海辺の散策
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ロゼッタの提案を快く受け入れたファレスターは、チコとじゃれ合いながら食堂へと向かった。
食堂は、恐らく一番人が集まる場所なのだろう。多くの人々が行き通い、厨房へ食事を取りに行く者、食卓で食べ物を取り合う者、楽しそうにお喋りをする者たちで食堂が埋まっていた。
「ワン! ワン!」
「バウ! バウ!」
そこに、二匹の犬が目の前を走り抜けた。ここには、ゴリラや猿以外にも、犬もいるというのか。
「犬もここで暮らしているんですか?」
厨房に向かいながら、ファレスターはロゼッタに訊ねた。ロゼッタは、走り去る二匹の犬の後ろ姿を見やりながら、ええ、そうねと頷いた。
「彼らは、ダックハントとバルトアンデルスね。どちらも別々の世界から来た同士だけど、ここで随分仲が良くなったみたい」
話を聞くと、カモメを連れている垂れ耳の犬がダックハント、体が大きく、兜や鎧を身につけた犬がバルトアンデルスで、実は、魔法で召喚された犬によく似た謎の生物だという。
「ここは本当、不思議が多いです……」
とファレスターが呟いてチコを見ると、チコは宙で斜めに傾きながら、見つめ返してきた。
夢みたいな出来事や生き物が多いこの世界。ファレスターは、未だに夢見心地な感覚が拭えなかった。
「おはようさん、救世主さん」
厨房から声が掛かり、ファレスターははっと目を上げた。そこには、気だるそうな目をしたネロが、うっすら笑いかけていた。
「おはようございます、ネロさん」
とファレスターが挨拶をすると、続いてロゼッタも挨拶をし、チコも挨拶をするかのようにおじぎをした気がした。
「あー、俺のことは、ネロでいいから」あまり目を合わせないネロがそう言った。「救世主って、賢者と同じなんだろ? 俺たちの世界では、そういうものだから」
「でも……」
ファレスターはためらった。ネロは明らかに、自分よりは年上に見える。
「気にするな。少なくとも、俺は気にしないから」
素っ気ない言い方をするネロだったが、それが彼なりの精一杯の気遣いにも見て取れた。ファレスターは頷いた。
「分かりました。これからもよろしくお願いします、ネロ」
「ああ。それで……」
今日の飯は……と話そうとしたネロを遮ったのは、あのナンパな声だった。
「ファレスターちゅわあああん!」サンジだった。「おれのことも、名前で呼んで欲しいなぁ、ファレスターちゃん!」
相変わらずなよなよとした動きで厨房から飛び出してきたサンジ。今日は彼を制止してくれるフレイはいない。ファレスターは困惑しながら、こう答えた。
「じゃあ……サンジくん、で……?」
「はぁああああい!」
サンジの周りだけどこか空気が違うような錯覚すらしてしまう程のこのハイテンションさは、一体どこから湧いてくるのだろうか。ファレスターは、いきなり他人のことを「くん」呼びしてしまったことに少しの不安を抱えつつ、次はロゼッタをナンパし始めたサンジを眺めた。
「ロゼッタさぁん! 今日もとてつもなくお美しい……!」
「まぁ、あまり気にするな、あの男のことは」と冷静にネロが声を掛けてきた。「それで、今日の朝飯はスクランブルエッグだが、ファレスターは食えるか?」
「あ、はい!」
サンジの言動に慣れないまま、ファレスターは慌てて返事をしたが、ネロは気にする様子なく、それはよかったと、手早く料理を始めた。
ネロの手つきは本当、プロのそれで、ファレスターが見取れている内にあっという間に朝食が出来たので、これも魔法なのだろうかとひそかに思った。
「ありがとうございます、ネロ」
とファレスターが礼を言うと、ネロは短く返事をして次の人の分の食事を用意し始めた。
さて、どこの席につこう、とファレスターが朝食の乗ったトレーを両手に歩いた。ロゼッタはサンジに捕まっている。席はどこを見てもいっぱいに見えていたが、そこに一つの声が聞こえた。
