過ごしていると、誰かが声を掛けてきた。
｢ファレスターさん！｣
｢クロエ！｣
　クロエだった。
　クロエははにかみながらファレスターに近付いてきて、隣の席に座っていいか訊ねてきたのでどうぞと答えるとそこに腰を下ろし、早速話をし出した。