賑やかな時の中で
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一騒動(?)を終えて、ファレスターたちはネロが出してくれた夕食を食べ始めた。
「いつも、こんな感じなんですか?」
とファレスターが訊ねると、向かいの席に座っているフレイが、そーそーと頷いた。
「油断してると、いきなり後ろから野球ボールが飛んでくるから!」
「え、野球ボール……?」
ファレスターの世界にも、野球はあったが、こんな森の中に建っている屋敷内で、野球をしている人がいるんだろうか、と思った矢先。
パリーン!
窓ガラスが割れる音。
ファレスターはいきなりのことで悲鳴を上げてしまったが、のんきなピーチはあらあらと口元を覆って窓のほうを見やり、フレイは熟練者のそれと思わせる素早い動きで立ち上がった。
「ったく、誰だ? こんなところにボールを投げてきたやつは……」
と言いながらも、ファレスターたちをかばうように厨房から出てきたのはネロ。
幸いにも、窓際の席には誰もいなく、怪我人は一人もいなかったが、ファレスターは、フレイが今さっき話していたばかりの野球ボールが、本当に窓から飛び込んできたことに驚きを隠せずにいた。
「ほらね! 野球ボールが飛んできた!」
フレイはどこか楽しそうに笑っている。
「でも……窓が割れてしまいましたわ。後で、マスターハンド様方に直してもらいませんと」
こちらのピーチも冷静で、お怪我はないですか? とファレスターを振り向いた。
「私は……大丈夫ですけど……」
とファレスターは答え、床に転がる野球ボールを見やった。
随分使い込まれた野球ボールのようで、泥だらけのそれを、ネロのごつごつとした指先が拾った。
「今度、強化ガラスにしてもらわねぇとな」
とネロがファレスターへちらりと目配せをした時、バタバタと足音が聞こえてきて、食堂に誰かが駆け込んできた。
「すまねぇ! 野球ボールがこっちに飛んでこなかったか?」
と食堂にやって来たのは、黒い短髪の少年。
彼の顔を見て、ネロは、やっぱりか、と呟いた。
「あまり技を使わないようにしてくれよ。危うく、新人に当たるところだったぜ」
「悪ぃ悪ぃ……つい」ネロに謝罪しながら、ファレスターのことに気が付いてこちらへ視線を向ける少年。「お、新人ってこいつか!」
「初めまして、ファレスターです」
一日も経っていないというのに、もう何度目となるか分からない自己紹介をファレスターはした。
短髪の少年はからりと笑った。
「俺は山本 武な! よろしく!」
その明るくて気さくそうな彼の笑顔に、ファレスターはどことなく安心感を覚えた。
「山本がここに来たってことは、もしかして……」
フレイが、ネロの手にある野球ボールを指しながら話を戻した。
そうだった。野球ボールが今さっき飛び込んできて窓が割れたのだった、とファレスターは思いながら山本へ視線を向けた。
「リュカとネスと野球してたら、うっかり本気出しちゃったのな♪︎」
と山本はお気楽そうに言ったが、いやいやいや、うっかりで二階にある食堂の窓を割られてはひとたまりもない、とファレスターは思った。
「野球……確か、楽しいご遊戯なんですのよね? 元気があって頼もしいですわ」
一方のピーチは、やはりというかにこにこ顔でそんなことを言っている。
「元気があり過ぎて窓が割れたけどな」
とネロは肩をすくめた。
「とりあえず、片付けしないとねー?」
と、フレイが動き出したので、ファレスターも立ち上がった。
「私も手伝います!」
「いや」そんなファレスターを、ネロが止めた。「さすがに、女の子二人に割れた窓の片付けはさせられないだろ」
「でも……」
ファレスターが言い掛けると、山本が前に出た。
「窓割ったのは俺だし、俺が片付けるのな」
口調は快活だが、誠実なセリフを言う山本。
「お前の手、大事なんだろ? これくらい、魔法でなんとかなる」そう言いながら、ネロは野球ボールを床に置いた。「アドノディス·オムニス」
ネロの口から、魔法の呪文のようなものが唱えられたと思いきや、ふわりと割れた窓ガラスの欠片が宙に浮き上がり始めた。
それは、割れた窓から流れ込む夕日の風と光に照らされてまるで宝石の欠片のようで、全てが浮かび上がりきると、ネロがいつの間にか手にしていたボウルの中へと吸い込まれるように入っていった。
「すごい……」
ファレスターは素直な感想を漏らした。
「さすがですわ」
「ネロの魔法って本当に繊細だよねー!」
ピーチとフレイはそれぞれ感動を言葉にする。
「すごいよな、あれってどういう仕組みの手品なんだろな!」
明らかに手品やその類ではないのに、山本だけが心から魔法と信じていない純粋な瞳をネロに向けた。
「ああ、ちょっとコツがあるんだ」
しかし、ネロは気にする様子なく山本に話を合わせ、軽い笑みを見せた。
その笑顔を見ると、やっぱり魔法ではないのかな……? とファレスターは一人小首を傾げた。
「いつも、こんな感じなんですか?」
とファレスターが訊ねると、向かいの席に座っているフレイが、そーそーと頷いた。
「油断してると、いきなり後ろから野球ボールが飛んでくるから!」
「え、野球ボール……?」
ファレスターの世界にも、野球はあったが、こんな森の中に建っている屋敷内で、野球をしている人がいるんだろうか、と思った矢先。
パリーン!
