｢まずみんなをここに集めた理由は……｣とマスターハンドは話しを切り出す。｢さっき、ファレスターさんたちが人形たちに襲われてね｣
　ファレスターはあの恐怖の瞬間を思い出して背筋がぞっとした。今までいた世界とはかけ離れた現実。目の前の刃、無情な人形の目……夢見心地だったこの異世界を、真実だと見せつけられた瞬間だった。
｢すごいたくさんの人形がいたよね｣
｢雨も降ってくるし本当に大変だった！｣
　と話したのはレストとフレイ。マスターハンドは、そうだったね、と話を続けた。
｢人形はこの屋敷周辺のバリアからは入ってこなかったけれど……大きなアーマーメイトが現れてね｣
｢あれは、いつものアーマーメイトじゃなかった｣と話に割り込んで来たのはクレイジーハンド。｢前より攻撃的で知能もやや高い……それに、大きさもあったナ｣
　それは、確かにウォルも同じことを言っていた。現場にいた一人であるウォルをファレスターが視線を向けたが、青い兜を被って表情の見えにくい彼が何を思っているのかは想像しづらい。
｢アーマーメイトって、大きい程たくさんの人形を作れるのかな？｣
　と疑問を投げてきたのはゴン。ゴンも、あの巨大な機械を目の当たりにしていた。
｢そこまでは分かんねぇだろ｣
　そう冷静に言ったのはゴンの隣のキルア。キルアは頭の後ろで腕を組んだ。
｢そうだね。僕たち、この世界に来て一ヶ月は経つけど、人形のことも、アーマーメイトのことも全く分かっていない｣
　とマスターハンドが話しているのを横で聞きながら、ファレスターは、夢の魔女、イドーラの言葉を思い出していた。
　イドーラは、なんて言ってたか？
｢あ、あのー……｣
　ファレスターはおそるおそる手を上げた。
　前方の席というのもあり、一斉にみんなの視線を集めるファレスター。こうして見ると、十九人って結構な人数だ。
｢えっと、さっき、イドーラさんに教えてもらったのですが……｣
　ファレスターはみんなの注目を集めて緊張しながら、話そうとした。
｢もしかしてファレスターさん、見える人なのかい？！｣
　と驚きの声をあげたのはマスターハンド。
　ファレスターがおずおずと頷くと、周りからどよめきや歓声のような声が聞こえてきた。
｢……それで、イドーラさんはなんて言ってたかな……？｣
　マスターハンドは訊ねた。ファレスターはイドーラの言葉そのままを伝えた。
｢この世界の人形は、雨を力に変えて強くなるって……｣