「おーい、ファレスター!」
食堂は、恐らく一番人が集まる場所なのだろう。多くの人々が行き通い、厨房へ食事を取りに行く者、食卓で食べ物を取り合う者、楽しそうにお喋りをする者たちで食堂が埋まっていた。
「ワン! ワン!」
「バウ! バウ!」
そこに、二匹の犬が目の前を走り抜けた。ここには、ゴリラや猿以外にも、犬もいるというのか。
「犬もここで暮らしているんですか?」
厨房に向かいながら、ファレスターはロゼッタに訊ねた。ロゼッタは、走り去る二匹の犬の後ろ姿を見やりながら、ええ、そうねと頷いた。
「彼らは、ダックハントとバルトアンデルスね。どちらも別々の世界から来た同士だけど、ここで随分仲が良くなったみたい」
話を聞くと、カモメを連れている垂れ耳の犬がダックハント、体が大きく、兜や鎧を身につけた犬がバルトアンデルスで、実は、魔法で召喚された犬によく似た謎の生物だという。
「ここは本当、不思議が多いです……」
とファレスターが呟いてチコを見ると、チコは宙で斜めに傾きながら、見つめ返してきた。
夢みたいな出来事や生き物が多いこの世界。ファレスターは、未だに夢見心地な感覚が拭えなかった。
「おはようさん、救世主さん」
厨房から声が掛かり、ファレスターははっと目を上げた。そこには、気だるそうな目をしたネロが、うっすら笑いかけていた。
「おはようございます、ネロさん」
とファレスターが挨拶をすると、続いてロゼッタも挨拶をし、チコも挨拶をするかのようにおじぎをした気がした。
「あー、俺のことは、ネロでいいから」あまり目を合わせないネロがそう言った。「救世主って、賢者と同じなんだろ? 俺たちの世界では、そういうものだから」
「でも……」
ファレスターはためらった。ネロは明らかに、自分よりは年上に見える。
「気にするな。少なくとも、俺は気にしないから」
素っ気ない言い方をするネロだったが、それが彼なりの精一杯の気遣いにも見て取れた。ファレスターは頷いた。
「分かりました。これからもよろしくお願いします、ネロ」
「ああ。それで……」
今日の飯は……と話そうとしたネロを遮ったのは、あのナンパな声だった。
「ファレスターちゅわあああん!」サンジだった。「おれのことも、名前で呼んで欲しいなぁ、ファレスターちゃん!」
相変わらずなよなよとした動きで厨房から飛び出してきたサンジ。今日は彼を制止してくれるフレイはいない。ファレスターは困惑しながら、こう答えた。
「じゃあ……サンジくん、で……?」
「はぁああああい!」
サンジの周りだけどこか空気が違うような錯覚すらしてしまう程のこのハイテンションさは、一体どこから湧いてくるのだろうか。ファレスターは、いきなり他人のことを「くん」呼びしてしまったことに少しの不安を抱えつつ、次はロゼッタをナンパし始めたサンジを眺めた。
「ロゼッタさぁん! 今日もとてつもなくお美しい……!」
「まぁ、あまり気にするな、あの男のことは」と冷静にネロが声を掛けてきた。「それで、今日の朝飯はスクランブルエッグだが、ファレスターは食えるか?」
「あ、はい!」
サンジの言動に慣れないまま、ファレスターは慌てて返事をしたが、ネロは気にする様子なく、それはよかったと、手早く料理を始めた。
ネロの手つきは本当、プロのそれで、ファレスターが見取れている内にあっという間に朝食が出来たので、これも魔法なのだろうかとひそかに思った。
「ありがとうございます、ネロ」
とファレスターが礼を言うと、ネロは短く返事をして次の人の分の食事を用意し始めた。
さて、どこの席につこう、とファレスターが朝食の乗ったトレーを両手に歩いた。ロゼッタはサンジに捕まっている。席はどこを見てもいっぱいに見えていたが、そこに一つの声が聞こえた。
「おーい、ファレスター!」