｢俺はさっきからここにいる｣
　一つの声が飛ぶ。
｢うわぁあ？！　キ、キドさん……！｣
　空席と思っていた目の前の席に突如緑髪の少女が現れ、びっくりするファレスター。
｢キドの目を隠す能力は、僕の目も隠されちゃうよ〜はははっ｣
　マスターハンドの目が一体どこにあるというのか、冗談っぽく笑いながらそう言った。
｢こんにちは、キド！｣
｢ああ、こんにちは、ゴン｣
　ゴンは気さくにキドに挨拶をしているし、ファレスターのように驚いている人はいない。目を隠すという能力は、キドの日常茶飯事ということなのだろうか？
｢ミクやメリオダスもいねぇんじゃねぇか？｣
　ゴンの隣ではキルアが冷静に指摘する。
｢ミクには声は掛けたんだけどね｣とマリオが話し始めた。｢歌った後だから、着替えてから来るって言ってたよ｣
　ミク、という名前は確かどこかで聞いた気もするけれど……とファレスターが思っていると、廊下からバタバタと騒がしい足音が聞こえてきた。
｢すみません、遅刻しました……！｣
　と会議室に勢いよく入ってきたのは茶髪のつんつん頭をした少年……。
｢ちゃおっす｣
　と赤ん坊……？！
｢えっ、赤ちゃん……？！｣
　茶髪の少年の肩に、黒い帽子を被った赤ん坊が座っている。
｢リボーンだぞ｣
　小さな手を上げて、赤ん坊は気さくに話し掛けてきた。……いやいや、赤ん坊は自分の名前を名乗ったりは……。
｢ははは……びっくりするよね｣一方の茶髪の少年は困り笑みを浮かべながらそう言った。｢オレは、沢田綱吉。リボーンのことは……まぁ、普通の赤ん坊じゃないんだ｣
｢普通の赤ん坊じゃない……？｣
　ファレスターはもう一度リボーンへ目を向ける。帽子を被った口達者な赤ん坊、と思えば、特段変わった様子もないように思えた。
｢ツナくん、リボーン、とりあえず席についてもらおうか｣
　とマスターハンドは言い、二人に席に着くように促す。
｢はい｣
　綱吉は席に腰を下ろす。リボーンは背丈が低いのでテーブルの上に座った。
｢まだ人が集まってなくてね〜、ツナくんたちは遅刻ではないよ｣
　とマスターハンドが言うと、綱吉はよかった……とホッと息を吐いた。
｢オレ、遅刻しちゃったのかと思って……｣
｢だからって油断するんじゃねぇ。早寝早起きは大事だぞ｣
　控えめな綱吉と違い、生意気なことを言い始めるリボーン。……確かに変わってるのかも？　とファレスターが思っていると、会議室にまた誰かがやって来た。