屋敷の敷地内に踏み込むや否や、マスターハンドとクレイジーハンドは目にも止まらないスピードで飛び出し、人形たちを蹴りにかかった。
　とその直後、何かがぽつりと音を立てた。
｢ファレスター！　中に入ろ！｣
｢う、うん……！｣
　フレイの声に促されるまま、屋敷に入ると、一気に大雨が降り注いだ。
　振り返ると、前庭にあるアーチ型の薔薇が這う門の前で、マスターハンドとクレイジーハンドが、見事な連携で人形たちを次々と倒していた。
｢すごい……｣
　この屋敷の主と呼ばれるだけの力はあるのだろう。フレイたちがやや苦労しながら倒していた大量の人形たちをあっけなく一蹴していくのを、ファレスターはただ呆然と眺めた。
　雨はますます激しくなり、ファレスターははっとして辺りを見回した。
｢何を探しているの？｣
　とレストが不思議そうに問いかけるので、近くにタオルか何かはないのかとファレスターは訊ねた。
｢マスターハンドさんとクレイジーハンドさん、雨で濡れているから……｣
　すると、フレイとレストは驚いた顔をし、キルアは笑った。
｢マスターハンドならまだしも、あのクレイジーハンドにも気を遣うなんて、変わってるな｣
　とキルアは言うのだ。
　そうかなぁ、とファレスターが首を傾げる。ウォルは相変わらず表情を変えず、まるで一本の木のように黙りこくっているだけだ。
｢オレ、探して持ってくるよ！｣
　不意に、ゴンがそう声を上げて中へと駆けて行く。そんなゴンをキルアはちょっと不満そうに見送った。
｢嫉妬しちゃった？｣
｢そんな訳ねぇよ｣
　フレイがキルアにそうからかうが、何に嫉妬したのかファレスターはよく分からなかった。
｢ム……｣
　どうやら、あまり話の蚊帳の中にはいないらしいウォルが、突如目を上げた。
　なんだろう、とファレスターが屋敷の外へと再び視線を戻すと、そこに人形の姿はなく、代わりに、巨大な四つ足のロボットが立っていたのだ。
｢何あれ……！｣
　ファレスターは口元を覆った。
　目の前に立ちはだかるマスターハンドとクレイジーハンドの二倍はあろうかと思われる機械仕掛けのそれに、ファレスターは言葉を失った。
　隣のウォルが冷静に、ファレスターの言葉に答えた。
｢あれは、アーマメイト。人形を生み出す機械だ｣