｢雨が力になるってどういうことかな、キルア｣
　ファレスターの言葉を聞いて真っ先にハツラツな声を発したのはゴンだ。
｢雨が降ってると強くなるってことだろ｣
　とキルアが冷静に返しているが、確かに、その通りなのかもしれない、とファレスターは窓の方を見やった。
　天井から床まである大きな窓からはどんよりとした雲が立ち込め、今もまだ大雨を降らせていることがここからよく見えた。
｢そういえば、人形がいっぱい出てきた時も雨が降ったよね〜｣
｢さっきまではあんなに晴れていたのにね｣
　とフレイとレストも言い、ファレスターと同じく外の雨を見やった。
｢でも、イドーラさんから聞いただけなので……｣
　レストがハンターと呼んで警戒していた相手。ファレスターは、イドーラの言葉が本当なのかどうか半ば疑っていた。
｢あいつは、嘘は言わないだろうヨ｣と話し出したのはクレイジーハンド。｢強い力を持つやつ程、自分の使う言葉に気を付けていないと返り討ちに遭う｣
　返り討ちに遭う……？　随分物騒な言い方だが、どういうことだろうか。
｢ああ……魔法使いたちも、似たようなことを言っていました｣と晶が話し始めた。｢魔法使いは心で魔法を使うから、約束をする相手を選ばないといけないって｣
　ここに来て目の当たりにした不思議な力、魔法。
　何かしらの代償はあるのだろうとファレスターは思ってはいたが、やはりそれなりの対価は必要らしい、ということだけは分かった。
｢まぁ、今のところは、人形は雨で強くなるってことを前提に話を進めようか｣
　とまとめたのは、指を天井に突き出したマスターハンド。皆、その意見に反論はなく各々頷いたが、不安な様子を見せる人もいた。
｢雨か……オレの仲間に、雨の技を使う人がいるから、もしかしたら人形と戦えないのかもしれないですよね……｣
　それは、沢田綱吉だった。
｢ああ、山本のことね｣
　とマスターハンドは答えた。ファレスターは山本という名前をどこかで聞いたような……と記憶を辿っていると、アルルも話し出した。
｢雨の技ではないけれど、ボクの仲間にも、水を使った魔導使いがいるよ｣とアルルは言う。｢もしかして、水の技は全般的に効かないのかなぁ？｣
　イドーラの言葉が本当なら、そういう線も有り得る。話し合いで分かったことは、人形の有効性ではなく強みということもあり、周りの空気は一気に重苦しくなる。
｢あの……｣
　自分のせいでみんなを暗い気持ちにさせてしまったのではないか、とファレスターが何か言おうとした時、一つの明るい声が割って入った。
｢そんなもん、とりあえずみんなぶっ飛ばせばいいだろ｣