｢うーん……｣
　翌朝。ファレスターは、異世界生活として与えられたベットの上で目が覚めた。
　カーテンを開けると、空は曇り。今にも雨が降りそうな、どんよりとした空だった。
　ファレスターはクローゼットを開け、おしゃれコウベとクロエから頂いた衣類へと着替えをし、そうだ、お礼にケーキでも作ろうかな、と考えてた。
　トントン。
｢……？　はーい！｣
　丁度着替えを終えたところだった。ファレスターは玄関へと駆け、部屋の扉を開ける。
｢チコ！｣
　開けるとすぐに、星型の生き物がファレスターの顔に飛びついてきた。ファレスターは思わず尻もちをつき、そこを誰かの手が伸びてきて助けてくれた。
｢チコ、いきなり飛びついてはだめよ？｣と星型の生き物、チコを抱えたのは、ロゼッタだった。｢おはよう、ファレスターさん。よく眠れたかしら？｣
｢はい、おかげさまで……｣
　ファレスターはそう答えながら立ち上がると、チコが再び飛びつこうとしたのかと思いきや、ぽんっと頭の上に乗った。
　重くはない。というか、まるで空気のようなのに、温もりが伝わってきて、これが星の子なのか、とファレスターは思った。
｢チコ、貴方のことをすっかり気に入ったみたい｣
　とロゼッタが言えば、ファレスターの頭上でチコが嬉しそうに声を上げた。
　まるでペットみたいでかわいらしい、とファレスターは思ったが、そういえば、ロゼッタの用事はなんだろうと、質問をした。
｢えっと、朝ごはんの時間ですか？｣
　今日はロゼッタが自分のことを呼びに来る日だったのだろうか、とファレスターは勝手に解釈していると、あら、そうだったわ、とどこからか取り出した星のついたスティックを振りかざした。
　ファレスターが戸惑っていると、そのスティックからきらきらした星粒が散り始め、うっとりと眺めていると、次の瞬間、ぽんっと足元に三冊の本が現れたのだ。
｢あ、これって……｣
｢そう。貴方、図書室で忘れて行ったから｣
　ロゼッタはにこりと微笑む。
｢ありがとうございます……！｣
　ゴンという男の子が倒れたと聞いて、キドたちと一緒に図書室を飛び出した時に、借りた本を持ってくるのを忘れていたことをファレスターは思い出した。
　ファレスターは三冊の本を抱えて、あとでゆっくり読もうと、部屋へと引き返して行った。
　だが、ロゼッタはまだそこに立っていたので、まだ何か用事があるのだろうかとファレスターは振り向いた。
｢あの、ロゼッタさん……｣
｢片付け終えたかしら？　さ、食堂に一緒に行きましょう？　朝食の時間よ｣