窓ガラスが割れる音。
ファレスターはいきなりのことで悲鳴を上げてしまったが、のんきなピーチはあらあらと口元を覆って窓のほうを見やり、フレイは熟練者のそれと思わせる素早い動きで立ち上がった。
「ったく、誰だ? こんなところにボールを投げてきたやつは……」
と言いながらも、ファレスターたちをかばうように厨房から出てきたのはネロ。
幸いにも、窓際の席には誰もいなく、怪我人は一人もいなかったが、ファレスターは、フレイが今さっき話していたばかりの野球ボールが、本当に窓から飛び込んできたことに驚きを隠せずにいた。
「ほらね! 野球ボールが飛んできた!」
フレイはどこか楽しそうに笑っている。
「でも……窓が割れてしまいましたわ。後で、マスターハンド様方に直してもらいませんと」
こちらのピーチも冷静で、お怪我はないですか? とファレスターを振り向いた。
「私は……大丈夫ですけど……」
とファレスターは答え、床に転がる野球ボールを見やった。
随分使い込まれた野球ボールのようで、泥だらけのそれを、ネロのごつごつとした指先が拾った。
「今度、強化ガラスにしてもらわねぇとな」
とネロがファレスターへちらりと目配せをした時、バタバタと足音が聞こえてきて、食堂に誰かが駆け込んできた。
「すまねぇ! 野球ボールがこっちに飛んでこなかったか?」
と食堂にやって来たのは、黒い短髪の少年。
彼の顔を見て、ネロは、やっぱりか、と呟いた。
「あまり技を使わないようにしてくれよ。危うく、新人に当たるところだったぜ」
「悪ぃ悪ぃ……つい」ネロに謝罪しながら、ファレスターのことに気が付いてこちらへ視線を向ける少年。「お、新人ってこいつか!」
「初めまして、ファレスターです」
一日も経っていないというのに、もう何度目となるか分からない自己紹介をファレスターはした。
短髪の少年はからりと笑った。
「俺は山本 武な! よろしく!」
その明るくて気さくそうな彼の笑顔に、ファレスターはどことなく安心感を覚えた。
「山本がここに来たってことは、もしかして……」
フレイが、ネロの手にある野球ボールを指しながら話を戻した。
そうだった。野球ボールが今さっき飛び込んできて窓が割れたのだった、とファレスターは思いながら山本へ視線を向けた。
「リュカとネスと野球してたら、うっかり本気出しちゃったのな♪︎」
と山本はお気楽そうに言ったが、いやいやいや、うっかりで二階にある食堂の窓を割られてはひとたまりもない、とファレスターは思った。
「野球……確か、楽しいご遊戯なんですのよね? 元気があって頼もしいですわ」
一方のピーチは、やはりというかにこにこ顔でそんなことを言っている。
「元気があり過ぎて窓が割れたけどな」
とネロは肩をすくめた。
「とりあえず、片付けしないとねー?」
と、フレイが動き出したので、ファレスターも立ち上がった。
「私も手伝います!」
「いや」そんなファレスターを、ネロが止めた。「さすがに、女の子二人に割れた窓の片付けはさせられないだろ」
「でも……」
ファレスターが言い掛けると、山本が前に出た。
「窓割ったのは俺だし、俺が片付けるのな」
口調は快活だが、誠実なセリフを言う山本。
「お前の手、大事なんだろ? これくらい、魔法でなんとかなる」そう言いながら、ネロは野球ボールを床に置いた。「アドノディス·オムニス」
ネロの口から、魔法の呪文のようなものが唱えられたと思いきや、ふわりと割れた窓ガラスの欠片が宙に浮き上がり始めた。
それは、割れた窓から流れ込む夕日の風と光に照らされてまるで宝石の欠片のようで、全てが浮かび上がりきると、ネロがいつの間にか手にしていたボウルの中へと吸い込まれるように入っていった。
「すごい……」
ファレスターは素直な感想を漏らした。
「さすがですわ」
「ネロの魔法って本当に繊細だよねー!」
ピーチとフレイはそれぞれ感動を言葉にする。
「すごいよな、あれってどういう仕組みの手品なんだろな!」
明らかに手品やその類ではないのに、山本だけが心から魔法と信じていない純粋な瞳をネロに向けた。
「ああ、ちょっとコツがあるんだ」
しかし、ネロは気にする様子なく山本に話を合わせ、軽い笑みを見せた。
その笑顔を見ると、やっぱり魔法ではないのかな……? とファレスターは一人小首を傾げた。