｢今日は色々あったなぁ……｣
　ファレスターは、イライとスノウ、ホワイトからの話を聞いたあと、ようやく自室へと入ることが出来た。
　用意してくれた部屋は、大きなふかふかベットとクローゼット、机と椅子のあるところだった。
　しかも、洗面所やお風呂もついていて、新しい歯ブラシや石鹸、バスタオルなんかもきれいに畳んで置かれていたのである。突然ここに来たというのに準備が早いんだな、とファレスターは思った。
｢はぁ……｣
　ファレスターはベットへと飛び込んだ。すると、どっと疲れが押し寄せてくる。
　柔らかな布団がファレスターを優しく包み込んできたが、このまま眠る訳にはいかない、まずは顔を洗わないと……と思考は働いたが、一日で色々なことがあったのもあり、体は動かなかった。
　ファレスターは、吸い込まれるように眠りについついった……。

　トントン、トントン。
　ノック音がし、ファレスターは飛び起きた。
　そして、目が覚めても元の世界に戻っていることはなく、見慣れない部屋が見えるだけのことに、ファレスターは落胆した。
　やっぱり、ここは夢じゃないんだ、という自覚。
　その時、トントン、というノック音がし、ファレスターははっと窓を見やった。カーテンも閉めずに寝てしまった窓から、朝の太陽がよく見えた。
｢はーい！｣
　寝過ごしたのだろうか、とファレスターが慌てて扉を開けると、そこには、長い緑の髪をした女性が立っていた。
｢俺は隣の部屋の木戸つぼみだ。キドと呼んでくれ｣と彼女は言った。｢新人のモーニングコールを頼まれていたが……寝癖ついてるぞ｣
｢え、あ、すみません……！｣
　起きてすぐに出たため、ファレスターの髪は寝癖だらけのはずだった。
　ファレスターは恥ずかしくなったが、対するキドはふわりと笑い、寝癖を直すかのように頭を撫でてくれた。
｢今直してきます……！｣
　とファレスターが引き返そうとすると、キドはあまり急がなくていい、と言った。
｢ここの優秀なコックは、全員分の朝食を用意しているからな｣
　朝食、と聞いて途端にお腹がすいてきたファレスター。
　ゆっくりしている訳には行かない、とファレスターがクローゼットを開けた時、そこには何もないことに気が付いた。……そうだった、服はこのパジャマしかなかったのだ、と。
　とりあえず洗面所に向かい、備え付けのブラシで髪の毛を梳いて身支度を整える。顔を洗い、なんと、化粧水や乳液も置いてあるのでありがたく使わせてもらって再び部屋の入口へと立った。
　キドはその間、嫌な顔一つせず待っていてくれていたが、ファレスターの格好を見て目を少し大きく見開いた。
｢……その格好で部屋を出るのか？｣
　とキドに聞かれたが、他に衣服がないので仕方なかった。
｢はい……｣
　とファレスターが小さく頷くと、キドが突然手首を掴み、こう言った。
｢食事の前に、まずは着替えだ。こっちに来てくれ｣
　男らしい口調のわりに、面倒見のいいお姉さんなキドに連れられて、ファレスターはどこかへと連れていかれることになった……。