｢ルフィさん……｣
　ファレスターは麦わら帽子を被った少年を見やった。ルフィはにぃっと笑みを浮かべた。
｢そうだな。向かい来る敵はたたっ斬る。それで充分だろ｣
　ルフィの隣の席にいるメリオダスもそう言った。
　その二人の発言は計画性も何もないように思えるものだったが、辺りの空気が一気に明るくなったのをファレスターは感じた。
｢落ち込んでいる場合ではないだろう。我々が胸に光を消してしまえば、仲間もじきに倒れる｣ウォルが言葉を続けた。｢我々は決して折れては行けない。否、折れても何度も立ち直ることが大事だ｣
　凛としたウォルの言葉。彼の言葉には、どこか背中から押されるような心強さを感じた。
｢うん、その通りだね！｣とマリオが言った。｢僕たちはみんなで力を合わせてここまで来たんだ。きっとこれからもみんなで頑張れば乗り越えられるよ！｣
　みんなはそれぞれ頷いた。ファレスターも、その通りだ。そうだと願いたい。そんな思いで、こくりと首を縦に振る。
｢エマも頑張るなの！｣
　エマがやる気を見せるようにぐっと脇を締める。その横で、つと挙手をしたのはイライだった。
｢団結力が高まったところで……私から一つ、いいですか？｣
　イライの口元しか見えない穏やかな笑みに、みんなが注目をする。彼は預言者だという話だ。ファレスターも彼へと緊張気味に視線を向けた。
｢この世界から元の世界へ戻る方法が、視えたんです｣
　イライは衝撃の発言をした。どよめくメンバー達。
｢まだ、はっきりとは視えなかったのですが……｣イライが言葉を続ける。｢この世界には、聖なる炎と呼ばれているものがあります｣
｢聖なる炎……？｣
　ファレスターは小さく呟いた。聖火台か何かがあるというのだろうか。
｢その聖なる炎はどこにあるんだい？｣
　マスターハンドがゆっくりと訊ねる。イライも同じくゆっくりとした口調で、こう答えた。
｢ここから東の先に｣
　会議室はさらにざわついた。そんなにはっきりと、預言出来るものなのだろうか？　ファレスターはイライの言葉をにわかには信じられなかった。
｢しかし、ここから東というと、海ではなかったかのう？｣
　と冷静に言ったのはジンオウガだ。
｢それなら……｣
　マスターハンドは誰かを指した。みんなの視線も、ある一人の少年へ注がれた。
｢ん？　なんだよ？｣
　こんな真剣な話し合いの中、鼻をほじっていた少年……ルフィだった。