レストが場所取りをしてくれていた席は長テーブル前にある三つの椅子で、ファレスターは、レストとフレイと向かい合う席に座ることとなった。
｢ここに座ってたら、ネロが声を掛けてくれるんだよ｣
　とフレイは言うが、周りは人でごった返している。本当に来てくれるのだろうか、とファレスターが少し不安になっていると、間もなく、水色髪の頭が見えてきた。
｢よう、救世主さんたち。今日はカレーを作ったんだが、辛いのは平気か？｣
　そう声を掛けてきたのは、水色の髪を後ろでまとめたネロだった。目線がファレスターに向いているので、どうやら自分に質問をしているらしいとファレスターは気が付いた。
｢はい。あんまり辛いのは食べれないかもしれませんが……｣
｢分かった。すぐ用意するよ｣
　ファレスターの答えにネロは全く悪い顔せず、厨房へと戻って行った。
｢ネロって本当にいい人ですね｣
　とファレスターが言うと、レストとフレイは同時に頷いた。
｢口下手とは聞いているけれど、とてもお世話になっている一人だよ｣
｢私、ネロの作るご飯大好き！｣
　とレストとフレイはそれぞれそう言った。
｢私も｣ファレスターも、ネロの作るご飯が好きになっていた。｢それにしても、今日は厨房にはネロしかいないんでしょうか？　昨日はサンジくんもいたのに……｣
　食堂には、たくさんの人がいる。それをネロだけで捌くのは大変そうだった。
｢サンジさんはもしかしたら、明日の出発の準備で厨房にはもういないのかもね｣
　とレストは言った。そうだった。サンジは麦わら海賊団の一人だった、とファレスターはあの漫画を思い出していた。
｢ここの住民、三百人以上いるのに、厨房にいてくれる料理人は少なくて……時々私たちも料理を手伝うんだよ〜｣とフレイは言った。｢ファレスターもさ、旅から帰ってきたら、一緒にご飯を作ろう！｣
　旅から帰ってきたら。それは何気ない言葉の一つに過ぎなかったが、未来の約束があるのは、とても大事なことのようにファレスターは思った。
｢うん！｣
　その直後丁度、ふわりと美味しそうな香りがしてファレスターは顔を上げた。
　淡い紫色の髪をした女性が、カレーの入ったお皿を三つ、上手に両手で持ちながらすやすやと立ったまま寝ていた……。
｢こんばんは〜、お料理をお持ちしましたよ〜……すぅ〜Zzz｣